マガジンのカバー画像

Soulblightストーリー&アート「ミライノオト」

20
Akariがお届けする、その人の別のパラレルの未来のものがたり。 現状からちょこっと足をはみ出して、ミライのオトに耳を澄ませるご体験を。 お申し込みはこちらから。 https:/…
運営しているクリエイター

#モニター

ミライノオトモニターNo.2「・・・の森」

寝転がって空を見上げると、大きな雲が小さな雲とくっつきそうになっていた。 こんな風にのんびりと空を眺められるのも、この森があるおかげだと、後ろを振り返る。 今私はお昼休みをもらっているけど、森の中は今日も盛況だ。 BBQを楽しむ人たち、森の中を散策する人たち、走り回るだけで笑いが絶えない子どもたち、私と同じようにのんびりと空を見上げている老夫婦、この時期咲き乱れる花の写真を撮りに来る人たち・・・ 遊び方や楽しみ方はそれぞれで、その「場」を私たちは提供している。 そして

ミライノオトモニターNo.3「ただ、そこにいるだけで」

車窓から見える海を眺めて、もう何度ここに来ただろうと振り返ってみた。 しかしもう数えることができないくらい、回数を重ねていたことに、思わずびっくりする。 この海の近い場所へ呼ばれることもあれば 森の中へ誘われることもあり 山の上にいざなわれることもあれば 洞窟のようなところへ行くこともある。 そこで感じることは、場に満ちているものたちだ。 じめっとした空気のまとわりつきや、磯の香り 近くから遠くから聞こえる鳥の声、葉と葉が重なり合う時に現れる光 虫が小さく歩く音のリズ

ミライノオトモニターN0.5「招かれたその先」

見上げると、青い空。 雲ひとつないところへ、すうっと飛行機雲が通っていく。 よく見ると、微妙なグラデーションである青の中を、これまた微妙なグラデーションの白い線が走っていく。 だんだんと飛行機雲が消えていく様子を見ていると、冷たいような、暖かいような感じが体の中を走り抜ける。 それと同時に、小さな音が聞こえたような気がした。 鈴のような、可愛い音。 「こっちを見て!一緒に遊ぼうよ」 そんな風に聞こえてきそうな、茶目っ気のあるような音。 聞こえてくるままに身をまかせる

ミライノオトモニターN0.7「ない、が、ある、に変わる時」

日が落ちていくこの時間の、空の色がとても美しく感じる。 あっという間に太陽は下の方に落ちていき、夜の暗さの割合が増えていく。その、刻々と変わっていく空の色につい見とれてしまう。 もう2度と見られないものをこの瞬間感じているし、どこからか夜のとばりが降りる音が聞こえてきそうな気もして。 少しさみしい感覚があるのと同時に、この人が今隣にいてくれてよかった、と思えることに、体が思わずふるふると震えてしまいそうな感覚が起こる。 「どうしたの、寒い?」 そう言いながら、彼は繋いで

ミライノオトモニターN0.8「ただそれは起こるだけ」

カタカタと、遠くの空から聞こえる音に耳をすませると、 その音に感じる匂いが不意にやってくる。 今日は、甘い感じ。 花の蜜のような甘さが、ふわっと鼻の奥に広がると、私はふう、と一息ついた。 このサンルームのような場所は、私のアトリエだ。 たくさんの画材と、作品が所狭しと並んでいる・・・・ と言いたいところだけど、作品は手元にほとんどない。 なぜなら、描いた途端に、自分の手を離れていってしまうから。 きっと、昔なら「パトロン」という呼び名であろう人が 今の私には何人かいる。

ミライノオトモニターNo.9「何もしないわたしで。」

振り返ると、いろんな顔が思い出される。 私がここまでくる過程で、関わってくれた人、そして、この仕事を始めてから、関わってくれた人。 相当な数だったのだ、と改めて思う。 そして、これから出会う人たちは、さらに更新されていくのだろう。 そんなことをぼんやりと思いながら、歩いていると、目の前にうずくまっているご婦人が目に飛び込んできた。 「どうなさいました?大丈夫ですか?」 私の問いかけに、彼女は苦しそうな息の下からひねり出した、か細い小鳥のような声で 「大丈夫です・・・いつも

ミライノオトモニターNo.10「さ、次はどこを走ってく?」

ヘルメットを脱ぐと、たらりと汗が背中まで伝う感触がする。 汗ばむ季節だけれども、風を切る爽快感はやはり格別。 これを知ったらやめられない、と毎日でも思ってしまう。 到着したカフェでは、すでにこの地で集っている仲間たちが楽しそうに話をしていた。 「おお、待ってましたよ!はるばるありがとうございます」 「すみませーん、遅くなっちゃった。 ここにくる途中の、教えてもらった岬からの景色が本当に素晴らしくて。つい見とれてしまってたら、こんな時間に…」 「あ〜、それなら仕方ない、