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遅めの新年のご挨拶、遅めの荒剪定@みその果樹園

遅くなりましたが、『2022年もよろしくお願い致します!』です。

【アンケヴィーノ】は神社が近いこともあり、年末年始は休まず営業しておりました。年始は福袋の販売、角打ちも行い、シャンパーニュで乾杯したり、年始が暇でツマラナイヨーという方々にはご好評で、意外に忙しかったりするのです。そんなこんなで1月3日まで営業、遅めのお正月休みを経て11日から営業という、毎年、世間一般からはズレたスタートを切っております。

2022年はどんな年になるのやら。

【アンケヴィーノ】としては、ワインの販売スタイルをもう一度考え直そうと思っています。ワインの選び方、限定品のリリースの仕方、ワインと食品のご提案の仕方、どうしたらもっと食卓にワインが並ぶようになるのか、どうしたらもっと楽しめるのか、などなど。

特に今年は初っ端からワインの値上がりがスゴイです。これまでの価格と品質のバランスが崩れてしまいそうです。【アンケヴィーノ】のコンセプトは『あなたの食卓にもワインを!』です。毎日の食卓に価格はとても大事な要素。それでいて美味しくなきゃ、飲みたくならない。むむむ。

まずはこの辺からじっくり向き合って次の5年目へ歩んでいこうと思います。

冬の葡萄畑

さて、先日、久々に【みその果樹園】に行ってきました。

葡萄の樹たちは完全に落葉し、寒々しい、なんだかスッカラカンな感じです…

2022年一発目の作業は【荒剪定】です。

【荒剪定】は【本剪定】の前に作業がしやすいように、昨年の新梢をある程度の長さでカットする作業。

落葉し、葡萄の樹が休眠期に入ったら行う作業なので12月頃に行う人が多いみたいですが、樹液が流れる前ならいつ行っても大丈夫な作業なので、本剪定の時にまとめてやっちゃう人もいるそうです。

垣根の荒剪定

久々の畑作業、真冬なので寒さにビビってめちゃくちゃ厚着をしていったのですが、幸運にもこの日は暖かく、まさに剪定日和!二枚脱ぎました!

私としては人生2回目の剪定作業。むかーしむかし、勝沼でお手伝いをしたことがありましたが、すっかり忘れております。

本剪定で倒した時にちょうど良い長さのところでカットするのですが、念の為、少し長めに、切り落とす時は芽の真ん中の所を狙います。これは【犠牲芽】といって、その芽を犠牲にして、それより下の部分への枯れ込みを防ぐ方法だそうです。芽の部分は寒さに強いので、枯れ込みがそこでストップするのだそうです。

夏の剪定とは異なり、枝は硬くなっているし、芽のところは膨らんでいるのでカットする時に力が必要です。

『パキン』と乾いた音が心地よく、切った箇所は表皮のこげ色とは異なり鮮やかなうすみどり色の導管が剥き出しになります。そのコントラストがキレイだなぁと、切る度にこっそり思いながら作業を進めます。

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〈犠牲芽〉

しばらく進んでゆくと、めちゃくちゃ硬い枝が出てきたりします。苦戦していると、「力任せに切るのではなく、切る枝をしならせて刃を食い込ませて切ると力が少なくて済むよ」と教えてもらいました。そうやって、無駄な力を使わずにやっていかないと、すぐに手が痛くなって作業が進まなくなってゆくのです。実際、最初は調子良く進んでいたのですが、どんどんスピードが遅くなってしまいました。

剪定中はいろいろなことを教えてもらいました。

枝は平べったくなく丸い方が樹の状態がいいこと。当たり前だけど、品種によって葉だけではなく枝の色や質感が違うこと。葡萄の樹は生理現象で上に上がっている方に栄養が偏ってしまうため、長梢は主幹と垂直に真っ直ぐに仕立てる方が栄養が偏らないこと。

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〈 ▲ 手に持っている方がメルロー、白い方がシャルドネ 〉

教えてもらうたびに「はっ!」「えっ!」などと、大きなリアクションをとってしまいます。本当に知らないことばかり、言われた通りに芽の真ん中ばかり見つめて作業していると「この場合は〜…」なんて…。またもや「なんですと!」と、なってしまうわけです。樹単体ばっかり見てるんじゃないよ、全体を見なさい、という事です。

約500本の樹を2列ほど残して午前の作業は終了。

作業中は気づかなかったのですが、どうやら手が悲鳴を上げていたらしく、お昼ご飯を食べようと箸を持つと箸が持てない!唐揚げが掴めない!という現象が…。親指の付け根の下のあたりの力が全然入らないのです。ハサミの使い方が下手ってことですね〜。

棚の剪定

午後は残った垣根の列を剪定、その後はデラウエアがメインの棚区画を剪定しました。小さな区画なので、すぐ終わるんだろうなーなんて余裕かましていたら、とんでもない!

棚は結果母枝を魚の背骨と見立てたら、そこから両脇に新梢が伸びてゆくように、他の新梢からの葉と重ならないようにイメージして剪定してゆきます。長梢剪定です。

昨年はほぼ放っておいた棚区画でしたので、伸び放題でごちゃごちゃ。伸び切った蔓を引っ張って、「これどこから伸びてるのー?」「これ切りますよー、いいー?」「もー、わけわんない!」などと言いながら剪定。伸び切った蔓でも、適当に切っていいわけではなく、若干色が変化する境目を切ります。初めは見極めるのが難しかったのですが、だんだん目が慣れていきます。(夏の剪定時と同じ!副梢が見えた瞬間を思い出しました。)

そんなこんなで、気がつくと2,3時間程上を見上げた状態で作業していました。

終わって鏡を見たら顔中が枝のクズまみれ!全く気づかなかった…。

ごちゃごちゃだった棚区画はスッキリとなり、園長は「今年はちゃんとやろ…」と呟くのでした。

剪定は想像力

垣根に至ってはまだ荒剪定の段階ですが、剪定って想像力を働かせないとできない作業なんだなぁと実感!
1本1本違う育ち方の樹をどうしたらうまく育つかなと、新梢が伸び、葉が茂って実がなってゆく時を想像してゆく。もちろん、思った通りにはいかない方が多いと思いますが、剪定時のイメージはすごく大事な気がしました。

どんなワインにしたいのか、そのためにはどんな葡萄が必要か、その葡萄のためにはどうゆうふうに育てるか。
生産者の数だけワインがあり、ワインの数だけ育て方がある。育て方の大元となるのがその年の初めに行われる基盤とも言っていい【剪定】です。
生産者の方に畑のこと聞いても、『人それぞれ、どんなワインをつくりたいか』的な答えしか返ってこない理由はコレが理由だったのか…と、納得しました。

普段使わない部分の脳みそと右手親指の付け根がフル回転した一日。

お疲れ様でしたー。

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