旅の詩/光
光
旅をしたあとはいつも悔いている
確かめるために
もう一度同じ土地に立っても
あれは別れのような
ただ一度しかない出会いだった
午睡から覚めると時計に目がいく。
トゥンガバドラー川の畔で一日中
蝿をおっていても
何とも思わなかったのに
生きることを物語に要約してしまうことに逆らって
(「夜のラジオ」より)
谷川俊太郎の詩の中で一番好きな一行だが
さだめだからと言って微笑む未来は
物語だろうか
僕はガラクタを方々に散らかしながら生きてきた
日記を付け始めてからは
捨てた空の辺りを遠くから眺めている日もあるが
永遠に時の目に飲まれて消えた残照
誰に面影も思い出されぬ人
あなたも一人の太陽でした
1998年3月
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