スマホカメラに関する基礎知識(更新停止)

【注意】
・この記事は作成途中です。今後加筆修正される場合があります。
・図解は全くなく、文字がひたすら羅列されているだけですので、大変読みづらいと思います。
・最終的にはゆっくり音声により動画化する予定であるため、文はですます調になっています。


0. はじめに

SNSの普及やスマホカメラの進化によって、スマホで写真撮影する機会が増え、スマホにデジカメとしての機能を求める人が多くなりました。

こうした需要の影響で、昨今スマホカメラの進化はさらに急速なものとなり、最早スマホにおけるカメラは補助的なものに留まらず、主要な機能の1つとして見なされるようになり、「カメラフォン」等と呼ばれる特にカメラを重視したスマホも増えています。

しかしカメラの世界はとても奥深いため、生半可な知識では、それぞれのスマホカメラの善し悪しや特徴を見極めることが大変難しいものとなっています。特に最近のスマホカメラはハードウェア的にもソフトウェア的にも複雑化してきているので、その理解にはより高度な知識が求められます。

そこで、本記事を通して基礎的な知識を身につけることで、スマホカメラについての教養を深め、スマホカメラに対する考察の一助にして頂ければ幸いです。

勿論、スマホカメラを評価するためには知識だけでは全くもって不十分です。実際の作例や、実際に自分でスマホを購入し撮ってみることが必要不可欠です。知識と実践を両方兼ね備えた上に、スマホカメラへの理解があることをお忘れなきようお願いします。

1. イメージセンサー

1-1. イメージセンサーと画素数

まずは基礎中の基礎の知識として、カメラの仕組みについて解説します。

物体からやってきた光をレンズで集光し、その光を「イメージセンサー(撮像素子ともいう)」と呼ばれる装置で電気信号として画像データへと変換することで写真が完成します。

デジタルデータにおける画像は、無数の光の「点」によって表現されていますが、写すもの(被写体)をデジタルデータへと変換する役割を担っているイメージセンサーは、被写体を光の「点」の集合としてとらえます。

そのためイメージセンサーは無数の小さな部品で構成されているのですが、その1つ1つを「画素」と呼び、その数を「画素数」と呼びます。画素は規則正しく並べられていて、例えばイメージセンサーに横4000個、縦3000個の画素がある場合、画素数は4000×3000で1200万個となり、そのイメージセンサーは1200万画素である、ということなります。

またイメージセンサーのサイズを「センサーサイズ」と呼びます。イメージセンサーは長方形の形をしていて、センサーサイズはイメージセンサーの対角線の長さを表します。単位は一般的に「インチ」が用いられています。

画素の数が同じである場合、イメージセンサーのサイズが大きいほど、1つ1つの画素のサイズは大きくなります。逆にセンサーサイズが同じである場合、画素数が多いと画素のサイズは小さくなってしまします。

画素の大きさを示す値は「画素ピッチ」と呼ばれ、各画素の中心から中心の距離を表します。画素のサイズはとても小さいため、単位は一般的に「µm」が用いられます。

「画素数」という言葉はスマホカメラのスペックにおいて特に目立つ要素ですので、知っている方も多いかと思います。画素の数が多ければ、より解像度の高い写真を撮影することができるということですので、緻密な写真を撮影したい場合や写真を大きく表示する場合は、画素数が重要となります。

画素数の意味はさほど難しいことでは無いため、知っている人も多いと思います。しかしその反面、しばしば「画素数が多いカメラ=高性能なカメラ」という誤解を招いています。勿論解像度の高い写真を撮影するために画素数は重要な要素ですし、ある程度の解像度がなければ荒く低画質な写真になってしまいます。

しかし写真の良し悪しは解像度だけで決まるものではなく、画素数を過剰に増やしても意味がないことも、また事実です。

「画素数」はディスプレイの解像度を表す言葉でもありますが、フルHD解像度のディスプレイなら約200万画素、4Kディスプレイなら約800万画素となっています。スマートフォンで最も解像度の高いディスプレイを持つハイエンドのXperiaでも4K解像度の800万画素ですし、テレビやPCモニターのディスプレイ解像度も高くて4K程度です。スマートフォンやパソコンの小さな画面で表示する分には、過剰に高い解像度の画像は必要なく、したがってイメージセンサーの画素数も過剰に高める必要はありません。またSNS等にアップロードすると多くの場合、画像は圧縮されてしまい解像度は落ちてしまうので、その点でも解像度の高すぎる画像は無意味です。むしろ解像度の高い画像はデータサイズが大きく、スマホやパソコンのストレージ容量を圧迫してしまいます。

