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「Leica BLK360 G1」で、3Dスキャンを検証してみた(2/2)

皆さん、はじめまして。ANDPAD ZEROの木村です。

今回は、前回記事「「Leica BLK360 G1」で、3Dスキャンを検証してみた」の続編をご紹介したいと思います。

前回記事では、「Leica BLK360 G1」を使用した”屋内”でのスキャン結果における「描画特性検証」と「機能比較検証」の結果についてお伝えしました。今回は、オフィスを出て、”屋外”でのスキャン結果について検証結果をご紹介します。


自己紹介

本Noteを執筆するのは初めてになりますので、まずは自己紹介をさせてください!

私は今年3月に大学院を卒業し、4月に新卒としてアンドパッド/ANDPAD ZEROに加わりました。
現在は、入社時の研修の一貫として、専門工事事業本部のカスタマーサクセス部で顧客に対するANDPADの導入支援や運用支援といった業務に従事しつつ、一部、今回の検証などANDPAD ZEROのプロジェクトにも携わっているところです。

少し入社前の学生生活についてもご紹介します。
大学院では、3次元モデリングツール「ライノセラス」とライノセラスのプラグイン「グラスホッパー」を用いたパラメトリックデザインや、意匠と施工方法を両立させながら棚を制作するプロジェクト、またモバイルセンシング技術を活用した個人的温熱快適性の改善方法の研究を行ってきました。

どの取り組みにも共通していることは、デジタル技術・3D技術を活用することで、日々の仕事や生活で建築空間に関わる人々に、建築空間との関わりをより快適に、楽しく感じてもらいたいという点です。
建築・建設業界課題の解決を試みるアンドパッドの中でも、特に先端技術に着目するANDPAD ZEROは、私の大学院時代の取り組み・思いに通づるところが非常に大きいと思い、入社を決意しました。

まだ実務へ普及していない技術を活用して業界全体の課題を解決するための「0→1」を作り上げていくために、様々な方からフィードバックを頂きながら日々の業務に取り組んでおります。まだまだ分からないことばかりですが、新卒として入ったからこそ得られる気づきや学びがあると信じて、そのような気づき・学びをこれからnoteや様々な場所で発信していきたいと思っていますので、どうぞ宜しくお願い致します!

「Leica BLK360 G1」で、3Dスキャンを検証してみた(つづき)

それでは記事の本題である、前回記事の続きに移っていきたいと思います!

検証内容一覧

前回の記事では、下記表の検証番号1-5の検証内容、主に”屋内”でのスキャンの「描画特性検証」、「機能比較検証」についてご紹介しました。今回は、”屋外”での3Dスキャンにおける機能や精度・注意点を検証した検証番号6-7の結果についてまとめていきます。

検証結果

それでは早速検証結果を見ていきましょう。

検証結果|機能比較検証3(屋外撮影に最適な測定点群密度)

機能比較検証3では、屋外での3Dスキャンにおける、Leica BLK360 G1上の撮影モードによる見え方の違いと寸法計測における精度について検証しました。前回記事でも紹介しましたが、BLK360には3つの撮影モードが搭載されています(表)。

スキャン密度と撮影標準時間

スキャン密度と撮影標準時間
実際に弊社オフィスビルの入口付近を3つのスキャン密度ごとに撮影したデータがこちらです。

点群密度による仕上がりの違い

点群密度による仕上がりの違い
点群密度が高ければ高いほど、より遠くまで鮮明に計測できている事がわかります。
ちなみに、道路上に写ってしまっている放射状の影のようなものは、撮影時に映り込んでしまった通行人や車です。このように人や車が映り込んでしまうと、それらにレーザーがあたってしまい背後のデータを取得することができなくなってしまいます。
また、スキャンした点群データの編集段階においても、人の像を取り除く作業は手間がかかります。そのため、実務においてはスキャン時の段階でなるべく人や車が入りこまないようにする必要があります。

次に、本検証では、実際に特定の地点について、現実の寸法とスキャン上の寸法の比較を行いました。
比較を行ったのは、下記の2箇所です。どちらも、点群密度:高の撮影モードで撮影しました。
①撮影点に一番近い(約1m)地面タイルの幅
②撮影点から約15m離れた建物外壁タイルの幅

上記の写真のように、①、②では、実測値と比較して、それぞれ3mm、14mmの誤差が生じていました。
誤差の原因としては、以下の2つが考えられます。

【原因1】撮影点からの遠さと比例して低下する点群密度
本撮影に使用した「スキャン密度:高」では、撮影点から10m離れた地点で平均5mm間隔の点群を計測することができるとされています。裏返すと、10m離れた地点の物体を5mm以下の精度で計測することは難しい、と読むこともできます。
また、計測された点群は綺麗に等間隔で並んでいるわけではないので、5mm以上の誤差が生じてしまうことも推測できます。②では、撮影点から15m離れておりますので、距離と誤差が比例すると考えると、場合によっては7.5mm以上の誤差が生じてしまうことになります。

