記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。

読書感想文『Yの悲劇』

必読という言葉がある。私はあまりこの言葉が好きではなかった。読むことを強制されている気がするからだ。もしも本の話をしていて「必読だよね~」なんて言われたら、今後その人と本の話をすることは無いと思う。

そんだけで人と話さないなんて、損な人だね。なんてダジャレおじさんが登場するかもしれない。私はそれだけ何かを強制されるのが嫌なのだ。縛らないで欲しい。私を。

私がこの本を手に取った理由のうちに、そんな強制感に対する反抗心が無かったとはいえない。読んでみて「何が必読だよ、面白くないわ」と言いたかったのかもしれない。ただ『Yの悲劇』を読み終わったとき、そんな事を言う気は微塵も起きなかった。面白かった。


この本は、家主が自殺したある一家で、卵酒に毒が入れられるという事件から始まる。その卵酒は盲ろう者である長女ルイザが日課として飲むものであり、その日課を知っている人物の犯行であろうことから、探偵役のドルリィ・レーンと警察と検事は、家族の犯行であると推理する。しかし、明確な答えが出ず捜査は行き詰ってしまう。

それから数日、家主の妻エミリーが殴殺された。調査を進めていくうち、エミリーと同室で眠るルイザの為に用意していた果物へ毒が入れられていたことがわかり、エミリーは口封じに殺されただけで、本当の狙いはルイザだと警察と検事は判断し、捜査を続ける。さぁ犯人は誰だ、動機はなんだ、という本だ。

故人である家主が作った小説が出て来た時、読者は犯人がジャッキーで、小説の筋書き通りに犯行を行っていたとすぐにわかる。また、犯人はジャッキーしかありえないと、それ以前に気づけるようになっている大胆なヒントに、私は驚いた。だが、それよりも私が衝撃を受けたのは、レーンがジャッキーに与えた最後のチャンスだ。

筋書通りであれば、毒が入れられたルイザのコップをジャッキーが奪うことになっている。だが、ジャッキーは自分のコップを選び、そして死んだ。なぜジャッキーが死んだか分からないという警察へ、事件のあらましと、殺人に魅了されたジャッキーはもう救えなかったと説明するレーン。明確に描写されてはいないが、レーンがルイザとジャッキーのコップを入れ替えたのだと、私は取った。

毒が入っていると知りながら、レーンはコップを入れ替えたのだ。もしもジャッキーが筋書き通り、毒が入っていると知りながらもルイザからコップを奪うのならば、ジャッキーは救われても良いはずだと願って。話を聞き、全てを察した検事が、警察を連れて帰るところでこの本は終わる。なんて悲しい終わりだろう。


私はこの本を「必読だ」と言うと思う。ただ、そこに強制感を込める気はない。私がこの言葉に込める意味は、面白いので是非読んで欲しいということだ。必読とは、多分そういうことだったのだろうと、私は反省した。

この感想で、この本の面白さが伝えられたのだろうか。
もし面白さが上手く伝わってないなら、ワイの悲劇やな!
あ、ダジャレおじさん、しばらくぶりっすね。
卵酒、いかがっすか。

この記事が参加している募集

#読書感想文

192,058件