一般的にはスマホカメラなら1200万画素程度あれば十分だといわれており、iPhoneやXperiaが1200万画素のカメラを維持し続けているのはそのためだと言われています。一眼カメラでは、より高画素なイメージセンサーを搭載している機種が主流ですが、それはポスターなどに掲載する大きな写真を撮影する場合も想定されているからです。

尚、Galaxyや中華スマホでは4000万画素を超えるイメージセンサーの搭載が主流であり、中には一億画素を超える機種も存在しますが、それらの機種が高画素のイメージセンサーを採用しているのにはまた別の理由が存在します。その理由に関しては後ほど解説します。

1-2. 画素ピッチと高感度性能

画素数を過剰に増やすことは無意味なだけではなく、画質の低下につながります。

その理由には、先述した画素ピッチが関係しています。センサーサイズが同じ場合、画素数が多ければ多いほど画素ピッチは小さくなりますが、画素ピッチが小さくなってしまうと取り込める光の量が減ってしまいます。光を取り込む性能を「高感度性能」といいますが、高感度性能に優れたイメージセンサーを搭載したカメラほど、白飛びや黒潰れの少ない美しい写真を撮影することができ、暗所でも鮮明に撮影できる傾向にあります。

そのためイメージセンサーの性能において特に重要な高感度性能ですが、それを最も大きく左右する要素が画素ピッチの大きさです。

画素数とセンサーサイズ、そして画素ピッチと高感度性能の関係について、実際のスマートフォンにおける例を見ていきましょう。

例えばiPhone 13 Pro Maxの広角カメラの画素数は約1200万画素。センサーサイズは約1/1.6インチで、画素ピッチは1.9µmとなります。

一方Galaxy S21 Ultraの広角カメラの画素数は1億800万画素で、iPhone 13 Pro Maxの9倍に匹敵する画素数です。センサーサイズは1/1.3インチで、iPhone 13 Pro Maxより少し大きいです。センサーサイズは少し大きいのですが、それ以上に画素数があまりにも多いため、画素ピッチは0.8µmとiPhoneの半分以下のサイズになってしまっています。

AQUOS R6の画素数は約2000万画素で、センサーサイズは1インチです。iPhoneより少し画素数が多いですが、その分センサーサイズがかなり大きいので、画素ピッチは2.4µmとiPhoneよりも大きくなっています。Galaxyとの比較では、その差は実に3倍です。

1-3. ピクセルビニング

先ほどの例を見ると、画素数がとても多い一方で画素ピッチがあまりに小さいGalaxy S21 Ultraは、確かに解像度の高い写真を撮れるかもしれませんが、高感度性能が低く光が少ない環境ではひどい写真の仕上がりになってしまうのではないか?という懸念が生じます。

実はGalaxy S21 Ultraを始め、中華スマホ等に多く採用されている高画素イメージセンサーでは、画素数が高くても、画素ピッチを大きくし高感度性能を高めることができる、ある「裏技」が用いられています。

それが「ピクセルビニング」と呼ばれる技術です。

例えばGalaxy S21 Ultraの広角カメラ場合、ピクセルビニングを行うことで、3×3=9つの画素を、1つの画素として扱うことができるようになっています。9つの画素を1つとして扱うということは、画素数は9分の1になってしまいます。Galaxy S21 Ultraの場合、1億800万画素の9分の1ですから、1200万画素になります。しかしその代わり、画素ピッチは3倍として扱うことができるのです。Galaxy S21 Ultraの場合、0.8µmの3倍ですから、2.4µmになるわけです。改めてiPhone 13 Pro Maxと比較すると、iPhoneは画素数が1200万画素、画素ピッチが1.9µmであるわけですから、ピクセルビニング後のGalaxy S21 Ultraの方が画素ピッチは大きく、画素数はほぼ同じであるということになります。

ピクセルビニングの具体的なメカニズムは割愛させていただきますが、ピクセルビニングを行わない状態では画素数の高い緻密な写真を撮影することができ、ピクセルビニングした状態では画素ピッチを大きくすることで暗所でも鮮明に撮影できるようになるため、画素数が大きいことの利点と画素ピッチが大きいことの利点を、状況に応じて「いいとこどり」ができるというわけです。

