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【イベントレポート】「デジタル時代のモビリティ×ライフスタイルの未来とは?」

こんにちは。AND ON SHINAGAWA運営事務局です!

noteでは、AND ONで行われる様々なイベントのレポートも定期的に発信していく予定です。

今回は、2020年1月20日(月)にAND ON SHINAGAWAにて行われた、
「デジタル時代のモビリティ×ライフスタイルの未来とは?」#3(全3回)〜MaaS×暮らし編〜
の様子をお伝えします。


カーシェアや自動運転などの言葉が一般化し、人々の認知度も高まっている「MaaS」(マース)

昨年、2019年には国土交通省が「新モビリティサービス推進事業」の公募を行うなど、国を挙げて「日本版MaaS実現」に取り組んでいます。

そんな中、MaaSを軸にビジネスを創出するスタートアップや、新規事業の立ち上げに挑戦する大手企業も少なくありません。

しかし、まだまだ検証中の事業がほとんどであり、分からないことも多いのが実情。今後私たちの生活でMaaSはどのように活用されていくのでしょうか。また、大手企業はMaaSにどんなビジネスの可能性を見出しているのでしょうか。

三菱総研が注目する、目的型MaaSって?
MaaSの現状と、実現に必要なこと

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モビリティ変革をテーマ領域とするオープンイノベーション拠点「AND ON SHINAGAWA」と、三菱総研の共同企画となる今回のイベント。

まずは、イベント内で語られた、株式会社三菱総合研究所森下氏による「MaaSの現状と実現に必要なこと」そして、「MaaS事業のマネタイズ」について、ピックアップしてお伝えします。

そもそもMaaSとは何なのでしょうか。
森下氏の登壇から、改めてMaaSの定義を確認してみましょう。

<MaaSとは>
▼MaaSとは、あらゆる交通手段を統合し、その最適化を図った上で、快適な移動サービスを提供する新しい概念。
▼MaaSの実現には、現状で交通機関×検索・予約・決済毎に異なるサービスの統合がポイント。
▼地域特性や導入目的に応じて、異なる種類のMaaSが存在。
                       
                       ーイベント登壇資料より

MaaSの語源は、Mobility as a Service(サービスとしての移動)。個々人の移動をより最適化するため、移動場所や目的に合わせてあらゆるサービス(モビリティと周辺サービス)の検索・予約・決済を統合した新しい概念です。

森下氏「例えば、〝東京から大阪に行く”という時に、新幹線で行く場合はJRのサービスを使いますし、飛行機で行く場合は航空会社を利用します。また、決済もキャッシュレス化が進んでいるとはいえ、まだまだ〝この交通機関だとこの決済しか使えません”という状況は少なくありません。

1つのサービスにおいて、検索・予約・決済の全てが統合されていることが、MaaSの理想形だと考えます。」

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例えば、MaaS先進国のフィンランドでは、whim(ウィム)(MaaS先進国フィンランドのMaaSアプリサービス)というサービスが普及。電車・バス・タクシー・バイクシェアなどの移動手段がパッケージ化されており、毎月定額の料金を支払うことで、移動場所や移動目的に合わせて、最適な手段を選んで利用することができます。

これにより、個人が車・バイクを所有する必要がなくなり、渋滞・駐車スペースの削減や環境汚染の減少が実現したり、満員電車が改善されたりと、様々な効果が期待できます。

森下氏「MaaSの実現ができている国では(※1)マルチモーダルサービス(検索・予約・決済)の導入が進んでいるということが言えます。情報や案内、決済などの技術を持っている企業移動手段をもっている企業サービス連携をして、新たなサービスを提供しているのです。

