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決戦!ビブリオバトル

 今月12日、デーリー東北新聞社本社において「第9回ビブリオバトルinハチノヘ」が開催された。ビブリオバトルとは、自分が読んだ本のプレゼンをし合って、一番読みたくなった本を投票で決める書評コミュニケーションゲームだ。
 我が「AND BOOKS」でもビブリオバトルによく似た「酔っ払いビブリオロイヤルランブル」(以下、YBR)という大会を開いている。内容はほぼビブリオバトルなのだが、決定的に違うルールがある。それは、発表者は飲酒状態でなければならないということだ。「酒と本」という当店のコンセプトを同時に生かせるイベントを考えた結果がYBRなのだ。
 調べると、本家のビブリオバトルは登録商標であり、それを名乗るには定められたルールにのっとって大会を開かなければならないらしい。公式ルールに「飲酒状態で開催してはならない」とは書いていないが、いつかクレームが来ることを恐れて、大会名をYBRとして全くの別物を装っている。
 今回ご縁があり、我が第2代YBRチャンピオンが本家ビブリオバトルに出場することになった。「出る前に負けること考えるバカいるかよ!」と在りし日のアントンも言っていたから、優勝をかっさらう気満々で送り込んだ。
 大会出場者は28人。予選グループを戦い、6人が決勝戦へ進むレギュレーションだ。決勝戦へは狭き門だがマイチャンピオンは堂々と戦い、見事予選を突破して見せた。
 決勝戦、マイチャンピオンは抽選の結果トップバッターとなった。まずいと思った。漫才のナンバーワンを決める「Mー1」を例に取っても分かるように、トップバッターは基準にされてしまい、優勝を目指すならば明らかなハンディだ。これがアウェーの洗礼か。
 かくして決勝戦が始まった。マイチャンピオンの勝負本は平野啓一郎の「空白を満たしなさい」。発表はさすがの落ち着きぶりで、持ちタイムの5分ピッタリに合わせた。これには思わず会場からどよめきが起こるほどだった。
 そして、結果的にチャンプ本に輝く3番目の男性の発表。勝負本は岩井俊二の「零の晩夏」。発表を聞いて、またまずいと思った。本の内容がマイチャンピオンと同じく絵画を絡めたミステリーで、プレゼンの肝になる部分が似通っていたのだ。男性の発表はよどみなく、声量十分で素晴らしいものだった。観戦者の評価が上書きされたと思った。
 この夜の当店の営業は、祝勝会からお疲れさん会に変更になった。優勝インタビューで、自分がYBRチャンピオンであることを明かし、対立構造をつくるという最大のミッションが不発に終わったことが唯一の心残りだ。今回のことは「ビブリオバトルクーデター未遂事件」として、当店の歴史の一部に刻まれることだろう。
 第3回YBRは来年2月に開催する予定だ。
 拝啓、第9代ビブリオバトルチャンピオン様。お酒は嗜みますか。2冠に興味はありませんか。YBRへのエントリーをお待ちしております。

デーリー東北新聞社提供
2022年11月30日紙面「ふみづくえ」掲載

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