ただし、ほぼすべてのスマホにおいて、特に設定をしなければピクセルビニングされた状態、つまり例えばGalaxy S21 Ultraの場合なら1200万画素で撮影されますし、わざわざ高画素で撮影することはほとんどありません。

理由は、先述した通り高画素な写真はデータサイズが大きいことや、高画素撮影は画像処理が重くなってしまい後述するHDRなどの高画質化処理が行えない場合があるので、かえって画質が落ちてしまうことなど、デメリットが大きいからです。

結果的に多くの場合、ピクセルビニングを行うイメージセンサーで高画素撮影が行われることは少なく、「高画素=高画質」だと勘違いしている人への宣伝文句にしかなっていない、というのが現状です。

そういった理由もあってiPhoneやXperiaでは、わざわざピクセルビニングを行う高画素センサーを採用する必要がないとの判断があり、1200万画素のイメージセンサーが採用され続けているのです。それに加え、Xperiaが1200万画素センサーを採用し続けているのは、高速連写をウリとしているため、ピクセルビニングの処理が負担となり連写速度が落ちることを懸念しているからだとされています。一方iPhoneが1200万画素センサーを採用し続ける理由についても、シャッターラグを懸念しているからだとされています。

またピクセルビニングするにしても、Galaxy S21 Ultraのように9つの画素を1つの画素として扱うイメージセンサーを搭載しているスマホは比較的少なく、4つの画素を1つの画素として扱うイメージセンサーが現在の主流となっています。具体的には、Pixel 6のイメージセンサーは5000万画素で画素ピッチ1.2µmですが、ピクセルビニングによって1250万画素の2.4µmとして扱われています。Galaxyが1億画素を超える超高画素センサーに固執する理由は、最近のSamsung製イメージセンサーが高画素をウリにしているからだとされています。

尚、Samsungは9つの画素を1つとして扱うピクセルビニングを「ノナセルテクノロジー」と呼んでいたり、SONYは4つの画素を1つとして扱うピクセルビニングを「クアッドベイヤー」と呼んでいたりと、イメージセンサーのメーカーによってピクセルビニングの呼び名にバリエーションがあります。

ピクセルビニングを行えるイメージセンサーの性能を最大限に活かす方法は、望遠カメラに採用することです。望遠カメラでは遠い被写体を撮影するため解像度が特に重要となりますが、デジタルズームを用いてより遠くの被写体を撮影する場合などは、ピクセルビニングを行わず高画素で撮影する方が解像度は高くなるため、高画素撮影の利点を最大限活用できるのです。

Honor Magic 4 ProやMi 11 Ultra、Pixel 6 Proなどはピクセルビニングできる高画素センサーを望遠に採用している実例です。

1-4. イメージセンサーについてのまとめ

画素数、センサーサイズ、画素ピッチ、高感度性能、そしてピクセルビニングについて解説しました。ピクセルビニングを含めた画素ピッチが、イメージセンサーの高感度性能を大きく左右することをご理解いただけたかと思います。

画素ピッチはイメージセンサーの高感度性能を左右する最大の要素ですが、必ずしも画素ピッチの大きいイメージセンサーが、高感度性能の高いイメージセンサーである、というわけではありません。

実際は、例えば画素数・センサーサイズ・画素ピッチが全く同じイメージセンサーであっても、型番が異なれば性能に優劣があり、画素ピッチが大きいセンサーより小さいセンサーの方が暗所撮影に強い…という場合もあります。

そのようになる理由は、新しいイメージセンサーは研究開発が進む過程で様々な改良が施され画素ピッチあたりの高感度性能が改善されていたり、メーカーによって技術力が異なるため画素ピッチあたりの高感度性能にバラツキがあったりするからです。

また後述する像面位相差オートフォーカスの性能などもイメージセンサーの性能の良し悪しを決定する要素であるため、画素ピッチだけが高感度性能を決めるわけでも、イメージセンサーの性能を決定づけるわけでもないことを知っておいてください。

イメージセンサーの評価について大雑把な推測を立てるだけでも、センサー自体の仕様だけでなく、より広い知識が必要になります。例えば、「SamsungのISOCELL GN1というイメージセンサーはピクセルビニング後の画素ピッチが2.4µmと大きく、実際にVivo X70 Pro+やPixel 6などのカメラ性能に定評があるスマホに採用されている。そのためGN1は特に優秀なイメージセンサーだと推測できる」という感じです。

