ずっと、いつも、思っているよ。
前回は夜空のロマンチックな和歌を紹介しましたが、わたしとしたことが…作者を記し忘れていましたー!スミマセン。あの和歌の作者は、『万葉集』の代表的歌人のひとり、柿本人麻呂です。
というわけで、今回も人麻呂さんの和歌をさらりとご紹介。
夏野ゆく 牡鹿の角の 束の間も
妹が心を 忘れて思へや
(巻4・502)
夏の野を歩く牡鹿の短い角のような
ほんのわずかな時間であっても、
愛するあなたのことを
忘れることがありましょうか、
いや忘れたりはしません。
人麻呂が詠んだ“愛するあなた”は妻だけど、家族や友人、恋人…ここはきっと、誰にでもいる大切な人に置き換えられるんじゃないでしょうか?
というのもわたし、遠方にいる友人のことを考えていたら、この和歌がふと浮かびまして。
忘れたことなんてないよ、ずっと、いつも、思っているよ。そう言ってもらえたら、すごーーく心強いですよね◎
あっ、そうそう。牡鹿は毎年春に角が落ちて生え変わるので、夏の角は生えはじめで短く、その短さから、時間的な短さ=束の間を導いているんです。で、「束(つか)」は握りこぶし1つ分の幅を指す長さの単位で約8cm、そんな短い間をあらわす言葉が「束の間」なのだそうですよ。
鹿は和歌の世界では秋に登場するイメージが強いのですが(繁殖期で声高に鳴くので)、緑がまぶしい夏の野原を歩く鹿に注目して、その角の短さとわずかな時間を掛けるなんて、なんともまあ爽やかに詠み上げましたな人麻呂さんっ!て感じです。
離れていても、肩にそっと手を添えられそうなほど近くにいるような。そんな感覚でつながっていられる人、きっと、あなたにもいると思います。
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