自分が「あんで」なワケ

7.8年前から、名前で呼ばれることが格段に少なくなった。

それまでは、杏奈ちゃんとか、杏奈とか呼ばれることがままあった。

自分は自分の名前が好きではない。

何故か。

うちの弟は父から一文字継いだ名前が付いている。名前の意味もなかなか考えられたものだった気がする。

まず名前が嫌いな理由の一つ目に、私の名前には意味がない。意味はあったのかも知れない。しかし、まさかすぎるのだが、父母どちらも覚えていない（そんなことあるか？）

意味のない名前ほど虚無めいたものは無いと思う。ただでさえ、名前って携帯の識別番号並みに個々を判断するだけのものなのに。

二つ目に、杏奈はどうしても「女の子」の名前だから。別に自分の性にコンプレックスがあるわけではないが、どうしても呼ばれて違和感を覚えてしまう。自分の名前なのに。

三つ目。もうこれは自分の被害妄想でしかないが、他人から見てどう見ても自分の顔が「杏奈」ではないと思うからだ。杏奈って名前の子、なぜかみんな顔が可愛い。ので、テレビとかで杏奈という名前のタレントやモデルを見るともにゃっとする。

じゃあ、なぜ「あんで」になったか。

あった人にはまず「なんであんでなん笑」みたいな反応をもらう。

私は気に入っている。あんで。な、がで、になっただけで実にちゃらんぽらんな名前になったもんだ。

遡ると、中学時代に戻る。

私は吹奏楽部だった。自分の背丈と同じくらいのバリトンサックスをブーカブーカ、と吹き鳴らしていた。その頃の私はまあモサモサの山の猿みたいないでたちで、どうしようもなかった。その頃から自分の名前に違和感があった。

部内の美人が、自分のことをアンディと呼んでるのに気づいた。

アンディ。おしゃれや。

しかも、美人からそう呼ばれるのは悪くない。悪くないというか、むしろ良い。

まあなんていうか、美人はすごくて、美人一人がそう呼び出すと、みんながそう呼ぶようになるんだと私は13にして新しい知見を得た。

高校時代は、演劇部に入った。台本ばかりガリガリ書いてるような人間だったので、舞台に上がったのは1.2度。

入ったとき、みんな経験あると思うがなんで呼べば良い？タイムみたいなのがあると思う。その時にみんなニックネームがぱらぱらで出すんだが、私はアンディーで押し通した。ありがとう、美人。

が、

「アンディーて長いな。あんで、で。」

画して、千と千尋の神隠しにでる湯婆婆に名前をとられたかの如く私は「あんで」になったのだ。（この経緯を職場の先輩に話したらまあまあウケた）

私自身、あんでという名前は気に入っていてLINEの名前もあんでにしてるせいで、職場でもあんでと呼ばれるようになった。

しかし、これだけあんでと呼ばれても数人はあんちゃんや杏奈、と呼ぶ。

呼ばれる身からしてわかるのだが、その人たちの呼ぶ杏奈、というのはなかなか敬愛が篭っていて、違和感はあるものの、嫌だとは思わないのだ。

まあ、そういう話だ。

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