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懐かしい味が消えてしまった。


人は美味しいと思う物にお金を払う。
料理を作るのも人なら、食べるのも人なのだ。
そんな当たり前のことが忘れ去られてしまっているのではないだろうか。


人が不在になってしまっている、そう感じることも多い。
数字ばかりを追いかけていると、人が見えなくなってしまう。


長らく改装中だった、ちゃんぽんの有名チェーン店。
久しぶりに訪れたその店は、様変わりしてしていた。
ホールからレジ、厨房に至るまで、店員さんは全員若い女性。
かわいらしい制服に身を包んでいる様子は、まるでファーストフード店のよう。
注文の方法も、食券からタブレットに変わり、支払はレジで後払い。
食券を買うのに並ぶ必要がなくなった代わりに、様々な支払方法に対応しているためか、レジには長い行列が出来ていた。

価格も上がり、バリエーションは増えたのだが、肝心のちゃんぽんの味はというと、、、
きれいに切り揃えられた野菜、塩分控えめの、あまり特徴が感じられない味。
以前のように、味にパンチが感じられない。
疲れた時、無性に食べたくなった、まろやかさの中にもちょっと塩辛さも感じられた、あの味ではない。
塩分控えめの方が、確かに身体にはいいのだろうけれど…


私はオーソドックスな、いわゆるシンプルなちゃんぽんを食べることが多かった。
食べる度、私が子どもの頃から変わらぬその味に、どこか懐かしく、ほっとしていた。


長年調理に従事し、味を守り続けていたであろう料理人さんや、てきぱきとホールを切り盛りしていたパートさん達は、いったいどこに行ってしまったのだろう。
私は、料理の味だけではなく、懐かしさやほっとする気持ちも味わいたくて、店に足を運んでいたのだなと思う。
もう二度とあの味に出会えないのかと思うと、ちょっと悲しくなってしまった。



恐らく、店員さんのほとんどがアルバイトさんだろう。
インターンの人もいたのかもしれない。
人件費を最大の経費と捉えて、ファーストフード店をモデルに、人件費を大幅に削ることを最優先した結果なのだろうか。
若い女性客を呼び込む狙いもあるのかもしれない。
私は人件費が経費と呼ばれることには、違和感を覚えるけれど…
この運営方法を提案した人は、経費を大幅に削減出来たとして、社内で表彰されたり、昇進したりするのだろうか、思わずそんなことを考えてしまった。







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