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新入社員の悩み。せっかちなゲストに説明を省略すべきかどうか?

旅館に宿泊する際に、チェックインに時間がかかるなぁ、と思ったことはないでしょうか?

宿泊業の中でも、特に旅館はチェックイン時の説明にとても時間がかかります。
というのもホテルと違い、旅館には温泉やアクティビティーといった寝食以外の体験価値を提供しているために他なりません。
チェックインのお出迎えから、ロビーでのウェルカムドリンク、館内設備や食事時間、催し物の案内など、10分から長いところでは30分程度かかることも…

旅館側としては、しっかりと滞在を楽しんでいただくために説明を十分に行いたい。
しかし、
「長旅で疲れてるんだから、説明はいいから早くゆっくりさせてくれ!」
っていうゲストの気持ちもわからないでもありません。


新入社員が悩むポイント

私のが働く旅館でも、毎年新入社員のみなさんが悩むポイントがこれ。

「せっかちなお客様にどの程度説明を省いたらいいかがわかりません」

発言の背景としては、先輩からこんな指導をされるからでしょう。

「マニュアルに沿った対応は必要だが、マニュアル通りにすることが必ずしも正解ではない。とくにせっかちなお客様にはマニュアル通りに丁寧に説明しすぎると、かえってイライラさせてしまうことがある。」

まだ決められた説明内容で頭がいっぱいいっぱいの新入社員の皆さん。
例外もある、なんて言われたらそりゃ頭が混乱することでしょうね。
いやいや、ちょっと待ってくださいよ!いまそれ言われても…って。

そこで、この悩みをいくつかの課題に分けて考えてみましょう。

「せっかちなお客様の対応」について課題を切り分ける

課題をさらに細分化してみると、

①お客様を見る余裕がない
②せっかちかどうか判断できない
③どこまで省略していいか判断できない

といった課題に分けられます。

①お客様を見る余裕がない
については、まずは説明することに慣れていくしかないですし、
②せっかちかどうか判断できない
は、①を慣れてきてから、お客様をよく観察する癖をつけなければなりません。
ここは、マニュアル化が難しい部分ですが、
お客様の表情、歩くスピードなど、確認できるポイントはいくつかあります。

そして、最後の
③どこまで省略していいか判断できない
という厄介な課題。
せっかちで説明がいらないという方には、部屋の場所以外は案内しなくていいの?
って声も聞こえてきそうです。

ここについて、私の結論は以下の通り。
「せっかちなお客様にも省略すべきではない!」

館内説明はしっかり行う

冒頭で述べた通り、旅館のサービスはただ食べて寝るだけでなく、その他の滞在の演出を含めてのサービス全てをひっくるめたものです。
もし、説明を省いてしまったら、そのお客様は支払っている対価を受け取る機会を失うことになります。

後でそのことを知ったらどうでしょう?
「そういうサービスがあることを教えてくれないなんて不公平だ!」
と言われても仕方ありません。
なので、説明はしっかり行うべきです。

ただ、先程の発言と矛盾しているかもしれません。

「マニュアルに沿った対応は必要だが、マニュアル通りにすることが必ずしも正解ではない。とくにせっかちなお客様にはマニュアル通りに丁寧に説明しすぎると、かえってイライラさせてしまうことがある。」

そう、マニュアル通りではいけないと思うのです。


マニュアル通りではない対応でゲストへの気遣いを表現する

例えば、
車で到着したお客様。
(車は遠方のナンバー)
けれど、なんだか運転で疲れているようで、イライラしているお客様がいるとします。
こちらからの問いかけにも塩対応。
会話も弾みません。

そんな方の場合、こんなお声がけをしてみるのはいかがでしょうか?

「この度はお越しいただきましてありがとうございます。運転お疲れ様でございました。長旅でお疲れかと思います。なるべく早くお部屋でゆっくりしていただくために、スムーズに館内の案内をさせていただきますね」

といったものです。
まずは気遣いのお言葉をかけ、相手の希望を想像して、それに沿った対応をするということをしっかりお伝えする。
それからは、通常の案内をします。
ただ、相手を気遣いながら、伝えるスピードは少し早めにする。

こういった気遣いを表現するということは、通り一辺倒のマニュアルの対応ではないな、ということが伝わるのではないでしょうか。

もちろん、このような対応でも気持ちがおさまらないゲストは一定数いらっしゃる。
ただ、相手に寄り添うという気遣いを示すことで、お客様にとってのおもてなしの印象は大きく変わります。


相手の状況を慮る。
これこそおもてなし業の本質でもあり、醍醐味でもあると私は考えています。


以上、本日はせっかちなゲストに対する対応について綴りました。

おもてなし産業をかっこよく。
あんでぃでした。


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