ミライノオトモニターNo.13「それは仕事という名の遊び」



「今度はここに描くんだね」

真っ白い壁をパンパンと叩いて、夫がニヤッと笑って振り返る。

「そうだね、初めてだよ、壁に描くのなんて」

私も同じようにニヤッと笑うと、足元にいるワンコが、くるくると二人の間を行ったりきたりする。

つい3日前に我が家に来たワンコには、まだ名前がない。
二人でいま、あれやこれやと案を出し合っているところ。
ひょんなご縁が繋がって、ここに来てくれたこの子だけど、なんというか以前から一緒にいたみたいな気持ちになっている。

3人でいることが、こんなにも自然だなんて・・・縁というものは、不思議だなと振り返る。

この白い壁がある場所は、夫の2件目の職場になる場所だ。

独立して始めたお店が、思いの外トントンと進んでいった時には本当にびっくりした。
意を決して始めたことで、いろんな気がかりなことがあったけれど、今までご縁があった人たちや、職場でのつながりが思わぬ縁を新しく繋げてくれて。

はじめの場所は、とても綺麗な状態の居抜き店舗で、しかもご好意により格安でお借りすることができた。
初期費用が抑えられたことで、こだわりたいところにお金をかけることができ、「そこがいいよね」と言ってくれるお客様が、口コミで広まっていったのだ。

SNSでバズる、とかそういうものではないけれど、ニッチな人たちは密かに繋がっていたりコミュニティを持っていたりする。

そんなところで「推し」てくれる人が何人かいた、ただそれだけだったけど、なぜか全国からうちのお店に人が押しかけることになったのだ。いつの間にか。
そして気がつくと予約の取れない、数ヶ月待ちのお店になっていた。

「この行列っていうのも、まあいいんだと思うんやけどさ。
できたらみなさんに楽しんで味わってもらいたいなあ」

そんな風に言う夫に、常連さんが
「じゃあ、お店もうちょっと広くしてよ。
協力するからさ」
と提案してくれたことがきっかけで、常連さんがどんどん話を進めてくれ、あれよあれよと言う間に、新店舗のクラウドファンディングがスタートし、あっという間に目標金額が達成された。

そして、この一面の白い壁の店舗に、引っ越すことになったのだ。

前のお店には、私のアートを壁にかけていたんだけれど、今回は壁に直接描くとにした。

これだけ大きいスペースだと、描きがいがある。
企画段階から、描いている最中なども全て動画として配信しようと話していた。
「一緒に作り上げること」も、このお店に来てくれている人、これから来てくれる人にも楽しんでもらいたくて。

今度は壁に描くんだよ、と言うことを、いろんな人に話していたら、どこかからそれを聞きつけた方からご連絡があって、お店に来てくれることになった。

「前の店舗からのストーリー、あなたのアート、そしてご夫婦の歩みも含めて、密着取材させてもらえないか?」

というお話だった。

自分たちだけで動画配信しようと思っていたけれど、思わぬオファーが来たことで、さらに広がるかもしれないね・・・なんてふわっと夫と話していたけれど。

これが思わぬ反響を呼んでしまい、メインは夫のお店のことだったのが、私のアートの注文、予約もどんどん来るようになってしまった。

この新店舗の壁に描いたアートは、今までの私の作品とは少し違っていて、新しい表現にチャレンジしている。
それが、今までに見たことのない組み合わせだと言われて、遠く海外のメディアにも取り上げられたのだ。

パフォーマンスも込みでアートの価値が上がり、時々国内外のイベントで、大きなスペースに描くことも増えてきた。

夫のお店も、よきスタッフさんに恵まれて、相変わらずの盛況ぶりである。

お互いにこれは「仕事」のようで、そうではないという感覚がある。
お金を得るための仕事ではなく、自分の命の光を燃やす、そんなもの。
それは仕事という名の遊びなのかもしれない。

新しい画材の箱を開けると、いつも、ツン、と私を刺激する香りがする。
その香りを嗅いだ途端に、脳裏に、目の裏に、たくさんのモチーフの断片が浮かび上がり、それらに触れに行こうとすると、押し寄せる音と立ち込める香りの海の中へ投げ出される。
そしてその先で掴み取るものは、その時にしか感じられない手触りをもって、私に知らせてくれるのだ。

「生まれ出ずるものは、何?」

その問いかけに応えるのが、私の遊びであり、愛である。

ワン、と言う声で今ここに戻ってきた私は、愛犬の頭をひと撫でしてから、新しいキャンバスへ筆を下ろした。
まだ見ぬ人の未来がここにあるのを、浮き上がらせるために。

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「ミライノオト・モニターシリーズ」
MIERUKAアーティストAKARIが綴る、
お申込みくださった方の「勝手な未来の妄想ストーリー」
今回は、浮かんでいる未来のストーリー(旦那さんが、やりたい仕事(飲食業)の社長となる。楽しそうに働いている。私は、念願の絵でお仕事させて収入を得ている。そして、ワンコの飼える平屋の一軒家に住んで幸せである。)についてのご依頼でした。

モニター募集時の記事はこちら
https://resast.jp/events/YjkwYzc3NWQ4M
<追記>
本募集が始まりました!
小さな本のタイプと、動画タイプをお送りしています。


現在こちらで受け付けています。
https://resast.jp/inquiry/ZjI3OTgyNzQwM
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以下は、お申込みくださった方のご感想です。

・今回お申込みいただいたきっかけ、何にピンと来たかなどお知らせください。

AKARI★さんの文章力


・届いた妄想ストーリーのご感想をお願いいたします

初めの方は、私の物語って感じがしたんだけど、途中から、AKARI★さんの話になってるみたいだったなぁ。というのが正直な感想です。

でも、こんな風になったら嬉しいなぁとは思いました。
ありがとう。

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モニターのご参加ありがとうございました。
未来への一つのヒントとなりましたら幸いです!

この度は本当にありがとうございました^^

さらにミライへ、そのオトを聴きならがら。

MIERUKAアーティストAKARI

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