見出し画像

コレクター福富太郎の眼 昭和の名実業家が愛した珠玉のコレクション@あべのハルカス美術館

美術コレクターとして有名だった福富太郎氏のコレクター展。
コレクターの主観でセレクトされた作品群。
なんだかその人の趣味を覗き見しているような気分になります。有名なコレクターさんなのでとりあえず見に行こうって軽いノリで言ったんですが、大ヒットでした。あまり実物を見る機会のない近代日本洋画初期作品を見られ、興奮してしまいました。

展覧会構成

Iコレクションのはじまり
II女性像へのまなざし
III 時代を映す絵画

展示内容

Iコレクションのはじまり
始まりは鏑木清方の作品
戦時中、空襲で逃げる際、父の所蔵だった鏑木清方の作品が持ち出せず消失したことがコレクションを始めるきっかけだったそうです。
作家本人も戦火で消失したと思っていた1917年制作の『薄雪』を見せに行ったところ喜んで少し貸してほしいと喜ばれたそう。
その後も作品を手に入れると鏑木清方先生に本物かどうかを見せに行っていたそうです。やりとりの手紙も展示されていました。
鏑木清方作品は今回13点出展。やはり美しいですね。

II女性像へのまなざし
キャバレー王として有名だった福富太郎氏。
展覧会に行ったと言うと2次元も美人が好きだったの?と聞かれましたが、美人画ばかりではありません。現実生活ではそうだったかもしれないですが、絵画の世界ではそうでもなかったようで、たくましく現実生活を生きているような女性の肖像画もありました。
東の作家がコレクションの初めだったようですが、段々西の作家も収集し出したようです。上村松園初め、秦テルヲ、島成園など関西の存在感ある作品も注目です。大阪出身で20歳で第6回文展に入賞した島成園は単なる美人画ではあり得ないアザのある女性像などインパクトのある絵を描く個性的な作家。上村松園はあまりお好みではなかったようですが。

キャプションには、最近の若い女性は綺麗だけど、生きているというリアリティが少ないとあって、(文字通りではないですが)
決して綺麗だけでない生き生きした生を大切にされていたようです。


III 時代を映す絵画
このパートはとても貴重。興奮してしまいました。
日本洋画の黎明期から戦時中の作品。
美術史の教科書で見るものの実物はあまり見ることができない作品。
日本洋画のはしりである高橋由一(タカハシユイチ)、五姓田 義松(ゴゼダヨシマツ)の作品、また彼らに洋画を教えたチャールズ・ワーグマンの作品も見どころ。
日本の洋画黎明期である明治時代は洋画を取り入れなければという明治政府に対し、日本画は最高だとフェノロサの意見によりあっさり洋画より日本画だとなり、美術学校も洋画専攻の話は無くなってしまう苦しい時代。
そのためあまり作品がないので日本近代美術史の本にも載っていないのと戦争もあり、残っている作品が少ないので見られるのは貴重なこと。
有名作品ではなくても日本近代の貴重なコレクションで福富太郎氏の自分の目を信じるブレない眼を楽しみました。

個人的感想


最初にも書いたように素晴らしく貴重なコレクションでした。
ただ個人のコレクションは、いつも見られるわけでなく、また維持も大変と聞きます。息子さんがいらっしゃるようですが、今後、これだけのコレクションが散ってしまわないといいなと思ったりもしました。

個人の眼を通してコレクションされたもの。その人となりが見えて来ますね。
戦争の経験、父の思い出、子供のまま亡くなってしまった妹さんへの想いなどが作品を選ぶときに影響していたとご本人の言葉も残されています。
竹久夢二『かごめかごめ』を見ると妹さんを思い出すというような作品への想いにも触れられる福富太郎氏の人生にも触れるような展覧会でした。

展覧会情報


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?