イメージセンサーはカメラのハードウェアにおいて特に重要な部分ではあるのですが、当然のことながらイメージセンサーの性能がスマホカメラの性能を決定するわけではありませんので、センサーの性能を評価することはあくまでスマホカメラの性能を考察するための材料の1つに過ぎないこともご理解ください。

1-5. 特殊なイメージセンサー

学校の授業などで習ったことがあるかもしれませんが、人間は光をRGB(赤:Red 緑:Green 青:Blue)の三色に分解して認識しています。同じようにイメージセンサーも原則としてRGBの三色の光を別々に受け取っています。尚、画素は格子状に配列されており1つ1つの画素は四角形であるため、波長の関係上赤・青・緑のうち最も多くの光を取り込める緑を1つ増やし、「RGGB」の4色で1つの画素を形成しています。しかし一部の機種には例外があり、過去のHuaweiのハイエンドモデルでは緑のカラーフィルターの代わりに黄色のカラーフィルターを用いた「RYYB」配列のイメージセンサーを搭載していました。RYYB配列のセンサーは一般的なRGGB配列のセンサーに比べより多くの光を取り込めるとされていますが、場合によっては少し写真のカラーバランスが変になってしまうというデメリットを抱えています。そんなRYYBセンサーの進化形として期待されているのが、Vivo X80の広角カメラやReno 7 Proのフロントカメラで採用されている「RGBW」配列のイメージセンサーです。RYYB配列よりさらに多くの光を取り込むことができ、カラーバランスも崩れてしまわないとされていますが、採用例がまだまだ少ないため実際の性能に関しては未知数であるといえます。

また、ボケエフェクトのある写真を撮影するために、他のカメラの補助的な役割を持つカメラを搭載することもあります。そのようなカメラのイメージセンサーは色を識別できるものである必要も、センサーサイズや画素数が必要になるものでもないため、200万画素程度の小型モノクロセンサーを使用している場合が多いです。ただしHuaweiやHonorの一部機種では、ボケエフェクトのためだけでなく画質向上などのためにメインとなるカメラとモノクロカメラを併用している場合があり、そういった機種に搭載されているモノクロセンサーはメインカメラと同じくらい大きなイメージセンサーになっています。

1-6. イメージセンサーの種類

イメージセンサーに関する知識を一通り解説したところで、具体的なイメージセンサーの種類についてみていきます。

イメージセンサーを開発しているメーカーとして、最も有名な二大大手はSonyとSamsungです。皆さんのスマートフォンのメインカメラのイメージセンサーは、ほとんどがこのどちらかのものであり、メイン以外のカメラでも多くはこの二社のものです。次点で最近有名になってきているのがOmni Visionという中国メーカーです。他にも、HynixやGalaxy Coreといったメーカーがあります。

イメージセンサーにはとても多くの種類があり、そのすべてを紹介することはできないので、特に有名なイメージセンサーのみをピックアップして紹介します。

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2. 画角

近年のスマホは背面カメラだけでも複数のカメラを搭載している機種がほとんどです。原則として、スマホに複数のカメラが搭載されている理由は、様々な「画角」の撮影を可能にするためです。「画角」とは撮影できる範囲を示す言葉です。画角が広いレンズを搭載したカメラはより広い範囲を撮影できるため、風景の撮影などに適しています。一方で画角が狭いレンズを搭載したカメラは狭い範囲しか撮影できないかわりに、遠くを撮影したり、何か1つの物体を撮影したりするのに適しています。画角が広いレンズを搭載したカメラを「広角カメラ」、画角が狭いレンズを搭載したカメラを「望遠カメラ」と呼びます。また広角カメラより更に広い画角のレンズを搭載したカメラは「超広角カメラ」と呼ばれています。

2-1. 画角と焦点距離

画角が広くなるにつれ焦点距離は短くなり、画角が狭くなると焦点距離は長くなります。画角は角度ですので、単位は当然「°(度)」になるわけですが、スマホカメラのスペックでは画角は焦点距離で示されることがほとんどです。画角と焦点距離はレンズによってだけでなく、イメージセンサーのサイズによっても変わってくるのですが、スマホカメラのスペックでは35mmのフルサイズカメラに換算した焦点距離が広く用いられます。一般的に35mm換算で焦点距離25mm前後の画角が「広角」であるとされています。これはデジタルカメラの基準で「広角」であるということですが、スマホでは原則「広角=標準の画角」として扱われます。そのため、広角カメラより狭い画角のカメラは全て望遠カメラであるとされます。例えば25mmの広角カメラと50mmのカメラを搭載している場合、50mmのカメラは2倍の望遠カメラであるということになります。同じように75mmである場合は3倍、125mmである場合は5倍望遠であるということになります。尚スマホメーカーによっては、50mm程度の、望遠カメラの中では比較的狭い画角のカメラを「望遠」カメラと呼ぶのは不自然だとして、50mm程度の人物撮影(ポートレート撮影)に適した画角のカメラを「ポートレートカメラ」などと呼ぶこともあります。