さらに、移動だけでなく、その周辺のサービスとも提携して〝生活を一体的に支えていくようなサービスを提供しよう”という流れも生まれています。

例えばコンビニ、不動産、駐車場、観光などの提携も見られるようになってきていますね。」

(※1)マルチモーダルとは、航空・鉄道・車両など異なる交通機関を、より効率的な輸送・物流のために組み合わせること。
ここでいうマルチモーダルサービスとは、異なる交通手段を組み合わせて利用しても、「検索・予約・決済」を一本化できるようなサービスをさします。

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出典:国土交通省 第6回 都市と地方の新たなモビリティサービス懇談会

また、MaaSはエリアと導入目的によって5種類に分類されるのだそう。

森下氏「いくつかあるMaaSの種類の中で、我々三菱総研が着目しているのが、観光地型MaaSです。

他のタイプのものは都市や地方などのエリアで区分しているのですが、観光だけはエリアではなく、〝エリア×移動する目的”なんですよね。

弊社ではこれを目的型MaaS(例:モビリティ×観光、モビリティ×健康等)と呼び、注目しています。」

MaaSの収益化は難しい?実現に繋がる3つのキーとは

提携できるサービスが多数あるMaaSですが、これらを新たなビジネスとして確立させるために、重要となってくるのがマネタイズです。

<MaaSマネタイズの実現に向けて>
▼現状、新しいモビリティサービスのマネタイズ(収益化)は進んでおらず、当面の課題である
▼収益化の成功要素は「スケール化による限界費用の低減」と「高付加価値化によるユーザ支払額の拡大」の2つ
▼「モビリティ×コンテンツ」による新たな顧客体験の提供が必要

                       ーイベント登壇資料より

森下氏「現状として、国内のMaaS事業は顧客の獲得やビジネスモデルの確立に注力している段階がほとんどで、マネタイズは進んでいません。

マネタイズの実現には〝スケール化による限界費用の低減”〝高付加価値化によるユーザ支払額の拡大”の2つが重要になると考えていますが、モビリティ領域において前者は難しいでしょう。

例えば、ネットフリックスのような動画配信サービスの場合、動画を1つ仕入れた時に多くのユーザーに見てもらえば見てもらうほど限界費用が低減され、収益化がなされます。しかし、京急さん(モビリティ)がスケール化を計った場合、〝鉄道でたくさんの人を運ぶ=運行列車が増え、費用がかさむ”ということになり、限界費用を低減していくことが難しい…。

そのため、モビリティ領域の収益化においては〝高付加価値化によるユーザ支払額の拡大”が重要となってくるでしょう。

この、〝高付加価値化によるユーザ支払額の拡大”でキーとなるのが、〝モビリティ×コンテンツ(目的型MaaSを意味する)”です。

モビリティ=移動手段
コンテンツ=移動した先で何をするのか?(=目的)

ここを組み合わせることによって、新たな顧客体験の提供が実現するのです。」

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出典:三菱総合研究所

森下氏「モビリティと他産業の組み合わせはたくさん考えられますが、その一部がこちらです。

たとえば、今回のイベントのテーマである〝日常の生活”を軸に考えてみましょう。

▼例1.モビリティ×保険
自動運転(MaaS)の普及に伴う新しい保険サービス
▼例2.モビリティ×エネルギー
柏の葉のようなスマートシティ。街全体のエネルギーの効率化など
▼例3.モビリティ×医療(ヘルスケア)
MONET Technologies(株)と長野県伊那市、(株)フィリップス・ジャパンの協業による「ヘルスケアモビリティ」など
(医療機器を搭載した車内でビデオ通話をすることで、医師が病院からし指示を出し、看護師が患者の家を訪問して検査や処置を行うことができる)

このように、モビリティと周辺サービスが繋がると、各個人が移動の目的に合わせた最適なサービス(移動だけでなく検索や予約、決済も一体化した新しいサービス)を選択できるようになり(パーソナライズ化)、サービスの付加価値の向上に繋がります。

〝(周辺サービス・領域と)つながる・パーソナライズ化・付加価値の向上”

