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絆創膏を買ってきてくれない?#2


お兄さんは誰も信じない人だと思う きっとそう
だからわたしはちゃんとお兄さんを信じようと思う

そう思って いいな そう思っていたら 怒られた

いつも呑むお姉さんたちに怒られた
なにも怒られたって事が悲しくなったわけではない

わたしとお兄さんの隠していたあの日を
わたしとその子との隠していた大惨事を
わたしとあの子との隠していた関係性を

全てを知っていたのだ この界隈の人たちは
みんな知っていたのだ ここの大人たちは


理由を聞くと ここにいるからだよと言い放たれた
理由を聞くと それじゃ狙われるよと怒られた
理由を聞くと 線引きをできてればいいけどね
最後には   ここに連れてくるから と言われた
あの子とその子を連れて行った事はよくなかったのか
お兄さんを誘った事はよくなかったのか そうなのか

でも

わたしとお兄さんのあの日は 
本当に呑んで飲んだだけだが
ただなんとなくあの日の話は
他に伝わらないで欲しかった
ただなんとなくあの日の話は
2人だけの秘密だと思ってた
すごく特別な話をしたから。
あの子との大惨事も関係性も

わたしがお兄さんに話して知って欲しかった

けれどお兄さんはわたしが思う限り
特別と表したあの話は絶対
言っていない

周りにとってわたしとお兄さんの組み合わせは
おかしいんだきっと わたしはそうは思わない
お兄さんにとってわたしとお兄さんの組み合わせは
おかしいんだきっと わたしはそうは思いたくない

そうは思わない そうは思いたくない
でもたしかにおかしかった のだろう ね

けど憧れる人の話は聞いてみたい 知りたい この人ってどんなふうにご飯を食べるのかな お酒の飲み方はどうなのかな どんなふうに喋るのかな 酔うとどうなるのかな ただ知りたかった どこが才能なのか見たかった

 けどそれだけ。

みんなが知っていたということは
ここで飲むことは裸で飲むようなものだ
みんなが知っているのは
ここで裸で飲んでいるという事実だけだ
みんなが知らないだろうなってことは
わたしがどんな気持ちでそこにいるかだ
みんなが知らないふりをすることは

気持ちわるい泥沼に裸で浸かって隠れていること

田舎みたいで気持ち悪いな
わたしとあっちの子と隣の子の補足までバレてる
お兄さんに嘘ついてるって思われたかも
悲しかった わたしが話したかったのにな
悔しかった 思ってたほどここは綺麗じゃなかった
勝手に期待しすぎた 勝手に 本当に勝手に

この日は お兄さんだけが笑わないで応援してくれてた ギターの上達具合を披露したくて お店に行こうとしていた日だった

けれどお兄さんはこの日はお店にいなかった

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