2-2. ペリスコープ

望遠カメラの画角を狭めれば狭めるほど、つまり焦点距離を伸ばせば伸ばすほど、遠くを撮影できるようになるわけですが、焦点距離の長いカメラではレンズとイメージセンサーの間の距離を遠ざける必要があります。そのため薄いスマホに望遠カメラを搭載することは難しかったのですが、近年「ペリスコープ」と呼ばれる仕組みを用いることでその問題が少し解決されました。45°に傾いた反射鏡を設置し光を90°に屈折させることで、イメージセンサーを直角に設置することができるため、薄いスマホの内部スペースでもレンズとイメージセンサーの距離を稼ぐことができるようになるのです。距離をより長く稼ぐため、一部の機種には複数回光を屈折させるタイプのペリスコープ望遠カメラが採用されています。またハイエンドXperiaなどの一部の機種では、レンズを移動させることで焦点距離を変更できるタイプのペリスコープ望遠カメラが搭載されています。

2-3. マクロカメラ

望遠カメラのとは逆で、(超広角カメラがオートフォーカスを搭載している場合)超広角カメラは至近距離の物体を撮影することができます。超広角カメラを搭載したスマホはマクロ撮影機能を搭載していることがありますが、これは超広角カメラを利用したものです。また超広角カメラにオートフォーカスが搭載されていない安価なスマホでは、別途マクロ撮影専用のカメラを搭載し、マクロ撮影に対応している場合もあります。尚、Find X3やrealme GT2 Proに搭載されている、高倍率なマクロカメラは特殊なケースですので、ここでは解説を割愛させていただきます。

3. F値

イメージセンサーに関する知識を一通り理解したところで、カメラハードにおけるイメージセンサー以外の要素について触れていこうと思います。

レンズはイメージセンサーと並んで特に重要な要素で、一眼カメラであればレンズと本体が同程度の価格で販売されているほどです。

F値は、レンズが取り込む光の量を表す数値であり、F値の低いレンズの方が多くの光を取り込めるレンズ、つまり「明るいレンズ」であるということです。
より多くの光を取り込めるということは、イメージセンサーが受け取る光の量が多くなるということですから、高感度性能アップにつながります。

実例を見てみると、iPhone 13 Pro Maxの広角カメラのF値は1.5。対してGalaxy S21 Ultraの広角カメラのF値は1.8ですので、iPhoneの方がより明るいレンズを搭載している、ということになります。

但し、F値が低ければ低いほど良いというわけではありません。確かに低いほど高感度性能は高くなりますが、その反面低いほど「ボケ」が多くなってしまいます。場合によって写真の魅力を引きたたせてくれる「ボケ」ですが、食事や書類など比較的近くのものを撮影したい場合などは、必要以上に「ボケ」てしまい、上手く写真が撮れないこともあります。

同じように、画素ピッチを大きくするためにはセンサーサイズの大型化が必要ですが、実はセンサーサイズを大きくすればするほど「ボケ」も大きくなってしまうのです。

Galaxy S21 Ultraでは対策として、近くのものを撮影するときは、センサーサイズが大きくF値の低い広角カメラから、センサーサイズが小さくF値の高い超広角カメラに自動的に切り替える「フォーカスエンハンサー」と呼ばれる機能を搭載しています。

また絞り羽を搭載し、光を1部遮ることでF値を物理的に下げる、という対策を取っているスマホも存在します。

尚、勿論レンズのスペックはF値が全てではありません。レンズの透明度などの品質やレンズフレアの発生しにくさ、色収差の発生しにくさなども、カメラレンズにおいて重要なポイントです。一般的にスマホカメラのレンズはプラスチック製ですが、レンズの品質を向上させるためガラスレンズを採用したり、反射防止のため特殊なコーティングを施されたりしている機種も存在します。