この3つがMaaSの収益化におけるキーとなってくるでしょう。」

MaaSと暮らし。MaaSを軸にしたまちづくりの可能性

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森下氏「〝病院へ行く”〝学校へ行く”〝仕事へ行く”などの日常生活の軸にモビリティをおき、ICTで繋いでいくと、データが一箇所に集まってきます。

これにより、都市全体という目線の中で、生活課題をどう解決していくかが見えてくようになる…。

東京都が東京ユアポイントという地域通貨を始めましたが、MaaSと地域通貨を組み合わせるのも良いですね。

日常生活に必要な色々なものを、MaaSは〝移動する”ということで繋いでいく…目的型MaaSを通して、あらゆる生活課題の解決に繋げていける可能性があるのです。」

 森下氏のお話をまとめると

▼MaaSとは既存サービス(モビリティとその他のサービス)を統合した新しい概念
▼MaaSは地域や導入目的により5種類に分類され、三菱総研はエリアに区切られない「モビリティ×観光」(目的型MaaS)に注目している
▼MaaS収益化のカギは、既存の他のサービスと組み合わせることで、パーソナライズ化した新しいサービスを生み出し、付加価値を向上させること
▼モビリティを軸に、日常生活におけるあらゆる行動を繋げることで、まち全体の課題解決やまちづくりに活かすこともできる

とのことでした。

小売業も他産業との連携が必須
三越伊勢丹が感じる、変化する市場と顧客ニーズ

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森下氏のお話の後は、特別ゲストの三越伊勢丹HD 事業企画推進ディビジョン長 菅沼 武氏とAND ON SHINAGAWAの運営を担う京浜急行電鉄株式会社 新規事業企画担当 橋本 雄太氏によるパネルディスカッション。

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百貨店として有名な三越伊勢丹HDですが、時代の変革に合わせ、新時代の百貨店(プラットフォーマー)創出のため、さまざまな挑戦をしているそうです。

菅沼氏「都市型の小売はとくに、モビリティの影響を受けやすいんです。例えば、新宿三丁目の駅ができた時も、伊勢丹への人の出入りが大きく変わりました。
鉄道はもちろん、モビリティの部分を一緒に創っていける存在がいないと、本当に厳しいですね。」

橋本氏「百貨店って、リッチな場所なので、日常生活で利用するスーパーなどより目的性が高いと思うのですが、それでもやっぱりモビリティって大事なんですか?」

菅沼氏消費行動の変化という部分がやはり大きくて。
分かりやすい話だと、所有からシェアの時代になってきていることに伴い、単なる所有欲が減っているんですよね。
それにより、百貨店に来るお客様の目的も少しずつ変わってきて…。」

橋本氏「具体的には、どう変わってきているのでしょうか?」

菅沼氏「ECなども普及しているこの時代に、百貨店で買い物をする人のニーズは何なのか…背景には、単に“欲しい商品だから購入する”ということだけでなく、“この販売員さんに勧められたから購入する”という、販売員との信頼関係があるのです。

そうなってくると、”この方のために買ってあげたい”という心理が生まれ、ただ服を新調するだけでなく、その先の目的まで提供して欲しい(何のためにその服を購入するのか、その服を購入してどこへ行くのか等)というニーズが生まれてきます。
そこで、過去に旅行業を始めてみたこともありました。

また、所有よりシェアの時代になってきているので、現在レンタルサービスも始めています。
ブランド物のドレスなどを定価の20%程度でレンタルできるサービスで、当初我々は、主なニーズとして“結婚式に来ていくこと”を想定していました。

ところが実際には習い事のためにレンタルする人も多く、“習い事という頻繁に会うコミュニティだからこそ、違う服を着ていきたい”というニーズがあったのです。
お客さんは既にコミュニティを持っていて、そのニーズに我々がまだまだついていけていないのだと感じました。

