草抜き

シェアハウスの庭の草抜きをする。
最近は雨が多くて、背丈が伸びた草の濡れた中を歩かなければならなくなっていた。ズボンの裾が濡れる。大家さんに庭の手入れを名乗り出たら2000円の報酬をつけてくれた。大家さんの報酬は毎月振り込む家賃から引くスタイルで、手伝いが多くなった月は家賃がほぼタダになる。報酬に税金がかからないのが良い。

気温が一気に上がって植物たちが勢力を増した庭をやっつける。カタバミは根っこを諦めてを葉をむしっていく。オニタビラコのフワフワの綿毛が舞う。チチコクサモドキの根元にはミミズがいる確率が高い。地面に這いつくばる系の背の低い草は、歩きにくさにつながらないので残す。軍手をしていてもドクダミのにおいが手に残る。かわいいツユクサは残しておきたいけれど、他の草を抜いているのに巻き込まれていなくなっている。蔦を引きぬくとどこまでも芋蔓式につながっている。抜いたらポイポイ放り捨てて後で熊手で集める。
放置された庭は生き物たちがイキイキとしている。ミミズが出てきてのたうつ。蚊もいる。ダンゴムシが逃げ回る。彼らにとっては住居を破壊される被害が出ている訳だ。大きめの蜘蛛も逃げ回る。
蜘蛛を見て、母親の「朝グモは殺してはならない」の話を思い出した。
蜘蛛が苦手な母親は、朝に玄関先に出た蜘蛛を母親の母親、つまりおばあちゃんに殺してもらった。その後すぐおばあちゃんが亡くなったのだそう。「朝グモを殺してはならない」とはその前から言われていたが、まさか本当に死んでしまうとは。それから朝に蜘蛛は絶対に殺さなくなったと。
その迷信を思い出した。その時まさに朝。しかし草抜きの時に何も殺さないのは無理だ。殺そうとして殺してないが、鎌は振るうし、シャベルで土を掘り返すし、命は失われているだろう。その中に蜘蛛もいるだろう。私という大災害からみんな無事に逃げてくれ。
田舎出身の母親は行動指針になっている迷信がいくつかあり、他に「左手が痒くなるとお金が入る」「失くしものをした時に神棚に鶏の絵を逆さまにして飾ると見つかる」などがある。私は財布を落とした時は「神棚に鶏の絵をお願い」と母親に連絡する。今まで3回財布を落としたが、全部見つかったので迷信も侮れない。

草を抜いてズタズタになった、彼らにとってのかつての安息の地をじっと眺める。シャクトリムシが上る場所を探して頭を振っているのに見つからない。じっと眺めると小さい生き物がたくさん動いているのが見える。じっと見る。カメムシ、カタツムリ。生き物が豊富だ。明日にもなればいい場所を見つけて落ち着いて暮らし始めるだろう。手入れの行き届いていない庭は優しい場所。草を抜いただけ。除草剤を撒けと言われたけれど撒かなかった。
抜いた草は穴を掘って埋めた。埋める時に発酵助剤と水をかけた。これで土に還ってくれるはず。燃えるゴミの袋に詰めて捨てれば早いのに、穴を掘る労力をかける。土に還るか観察する。好奇心。私がコンポストをしていると職場で言った時に、土マニアのおじいちゃん職員が喜んで発酵助剤を大量にくれて、それが部屋の容量を圧迫していたのでその処分のためでもあった。
草むしり1回に2000円、かかった時間3時間。テキトーに1時間で終わらせて費用対効果を高めてもよかったけれど、やってて楽しくなってきて報酬のことは関係なくなった。土を触るのが好きなことを再確認した。
シャワーしてさっぱり、昼寝してスッキリ。夕方出かける。桜餅を作るイベントに誘われた。1日が2回あった。

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