4. 手ブレ補正

イメージセンサーとレンズはカメラにとって最低限必要な要素ですが、実際に写真をとる場合は手ブレ補正やオートフォーカスも重要な要素となります。

手ブレ補正(image stabilization)はその名前の通り、手ブレを抑えるための機能です。手ブレ補正は大きくわけて「電子式手ブレ補正」と「光学式手ブレ補正」の2種類が存在します。光学式手ブレ補正を搭載しているスマホは、光学式と電子式手ブレ補正を併用してより強力に手ブレを補正できます。

4-1. 電子式手ブレ補正

電子式手ブレ補正(Electrical Image Stabilization, EIS)は撮影者の手ブレを検知し、ブレを相殺するように記録領域をずらすことで、手ブレの少ない画像を生成する機能です。つまり電子式手ブレ補正の機能があるスマホは、写真や動画を撮影する際、実際はイメージセンサーの1部の領域しか使用していないということです。

多くのスマホは動画撮影する際、写真撮影時より画角が狭くなると思います。これは動画撮影では特に手ブレ補正が重要となるため、記録領域を写真撮影時より狭くすることで、電子式手ブレ補正を強化するためです。

尚、超広角カメラを搭載したスマホの中には、より強力な手ブレ補正を有効にするモードがあります。これは、より画角の広い超広角カメラから通常撮影時と同じ記録領域を切り取ることで、更に電子式手ブレ補正を強化するという機能です。

4-2. 光学式手ブレ補正

一方光学式手ブレ補正(Optical Image Stabilization, OIS)は、カメラのハードウェアそのものを動かすことによってブレを補正する機能です。更にその光学式手ブレ補正も、どのハードウェアを動かすかによっていくつかの種類に分類されます。

スマホカメラにおいて最もオーソドックスな光学式手ブレ補正は、レンズシフト式と呼ばれるレンズを動かすタイプで、特に記載がない場合は光学式手ブレ補正といえばレンズシフト式になります。

iPhone 13シリーズの広角カメラではセンサーシフト式と呼ばれる、イメージセンサーを動かすタイプの光学式手ブレ補正が採用されています。レンズシフト式に比べ手ブレ補正の反応速度に優れるというメリットがある一方で、望遠カメラとは相性が悪いという欠点があります。

Vivoのスマホの上位モデルでは、micro PTZや疑似ジンバルなどと呼ばれる特殊な光学式手ブレ補正が採用されています。レンズとイメージセンサーを一体化し、カメラモジュール全体を動かす仕組みです。その分カメラユニットは巨大化してしまいますが、角度ブレに対して特に強い補正能力を持ち、一般的なものと比べより強力な光学式手ブレ補正であるといえます。

5. オートフォーカス

オートフォーカス(Auto Focus, AF)とはピントを自動的に合わせる機能のことです。オートフォーカスには大きくわけてアクティブ方式とパッシブ方式の2種類があります。

5-1. アクティブ方式

アクティブ方式は光の少ない夜間でのピント合わせに強い一方、パッシブ方式に比べ遠距離の被写体にピントを合わせにくいという欠点があります。

アクティブ方式のオートフォーカスは、ToF(Time Of Flight)センサーを用いて、被写体にレーザーを照射しその反射時間を基に被写体とカメラとの距離を測定してピントを合わせる仕組みとなっています。

レーザーオートフォーカス(Laser Auto Focus, LAF)の技術はToFセンサーを用いたものですが、一般的にスマホのスペック表では1点のみからレーザーを照射し1点のみとの距離を測り、ピントを合わせるためにのみ用いられる場合はレーザーオートフォーカスセンサーと呼ばれ、他方複数のレーザーを発射し複数の点との距離を測るなど、より高度な仕組みを有する場合はToFセンサーと呼びわけられています。

iPhoneのProモデルやiPad Proに搭載されている「LiDAR(Light Detection And Ranging)」もToFセンサーです。LiDARは夜間のポートレート撮影やAR技術にも利用されおり、オートフォーカスセンサーとしての役割に留まっていません。同じように一部のHuaweiやGalaxyのスマートフォンに搭載されているToFセンサーも、オートフォーカス以外に複数の機能を有しています。

