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魚が穫れない! 「穫れない」と言う基準がそもそもの問題かも…

気候変動の影響などで、「魚が獲れなくなっている」といったニュースが飛び交う状況となっています。私個人の感覚としても、魚は減っていると感じています。ですが、いろいろな見方(データや情報)によっては180度意見が変わることもあります。まさに気候変動の問題などもそうかも知れません。今回は、私がなぜ魚が減っていると感じているかを書かせてもらおうと思います(興味がない方にはもうしわけないですが…)。

魚の適水温とは?

魚のは、それぞれ適水温があります。例えば、日本に馴染みのあるマダイですが、適水温は15℃~25℃と言われています。この水温の範囲であれば元気に泳ぎ回り餌も捕食します。ですが、この範囲を超えるととたんに動きが鈍くなります。私の地元大分県(別府湾)では冬の最低水温が11〜13度となります。先程の適水温の範囲から下がってしまうのです。そうなると、マダイはどうするか? 水温が安定している深場に落ちて越冬するようです。変温動物である魚は、水温が下がることで活動自体ができなくなります。おそらく10度をきると死滅してしまう危険性が出てくるので、そうならない水温の安定している場所(温かい潮が溜まりやすい深場)で過ごすのです。

逆に夏場になると、水温が25度を超えることもあります。そうなると今度は夏バテとなり、やはり活動が鈍ってしまいます。そうなると、なるべく水温が低い場所、河口周辺や日の当たらない湾内などへ移動します。つまり、水温の変化によって活動場所を移動しているのが魚です。

これはマダイに限らず、すべての魚がそのように自分の好きな環境を目指して動き回っているのです。

漁獲高とはなんぞや?

漁獲高といった言葉があります。これは、そのままズバリ魚の獲れ具合を数値で表した言葉です。でも、これってその地域(市町村単位)のデータなので、その地域だけみても分からないことがあります。

例えば、私の知っている大分県の漁獲高を調べてみました。

上記のページよりDLしたデータをわかりやすくしたものがこちらです。

一番右は、平成29年の漁獲高が平成15年と比べてどのくらいなのかを%で表した数です。全体的に減っているのはわかりますが、ところどころ増えている魚種も見られます。私がこれをみて想像するのは、環境の変化により魚の移動が活発になっている。マイワシが増えることによりそれを追ってブリなども増えている。逆にカレイ類は壊滅。このカレイの激減は私の実体験ともリンクしています。

ここで気をつけなければいけないのは、あくまで調べている魚だけの統計なので、すべての魚の統計ではないということです。そして調べている魚とは市場価値のある魚であり、その地域で昔から獲っている魚なのです。かりに南方系の魚が穫れたとしてもそれはカウントされていません。

  • 地域のデータ(漁獲高)は、市場価値のある魚のみ

  • 新参者の魚はカウントされていない(されにくい)

  • 増えている魚もいれば減っている魚もいる

このようなことがデータから推測できるわけです。

今度は日本全国でみてみましょう!政府統計の総合窓口にあるデータをみてみると、やはり日本全体で漁獲高は減少傾向にあります。ただ、これも水揚げされた魚トールで見た場合であり、魚種別にみるとまた違った側面が見えてくるかもしれません。

とはいえ、漁獲高が減っているということは間違いなく、漁業関係者にとっては死活問題です。

https://kantool.co.jp/the-president/%E9%AD%9A%E3%81%8C%E7%8D%B2%E3%82%8C%E3%81%AA%E3%81%84/

こちらは株式会社カンツールさんのコラム記事です。いろいろなことを実体験及びデータなどから「なぜ獲れなくなっているのか?」を検証している記事で、大変おもしろく拝読しました。日本に「漁獲量制限の設定、資源回復のための禁漁期間を設定」を導入してほしいといったくだりには、「そうだそうだ!」と両手を上げて賛成したいのです。

ですが、私の経験則からすると、「北米、ヨーロッパ、オセアニア地区の漁獲量は着実に増加傾向にある」のは、気象変動により海域の環境が変化し、魚が移動しているためと解釈しています。そのため、北海道ではサケが獲りづらくなり、代わりに青物(ブリやカンパチ)が穫れる状況になっています。全ては気候変動がもたらす事象だと思っています。

穫れる魚、穫れない魚

また、よくインタビューである漁師さんの「最近は魚が獲れなくなった」という言葉もよくよく考えなければいけません。魚という言葉がなにを指しているのかをです。概ね「市場価値のある魚」で昔から獲ってきた魚を指しているはずです。つまり、海域に生息する魚トータルとしての話ではなく、極一部の魚を指しているだけなので、獲れていた魚は減っているかも知れませんが、逆に増えている魚もいるかも知れないということです。

市場価値のある魚とは、つまり美味しい魚です。そのような魚が減ると、その魚と同じような生息域、食性の魚が別のところから入ってきて、知らないうちに増えているといったことも、海の世界では往々にしてあります。

「最近は魚が獲れなくなった」=「魚が減っている」のではなく、私は「魚の生息地域が変化している」と捉えているということです。そして、これはやはり気候変動の影響が大きいと考えます。

日本だけで見ると、市場価値のある魚は穫れなくなる

昔から馴染みのある魚、マダイやブリ、フグやアジ、サバなどは、大きな変化の中で徐々に移動しています。そしてそれは適水温からくる自らの防衛本能によって移動していると考えます。ここで、マダイなどは養殖技術も発達しているので、自然界で撮れなくなったとしてもしばらく困ることはありません。むしろ養殖できない魚は大変です。アジなどは稚魚を獲って中間育成するしかないため、どんどん北よりの海域で稚魚を獲るしかなくなっています。今よりさらに北に移動してしまうと、採算ベースに乗らないと言った状況となり、その地域でアジが水揚げされることはなくなるのではないでしょうか?

これと同じように農業でも今までは栽培できた作物が、将来的には栽培できないといったことも増えてくると予測しています。強制的に事業の見直しを迫られる漁師や農家が増えてしまうかも知れません。

このようなことを考えていると本当に恐ろしくなってくるのですが、やはり一刻も早く気象変動をできるだけ最小限に留める必要があると感じています。

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