中野坂上デーモンズ 安藤安按

いまあなたがこの文章を読んでいるということは、中野坂上デーモンズ第19回『で』の最終公演が演劇の聖地、下北沢、ザ・スズナリで上演されたということだろう。なぜならわたしはこの文章を明日14:00の公演がはじまる直前、「客席の舞台」から投稿しようと思っているからだ。

2021年1月12日時刻は22:30。電車を二駅乗り過ごし、スーパーに寄ってから帰宅し、冷凍パスタ(大盛り)と袋のままドレッシングをかけたカット野菜を食べながら書いている。テーブルの上は飲み終わったペットボトルやら化粧品やらゴミやら調味料やらめっちゃくちゃにのっかっていて100%食事に適した環境ではない。こんなテーブルでも平気なやつがカット野菜を皿に移すわけがない。

と、そんなことはどうでも良くて、重要なことは中野坂上デーモンズの連続公演が明日(今日)終わるということだ。夢のスズナリの舞台にわたしは立った。演劇をはじめたときはスズナリで演劇をするなんて本当に夢のような話で、例えるなら、石油王と結婚してーという話くらいただの夢だった。でもそんな夢をデーモンズが、モヘーさんが叶えてくれた。わたしはちゃんとデーモンズになれたかな。

「私がこの劇団にはいったのは2020年のあの春の事だった!よく考えるとまだ1年も経っていない!」と、これはわたしが『で』で実際にしゃべっている台詞のひとつで、本当にわたしとデーモンズの歴史は浅い。

はじめてデーモンズに出たのは2019年4月。つまりそもそも出会ってから3年弱。デーモンズの歴史的に言えばわたしはゴリゴリの新参者で、デーモンズがアイドルグループなら古参のオタクにバチバチに叩かれていたかもしれない。とりあえず劇団で良かった。新参者かつ普通にネガティブ思考な安藤は実は「中野坂上デーモンズの劇団員」であるということが毎日怖かった。

デーモンズはわたしがデーモンズに出会う前からこの世に存在していて、だから当然わたしが出会う前から一緒に作品を作っている役者さん、スタッフさんがいて、わたしが出会う前から見ているお客さんがいて。それらすべての人たちにとってわたしは、え?てか、誰ですか?状態の人間なのだ。そもそも本公演に出たことすらない。だから、どう思われてんだろうなーといつも思っていた。同じく劇団員の中尾ちゃんは、デーモンズフリークの方ならたぶん印象に残っている「あのときの中尾」がいくつかあると思うけど、わたしにはそれがないことが結構コンプレックスだったりする。

8月『終わる』を見て大号泣した。涙腺がバカなのでお芝居を見て泣くことはしょっちゅうだが、声を上げて泣いたのははじめてだったので本当にびっくりした。自分も出たかった、みたいな感情ももしかしたらあったのかもそれは自分でもよく分からないけれど、とにかくモヘーさんの書く言葉がすごくすきだと思った。そう言えば3月に『回る』に出たときに、この人は天才だと思ったんだった。本当に冗談抜きで。

そんな天才の劇団に入ってはじめての本公演が12月の『間』だった。マルチタスクが苦手な上に作業が遅く勝手に忙しい感じになったり、さらにお芝居が言われた通りにできず悔しくて、集中稽古中に稽古場でベロベロに泣いた。一応みんなの前からは逃げたのでバレてはないと思う。ちなみに本番中は普通にみんなの前で泣き崩れたりしていた。いまのところ泣いた話しか書いてなくてやばい。演劇のことも、モヘーさんのことも何度も嫌いになりかけた。

『で』では、『間』で頭がおかしくなってしまった安藤を心配してくれたのか、モヘーさんは優しくて、台詞も減っていた。ただ、モヘーさん自身が「中野坂上デーモンズオールスターズ」と言う役者陣なだけあって、自分が存在していなくても全然成り立つなって毎日思って、また違った意味で勝手にしんどくなっている。

で?って話なんだけど、いまここまでの文章。書きはじめたときに何を言いたかったのかよくわからなくなってきた。デーモンズがすきだということなのか、モヘーさんがすきだということなのか、デーモンズを愛するすべての人にわたしのことも愛してほしいということなのか、感謝なのか、不甲斐なさなのか。たぶんその全部だ。


わたしちゃんとデーモンズになれてるかな。これからもデーモンズでいいのかな。なれてるよ、いいよ、って自分が自分に言ってあげられるようにラスト一公演全力出し切る。行ってきます。

中野坂上デーモンズ 安藤安按


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