5-2. パッシブ方式

パッシブ方式のオートフォーカスには更に、「像面位相差オートフォーカス」と「コントラストオートフォーカス」の大きくわけて2種類の方式が存在します。

5-2-1. 像面位相差オートフォーカス

像面位相差オートフォーカス(PDAF)に対応したイメージセンサーでは、通常イメージセンサー上に「位相差画素」とよばれる位相差オートフォーカスのための画素が設けられています。位相差画素ではレンズから入ってきた光を二方向に分け、二方向それぞれの光から得られる信号からズレを検出する。その情報を基にレンズをどのように動かせばピントが合うかを計算する仕組みです。位相差画素は通常の撮影に使える画素ではないため、位相差画素を配置した部分は画像が欠損してしまいます。そのため周囲の画素から情報を補完することになるのですが、当然それは画質の低下につながってしまうという欠点があります。像面位相差オートフォーカスを強化するには位相差画素を増やせばよいわけですが、位相差画素を増やせば増やすほど画質は低下してしまうというジレンマを抱えています。

5-2-2. デュアルピクセルCMOS

しかし近年、デュアルピクセルCMOSと呼ばれるタイプのイメージセンサーが登場しました。イメージセンサーにおけるそれぞれの画素にはフォトダイオードとよばれる光を電気信号に変換する部品が含まれているのですが、デュアルピクセルCMOSセンサーでは二つのフォトダイオードで1つ画素を構成しています。このような構造にすることで普通の撮影用の画素が位相差画素の役割を兼任できるようになるのです。オートフォーカス用に別途位相差画素を設ける必要が無いため欠損がなく、画質が低下しない画期的な技術であるといえます。また全画素で位相差オートフォーカスを行えるようになるため、オートフォーカスの性能を従来の像面位相差オートフォーカスに比べて飛躍的に向上させることができます。デュアルピクセルCMOSを用いた像面位相差オートフォーカスは、デュアルピクセルPDAFなどと表記されます。

5-2-3. コントラストオートフォーカス

コントラストオートフォーカス(CAF)は、位相差オートフォーカスに比べて仕組みは単純です。移った画像を基にレンズを動かしながら画像の明暗差が最も大きくなるポイント、すなわちコントラストが最大になるポイントを探し、ピントを合わせる仕組みです。コントラストが大きくなっているということは、つまり「クッキリ」写っているということです。イメージとしては望遠鏡や顕微鏡のレンズを動かしてクッキリ写っているポイントを探り、ピントを合わせることと同じですので、直感的にもわかりやすい仕組みだと思います。位相差オートフォーカスに比べピント合わせに時間がかかる方法ですが、イメージセンサーに手を加えたり、別途オートフォーカスのための部品を用意したりする必要は無いので、ほぼすべてのスマホカメラに搭載されている機能となっています。

5-3. フィクスドフォーカス

極めて安価なスマホや古いスマホのカメラ、或いはサブカメラやフロントカメラなどでは、オートフォーカスが搭載されていない場合もあります。そういったカメラは焦点が固定されており、フィクスドフォーカス(Fixed Focus, FF)とよばれます。

6. 露出

イメージセンサーに光を当てることを「露出(exposute)」といいます。暗い場所で黒つぶれやノイズが少ない綺麗な写真を撮影するためには、イメージセンサーにより多くの光を取り込む必要がある、というのは先述した通りです。しかし一方で明るい環境において多くの光を取り込んでしまうと、白飛びしてしまいます。そのため露出の調整はとても重要ですが、スマホでオート撮影をする場合は露出の調整をスマホがしてくれます。マニュアル撮影モードのあるスマホでは、露出を自分で調整することも可能です。以下、露出の調整に用いる要素を紹介します。

6-1. シャッタースピード

シャッタースピード(ss)とはシャッターが開いている時間のことです。シャッターを長時間開けばより多くの光を取り込めるようになるため、暗い場所でも明るく少ないノイズで撮影できます。一方でシャッターが開いている間にスマホを動かしてしまうとブレてしまいます。対策としては三脚などに固定するか、より高度な手ブレ補正を用いることがあげられます。手ブレ補正が優れたスマホはシャッタースピードを長くできるため、夜景撮影に強い傾向にあるのです。またスマホ本体を固定していてトシテモシャッターを開いた状態で動いている被写体を撮影すると、通常は伸びたような写真ができてしまいますが、夜間に三脚等に固定したうえで自動車のテールランプや星などを撮影することで光の軌跡を記録することができ、幻想的な写真に仕上がります。このように敢えて長い時間シャッターを開けっぱなしにする撮影技法を長時間露光撮影と呼びます。