【原因2】編集ソフト上のグラフィックスにおける境界選択・点選択の難しさ
①、②ではともに、撮影点からの距離に応じた誤差として想定する数値以上に誤差が生じていました。
もう一点誤差を生んでしまう主な原因として、点群撮影後の編集段階における境界選択・点選択の難しさが挙げられます。実際に点群が編集ソフト上でどのように見えるのかを表した図が下の3枚の写真です。

一番右の写真のように、対象部を拡大し、点の表示を大きくした状態で、境界上の点の選択を行うことに試みましたが、どこが境界線上の点なのか分かりづらいことが見て取れると思います。
「どの点が境界線に一番近く位置しているのか」を探す作業には少し時間がかかりましたし、1つ隣の点を選択すると【原因1】で記載したように数mmの違いが生じてしまいます。

精度がもっとも良い「点群密度:高」であっても、15m先の寸法に7.5mmほど誤差が生じてしまいますので、高い精度での3Dモデル化を求める場合には、なるべく高い撮影精度とすべく近距離の撮影を繰り返し行うほうが良さそうです。
今回私は上記の方法で寸法を計測しましたが、より良い方法をご存じの方がいらっしゃるかもしれません。なお、点群データは原理上離散的なデータですので、3Dスキャンを試してみる際は、どこかのレベルでこのような問題に対処しなければいけないということは覚悟する必要がありそうです。

検証結果|機能比較検証4(屋外での複数支点重ね合わせに最適な支点間距離)

最後の検証では、屋外の複数地点で撮影した点群データをLeicaのソフトウェア上で重ね合わせるにあたり、撮影点間距離の大きさが外見上重ね合わせ精度へ影響があるのかについて検証しました。

上記の写真は、屋外で大通り沿いの歩道を3地点から3Dスキャンしたものを重ね合わせた画像になります。上から表示した点群データ(左)、矢印方向から表示した点群データ(右2枚)のいずれも、途切れ目がなく滑らかに重ね合っていることが分かります。
例えば、複数地点から柱の両側面をスキャンした後、滑らかに重ね合わせることができると便利ですよね。今回撮影した地点間の距離は約15mでしたが、見た目上問題なくスキャンの重ね合わせをすることができました。
ただ、ビルのようにどの地点からのスキャンでも映るような物体(重ね合わせに便利)がない場合や、精度が必要な場合(機能比較検証3を参照)では、より撮影点間の距離を近づける必要があるため、撮影物と要求精度を考慮に入れて3Dスキャンをする必要がありそうです。

検証のまとめ

前回記事と本記事の2記事にわたって、弊社で行った高精度レーザースキャナーLeica BLK360 G1の検証結果をご紹介しました。
今回の記事でご紹介した機能比較検証3・4では、以下の点について確かめることができました。
●Leica BLK360 G1では、屋外でも見た目上綺麗な3Dスキャン・重ね合わせができる
●寸法計測は、撮影する点群の密度、撮影点からの距離、編集ソフト上での操作の要因で誤差が生じてしまうため、撮影対象物と要求精度を考慮した撮影方法を選択する必要がある

また、前回記事も含めた全体を総括すると、以下のような結果としてまとめることができました。
●設計でも活用するような精度で作成したい場合:
要求精度を達成できる点群密度で対象物を測定できるようなスキャナーの配置を計算することが必要。
具体的には、5mm以下に収めたい場合は撮影点から10m以内で撮影 / 2.5mm以下に収めたい場合は撮影点から5m以内が望ましい。
●全体像を把握したい場合:
複数スキャンの重ね合わせ・全体像の確認のためには、対象物・撮影環境によって状況が異なることに留意にしつつ、撮影点間の間隔、撮影密度を適切に設定することが必要。
具体的には、本検証においては、撮影点間の間隔を、屋内だと5m間隔、屋外だと10m間隔に設定することで複数スキャンの重ね合わせ・全体像の確認が可能であった。撮影精度については、屋外だと「点群密度:高」が推奨され、屋内だと「点群密度:中」でも可。
●レーザースキャナーで計測が難しいもの:
 ・鏡面、反射材、透過材(ガラスなど)
 ・厚さや幅が40mm以下の部材
 ・配線など微細な物体が混み合っている場所
今後皆さんがLeica BLK360を活用される際に参考にしていただけると幸いです。

おわりに

今回のnoteでは、平塚さんの記事に続く形で、Leica BLK360 G1を使用した屋外での3D scanについて簡単な検証結果をご紹介しました。

個人的には、道路や植物、段差、車、建物など様々な物体が混在する屋外空間でもデジタルツインを構築できることがわかり、非常に有意義でした。一方で、検証結果の末尾にて少しお伝えしたように、何を撮影するか、どれくらいの精度が要求されるか、によって撮影方法は全く異なることも留意したいところです。今回の検証を行う中でも、検証に協力いただいた平塚さんと一緒に「この場合はこう撮った方がいいよね」と学びながら撮影のコツを掴んでいきました。是非皆さんも撮影したい対象物がありましたら、様々な方法で撮影してみて一番最適な撮影方法を見つけてみて下さい!
最後に、これからもANDPAD ZEROの一員として本noteをはじめ、様々な取り組みを牽引していきますので宜しくお願い致します!


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