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[No.2]20年、フリーライターやってます~フリーライターとなるまで~その1 気弱な私が売り込みに…

フリーライターになるのは簡単だ。名刺の肩書きに「フリーライター」と書けばその日からなれる、とはよ聞く言葉です。確かにそうかもしれませんが、いくら自称しても"書く場所"がなければ空しい。

書く場所とは、ブログやフェイスブックなどではなく、たとえ小さくても、ちゃんとお金をもらって原稿を載せてもらえるスペースのこと。これを得るのはそう簡単ではないと思います。

さて、私はどうやって書く場所を得たのでしょうか。

最初は売り込みでした。少しでも出版や編集の現場を知った今になるとあんな恥ずかしいことをよくやったなと思いますが、コネなし、経験なし、知識なしの私にはそれ以外の方法を思いつきませんでした。

ある人に、売り込みでフリーライターになったと話すと「リストをつくってかたっぱしから訪問したのですか? 何件くらい回ったのですか」と聞かれ、なるほどそういう方法もあったかと思ったのですが、私の場合は、「この雑誌なら書きたい」と思う雑誌の編集部を訪ねるという発想しかありませんでした。

すぐに思いついたのは3誌。訪ねたのも3誌だけです。「飛び込み営業なんて勇気がありますね」ともよく言われるのですが、たった3誌では、いばれませんね。私だってそんなに度胸はないのです。

3誌のうち1誌は車雑誌でした。ペーパードライバーの私がなぜ車雑誌などに売り込みに行ったかというと、その雑誌は、車雑誌でありながら、カーマニア以外の人も楽しめ、おシャレでカッコよく、記事にちょっと文芸の香りがするところが何となく好きだったのです。伝説のカリスマ編集長にも会いたいと思いました。

まずは、雑誌の最後に書いてある出版社の住所と編集長の名まえに宛てて手紙を書き、手紙が着くころに電話をかけました。1、2コールでいきなり電話に出たのが編集長とわかりビビりましたが、手紙をお送りした何某ですが、と言うと覚えていてくださって、案外あっさりアポイントが取れました。

もう20年も前のことなので、手紙に何を書いたのか覚えていませんが、おそらく、その雑誌のどういうところが好きで、自分はどんなものを書きたい、というようなことを書いたと思います。記憶に残るように、レイアウトなど自分なりに工夫したとも記憶しています。

で、約束の日時に、「フレンチカークロニクル」みたいな特集を勝手に考えて、ページのデザインイメージを作ってパネルにして神保町のその会社を訪ねました。今考えると私は、編集者とライターとデザイナーの違いもよくわかっていなかったんですね、こんなパネルを持って、ライターにしてくださいと乗り込むとは本当に恥ずかしい。先方の困惑した表情の意味が今ならよくわかります。

一通り、話を聞いてくれたあと、編集長が、スタッフの一人に「何か出してあげたら」とぽつりと言いましたが、気まずい沈黙がながれただけ。

「やっぱだめか~」と帰宅したのですが、数日後、その編集部から一本の電話がかかってきたのでした。

(2015年01月07日「いしぷろ日記」より転載)

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