6-2. ISO感度

ISO感度とはカメラが光をとらえる能力を示す値です。ISO感度を高く設定すると、イメージセンサーが光を電気信号へと変換する際、電気信号は増幅されます。電気信号を増幅すれば疑似的により多くの光をとりこんだことになりますが、同時にノイズも増幅されてしまうため、ISO感度の上げすぎには注意が必要です。より高感度なイメージセンサーであればあるほど高いISO感度でも少ないノイズで撮影できます。

6-3. 露出についてのまとめ

スマホでは「シャッタースピード」と「ISO感度」の2つを調整することで露出を決定します。シャッタースピードとISO感度は反比例の関係になっており、例えばISO感度100でシャッタースピード1秒の場合は、ISO感度200でシャッタースピード1/2秒の場合と同じ露出である、ということになります。尚一眼カメラでは「絞り羽」を用いてレンズのF値を変更することでも露出を調整できます。またスマホでも一部、絞り羽を搭載しレンズのF値を変更できる機種が存在します。

7. ホワイトバランス

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8. 画像ファイル

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C-1. フロントカメラ

フロントカメラの役割は、主に自撮りやビデオ通話(会議)、顔認証です。
〈フロントカメラの傾向〉
画面占有率競争が激化しているため、最近自撮りカメラは軽視され邪魔者扱いされる傾向にあります。そのためハイエンドモデルでもAFが無かったり、センサーサイズが小さかったりする場合が多くなっています。また最近は複数人で自撮りする需要に応え、フロントカメラの画角を広げる動きがみられます。標準のカメラアプリでも、ある程度自撮り加工できる機種が増えています。
〈フロントカメラの設置場所〉
iPhone X登場以降一気に増加したノッチに始まり、最近のAndroidスマホでは画面上に小さな穴を設けるパンチホールへの設置が主流で、フロントカメラの居場所はどんどん狭くなってきています。また必要に応じて飛び出すポップアップ式フロントカメラを搭載する機種も存在します。究極形として、画面の下にフロントカメラを埋め込むスマホも登場していますが、まだまだ普及していません。更に、思い切ってフロントカメラを廃止し、背面カメラを自撮りに使えるよう背面カメラを回転させたり、背面にもディスプレイを設けたりしているスマホも一部存在します。

C-2. 動画撮影

この記事では動画撮影に関する解説を基本的に行いませんが、ここで軽く触れておきます。
〈解像度について〉
解像度が1920×1080の写真や動画をフルハイビジョン解像度といい、フルHD(FHD)や1080p、1Kなどと表記します。同じように解像度が2560×1440のものをWQHD/QHD/2.5K/2K/1440p、解像度が3840×2160のものをUHD/4K/2160p、解像度が7680×4320のものを8K/4320pなどと表記します。画素数で表すとフルHDは1920×1080=約207万画素、4Kは3840×2160=約829万画素、8Kは7680×4320=3300万画素となります。そのため、画素数が3300万画素に満たないイメージセンサーを搭載しているスマホでは、8K動画を撮影することができません。尚、無駄に解像度の高い動画を撮影してもあまり意味がないことは、写真撮影と同じです。
〈fpsについて〉
動画は何枚もの連続した画像で構成されていることは皆さんご存知かと思います。fpsとはフレームパーセカンド(Frames Per Second)の略であり、動画が一秒間あたり何枚の画像で構成されているのかを示す単位です。例えば60fpsだと一秒あたり60枚の画像で構成されていることになります。つまりより高いfpsの動画はより滑らかな映像であるということです。最近では廉価機種でも90Hzや120Hzの表示に対応していますが、一般的にスマートフォンのディスプレイは60Hzであり、ゲーム等と異なり単なる動画視聴では高リフレッシュレートディスプレイの恩恵を受けにくいため、動画撮影も60fpsで十分だとされています。スローモーション動画を撮影できるスマホでは、スローモーション動画撮影モードにおいて120fpsやそれ以上のfpsを選択することが可能です。たとえば120fpsで撮影されたスローモーション動画では、通常の動画が60fpsなわけですから、動画を一秒あたり二秒かけて表示することになります。つまり2倍スローな動画であるということになります。240fpsでは4倍、960fpsでは8倍スローということです。尚、高リフレッシュレートディスプレイ搭載の端末では、スローモーション動画でない高fps動画を撮影できる機種も存在します。

まとめると、例えば4K60fpsの動画とは3840×2160の解像度で一秒間あたり60枚の画像で構成されている動画ということになります。当然ですが解像度が高く高fpsな動画であればあるほど、映像は綺麗であるぶんデータ容量は大きくなってしまいます。

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