読んだ本③ 「プロティアン 70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本術」

読んだ本の簡単なまとめ

法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔さんの本。プロティアンキャリアとは変幻自在のキャリアのことで、一つの仕事を一つの企業に依存して続けるのではなく、キャリアを自分の人生ととらえてそれを切り開くということ。その必要性、方法、経済的に成り立つか、などが書かれている。読んだ本②のライフピボットに似ているがもう少し理論に寄っていることと、著者本人の「キャリアの憂鬱」が書くキッカケの一つということで、より企業の中堅向けな気がする(自分もその一人)。

学んだこと(詳しい内容は3つまで)

1.アイデンティティとアダプタビリティ
キャリアを考える上ではアイデンティティとアダプタビリティが必要であるが、企業に勤める人は会社へのアダプタビリティが強くなりすぎてしまっていて自分のアイデンティティをわかっていない場合がある。会社に依存しない自分自身、つまりアイデンティティを見つける必要がある。なぜならキャリアは自分の人生自体であり、ただの仕事の状態ではない。「自分とは何者であるか」を明確につかんだうえで「どういった人生を歩みたいか」を考えることがキャリアを考えることになる。

2.フロー体験とビジネスプロダクティビティ
ビジネスプロダクティビティは様々な問題から目を背けずに解決する力。著者がプロティアンキャリアが形成できる人かの基準の一つが仕事に没頭できている、つまりフロー状態になっているかどうかとしている。フロー状態になるためには自分に負荷をかける必要があり、その結果として自己の成長がある。仕事でフロー状態に入れれば自ずとビジネスプロダクティビティは向上していく。
100%賛成だが少しだけ注意しなければいけないところもあると思った。それは会社主導でフロー状態に入り続けると自分を客観視できなくなること。この本もほかのキャリアの本もそうだが、自分の客観視は重要と言っている。それに対し会社のしかけるフロー状態(例えば目標設定理論など)は会社の依存性を高めて客観視をできなくすると思う。そのためただフロー状態に入るのではなく、自らの意思でフロー状態に入っていることも重要だと思った。

3.「ラットレースに勝ったとしてもネズミのままだ」
個人的には一番刺さった。少し曲解しているかもしれないが企業が用意する企業内の競争に勝ってもその企業の会社員から抜け出せるわけではない、という意味と捉えた(もう少し大きな意味な気もする)。会社での競争で勝つと手に入るのは出世と昇給だが、それ自体が自分の人生を豊かにしていると言えるのか。もちろんお金は必要だから稼ぐ必要はあるが、人生の大半を注ぐ仕事(これからさらに長くなる)がつまらないものだったときにその人生は幸せだと言えるのか。この辺りを最近は漠然と、ただ常に考え続けていたがもう少しこの言葉を早く聞いていたら、もっと早くこのことに気づけたかもしれない。

キーワード一覧
歴史上、人類が最も長く働く時代・ミドルの憂鬱・キャリアプラトー・キャリアは過程・従来型キャリアの終焉・キャリア理論・主体的キャリアの3つのアクション・プロティアンキャリアの3つのポイント・アイデンティティとアダプタビリティ・昇格や昇進より心理的成功・計画された偶発性理論・キャリアの中で組織を捉える・キャリア資本の蓄積・無形資産・生産性資産・活力資産・変身資産・ビジネス資本・社会関係資本・経済資本・ビジネスリテラシー・ビジネスプロダクティビティ・ビジネスアダプタビリティ・ビジネス書の多読・フロー体験・ウィリアム・スローン・コフィン牧師「ラットレースに勝ったとしてもネズミのまま」・他社が欲しがるような仕事の強み・お金よりも人生を豊かにするもの・結束型社会資本・橋渡し型社会資本・弱いつながり・変わり続けることが人生を豊かに・年収900万が幸福感の上限・プロティアンキャリアの6つのタイプ・キャリアの迷走を防ぐ・

”個人的な”感想と考え

学びの量   ★★★☆☆ 3
面白さ    ★★★★★ 5
わかりやすさ ★★★★★ 5

いつもここはあくまでも個人的な指標で書いている。上記評価の理由は自分が最近考えていたキャリア論の結論に近い考え方をしていたため。この本を初めて読んだら学びは確実に★5だった。逆にわかりやすさは★4だったと思う。面白さが★5なのは自分の考えの裏付けを次々にしてくれたためで、普通であれば★3~4だと思う。ただし30代~40代でキャリアの憂鬱に悩んでいる人にはぜひとも薦めたい(オール★5になるかもしれない)。

キャリア資本の蓄積と無形資産の考え方はまさに最近考えていたもので、ちょうどこの本を読む1週間前に似たような図を描き上げていた(会社のPCで描いたため出すことはできないが)。無形資産は「会計の地図」という本ではブランドを例に書かれていた。会計の考え方(最近はIFRSで違うかもしれないが)では有形資産でモノを作ってそれを売ることによってお金を得る、というものだが例えば大手企業が作るものと中小が作るものとでは同じものでも値段が違う。これは大手というブランドが与える信頼感や安心感などが値段を引き上げているためであり、別に中身が違うからだけではない。つまり大手企業などが持っているブランドは追加の付加価値を生む無形資産である。

この考え方は個人にも言える。転職でつく値段は個人の無形資産の価値だ。

では個人の無形資産とは何か。それはこれまでの経験によって自分の中に蓄積したスキルや考え方、人との関係などだと思う。ただ、自分も自分よりももっと年上でもっと経験を積んでいる人で自分は転職できない、と悩んでいる人を見たことがある(というより最近よくみる)。つまり経験による蓄積にも市場価値があるのだと思う。この市場価値を会社が作ってくれると思っている人はおそらくいつまでも不安を感じながら生きることになる。全資産をどこかの会社の株に投資するのと一緒でそれはほぼギャンブルに近い。

大企業でも潰れる時代に会社に依存する考え方はおそらく間違っている。そのときに自分の蓄積を資産だと捉え、どういった蓄積で資産形成をしていくべきかと考えている人が生き残っていける時代になったのだと思う。

ただ、そうは言ってもなぜ変われないのか。すべてのものには慣性があると思う。特に人の慣性は強く、変わらない方が安心というのは人にもともと備わった特性の一つだとどこかで読んだ。その集合体である組織も慣性を持っている。組織の変化の恐れは個人の抵抗になって発現するのをよく見る。なにかルールを変えようとすると「それは絶対にうまくいかない、このルールを考えたやつは馬鹿だ」というあれだ。まぁその個人がどうかは置いておいて、その人たちを変えるのが楽か、それとも自分自身を変えるのが楽かを考えたら絶対に自分を変える方が楽だと誰もが思うはず。

だからこそ、会社に依存して会社の文句を言っているのではなく、自分の生きる道は自分で見つけるべきだと思う。もちろんその会社の理念に共感したり、その人たちが好きでその会社にいる人たちもいると思う。ただそれだけで生きていけるほど人生甘くない。自分の生きられる道を見つけつつ、余った力で会社のことを考える方がいいと思う。それほどに今の会社という枠組みは不安定だと感じている。(この会社の指向性と自分の志向性が近い状態をエンゲージメントが高いといういうのだと思っているがまた今度書こう)

ちょうど自分もキャリアの憂鬱に昨年くらいまでかかっていた。自分の将来の最大到達点が見えてしまったような気がして少し憂鬱になっていた。ただ、最近は考えが変わって30年後の最大値は今からは全く測れないし、自分で作っていくものだと今は思っている。恥ずかしいことにこの最大値を測る軸すら定まっていないが。。。同じような考えに陥っている人にはぜひこの本やライフピボットをお薦めしたい。

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