お客さんのニーズに合わせて、他産業、そしてモビリティとの連携もとっていかなければならないと考えています。」

橋本氏「実際に、“小売×モビリティ”という括りで挑戦されていることはありますか?」

菅沼氏「新潟に三越と伊勢丹があるのですが、年に2回ほど、佐渡島に商品を売りに行くんです。分かりやすく言うと行商ですね。

春だったらランドセルの受注を全部パッケージ化したり。
そもそも、お客様が百貨店に行く回数って数十年変わっていなくて、平均して年に3〜4回くらいなんですよね。
なので、店舗がない地域でも、年に数回商品を売りに行くことができれば、ニーズを満たせるわけです。

“適切なタイミングで適切な商品を売りに行く”という点に関して、モビリティと絡めてまだまだ改善ができそうだなと考えています。」

大手・ベンチャー・行政の異なる目線で考える
MaaSのこれからと、暮らしの中でのニーズ

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最後に、森下氏、菅沼氏などの話を聞いた上で、参加者の方々(大手企業の新規事業担当の方が最も多く、次いでスタートアップでMaaSを絡めたビジネスに挑戦する方、まちを盛り上げる方法を模索している行政の方など)で、「MaaS×未来の暮らし」について、どんなニーズがありそうか、意見を交わすワークショップが行われました。

それぞれのグループに、ディスカッションで出た意見を聞いてみると以下のように。

▼MaaS×介護
身体は思うように動かないが、脳は元気な高齢者に対して、行きたい場所や欲求に応えてあげられるようなサービス

▼MaaS×過疎地域
・よりスムーズで快適な移動手段で、外部の人が過疎地域へ気軽に足を運べるようにする。
・過疎地域の方々が医療や物品などを求めて気軽に街へ出られるようにする
・MaaSを絡めたスマートシティを実現し、移住者を増やす

▼MaaS×都市
・通勤途中、ただ電車に乗っているだけの時間がもったいないので、Webで夕飯の買い物をし、ドローンで届けてくれる
・タクシーの相乗りで、より安く便利に移動したい

行政目線、大手企業目線、ベンチャー企業目線の様々な方たちが、「MaaS事業」という共通の目的を軸に盛り上がっていました。

モビリティと様々な既存の技術の組み合わせが重要となってくるMaaS。「新規事業にスピーディに挑戦するスタートアップ」「既存事業に強く、他産業との連携を検討している大手企業」が手を組むことで、付加価値の高い新たなサービスが生み出され、MaaS実現へ近づくことでしょう。

AND ON SHINAGAWAでは、今後もモビリティに関するイベントを開催していく予定です。

(現在はコロナウイルスの影響によりイベント開催を自粛しています)

再開いたしましたら、興味のある方はぜひともご参加ください!

▼AND ON SHINAGAWAイベント情報はFacebookページより
AND ON SHINAGAWA Facebookページ

AND ON SHINAGAWAとは

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イノベーションを暮らしにつなげ、未来の「当たり前」をつくるー共通の志を持ちながらも異なるアセットを持つ三社が、共同で運営を行うオープンイノベーション拠点です。

①京浜急行電鉄(株)
生活・サービス分野の各事業を地域密着型展開する企業グループ
②(株)サムライインキュベート
創業・シード期に特化したハンズオン型のベンチャーキャピタル
③(株)ヒトカラメディア
ベンチャー・スタートアップ企業などの成長企業を中心にオフィス移転・内装プロデュースの支援サービスを展開

「デジタル時代のモビリティ×ライフスタイル」をテーマに、スタートアップや大企業など多彩なプレーヤーによる新しいエコシステムの構築を進めています。

(ヒトカラメディア・田村みずほ)

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AND ON SHINAGAWA(アンドオン品川)は、京急電鉄が運営するオープンイノベーション拠点です。「イノベーションを暮らしにつなげ、未来の”当たり前”をつくる」というコンセプトのもと、新しいイノベーション・エコシステムの創出を目指しています。
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