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オタク隠蔽のために映画を見始めたのに嗜好を隠しきれなかった女

オタクを長年やっていると
「趣味って何?」「休みの日って何してんの?」
と聞かれると
「1日家に籠って漫画読んでるかアニメ見てるか、推し配信者の配信や動画みてるか、漫画やグッズを買いに1人でアニメショップに行ってます。」
という回答しか出来なくなる。

しかし社会において上記の質問は言わば、組み分け帽的役割を果たしており
ありのままを回答してしまうと速攻でカースト最下層へ転落するのである。
さらに言えば、素敵な殿方からも同様に「こいつ陰キャ根暗オタクやん」と恋愛対象から外されてしまう確率も急上昇してしまう。

そのため、それらの質問に対しては
「わたくし、一般的な成人女性ですわ!」と思わせられ、かつ全くの虚偽でない回答をしなければならない。
そう考えた十数年前の自分は、「趣味は映画鑑賞です」という社会において無難かつ知的さを演出できるフロント趣味として、映画鑑賞を開始したのであった。

とりあえず名前の知れた映画を見る

誰もが名前を聞いた事のある映画を見始めてみたものの、長年オタクとして生き、オタクの感性で育ったためか、名作と言われる映画のまあ刺さらないこと。
ハリーポッターとかスターウォーズは軒並み導入から刺さらなかった。
(面白くないということではなく、私に"刺さらなかった")

そこで映画鑑賞が趣味という友人に「オススメの映画ってある?」と何の気なしに聞いてみた。
すると友人は「どういう映画が好み?」という。
「感動系?SF系?ギャグ系?」「あんまり長くない方がいい?」「邦画の方が好き?」など
怒涛のアキネーターみたいな質問ののち数本の映画をオススメしてくれた。
そうか、と。「趣味は映画鑑賞です」の本当の意味は、こうして幾千と見た映画の中から適切なサジェストが出来るくらいのレベルなのか、と。
「この趣味を自称するの無理かもしれない」と半ば諦観しながら、オススメされた映画を見ることにした。

気に入ったジャンルを見つける

オススメされた映画を起点に、そこから自分の好きな話の展開や、雰囲気の映画を自ら数本選んで観た頃には
「結構色々見たし、これはいける」と思った。
職場では、爽やかな明るい一般女性として(必死で)立ち振る舞っている私。
たまたま休みの日にしてますか?という話にを振られ、満を持して「映画よくみますね!」と返答した。「好きな映画ありますか?」と言われ、続けて意気揚々と答えようと、脳内で好きな映画のタイトルが巡る。

▶羊たちの沈黙
女性の皮を剥ぐ連続殺人犯を逮捕するため、激ヤバ殺人鬼のハンニバル先生に助言を求めに行ってウンニャラする話

▶セブン
定年間際のベテランと新人デカのバディが7つの大罪に基づく猟奇連続殺人事件を追いかけてやばばばな話

▶ミスト
突然主人公たちの住む町を濃い霧が包み、スーパーマーケットに避難したら霧の中になんかいる!とパニックになってあーーーーー!な話

▶︎グリーンマイル
死刑囚が収監される刑務所に、黒人のデカい男がやってくる。その男は不思議な力を持っていて、でもなんで!そんなことに!なるんや!という話

……1個もオススメできん。誰もそんなオススメを欲していないのだ。というかこんな陰気なラインナップを紹介したら、せっかく築いた私の爽やか一般女性のイメージが崩れてしまう。
色んな思いを巡らせながら「プラダを着た悪魔ですかね」などと返答し、(プラダを着た悪魔はめちゃくちゃいい映画です。)やはり「趣味:映画鑑賞」のハードルは高いなと痛感したのだった。

でもなんか結局見ちゃう

そもそも長年のアニメや漫画を鑑賞する習慣が、見に染み付いているので、「映像作品を見る」という事に苦がなかったこと、サブスク登録で多くの作品を気軽に見れるようになったこと、勢い余ってちょっといいプロジェクターとソファを購入したことにより、(やや嗜好に偏りがあるものの)趣味と呼んでもよい頻度で映画をみるようになっていた。

その結果、自分の好きな映画のジャンルは「胸糞の悪い映画」と「めちゃくちゃアホな映画」であることが判明した。そしてめちゃくちゃアホな映画に関しては、割と一般受けするので、他人にオススメしても結構大丈夫!とわかった。

▶︎ハングオーバー
結婚前日、友人たちでバチェラーパーティーを開催し、羽目を外しすぎた結果、泥酔し目覚めると新郎はおらず、部屋には赤ん坊とトラが……なんも覚えてない。何が起こったん?!という話

▶︎ハッピーデスデイ
誕生日の朝、ワンナイト男の部屋で目が覚め、変わらぬ一日をスタートしたが、突然殺人鬼に殺され、目が覚めるとワンナイト男の部屋で……?という話

このあたりは割といける。あとは一応ホラー映画の分類らしいがゾンビーバーも勧めることがあるが、とにかくくだらなすぎるので人を選ぶ。

ようやく見つけたオススメ

それなりに映画を見たおかげで、「自分も好きだし、オススメしても高確率で好きになってもらえそうな映画」をようやく発見することが出来た。
なので最近は好きな映画やオススメの映画を聞かれたら、とりあえずこの2作品をフロントオススメ映画として言うようにしている。

▶︎ベンジャミン・バトン 数奇な人生
生まれた瞬間おじいちゃんだったベンジャミンは、歳を重ねるごとに若返っていく。そんな彼の一生を描いた話。結構長いが、映画全体の雰囲気がすき。ブラピが美しすぎる。

▶︎最高の人生の見つけ方
病院で出会った余命宣告された全く違う人生を歩んできたじいさん2人が、やりたいことリストを一緒に消化していく話。こういう人生の終わりにあこがれるんだよなあ。


でもやっぱり好きなのは

結局好きなのは、見終わったあとに3日寝込むくらいの映画が好き。モヤモヤした終わりが好きなんだよなあ。

▶︎ミッドサマー
家族を失った主人公が、彼氏とその友人一行の旅行に参加。その先の村で行われる夏至祭ではウワァァァ!という話。めちゃくちゃこわい色んな意味で。

▶︎パラサイト 半地下の家族
半地下で貧乏暮らししている家族の長男が、富豪の家の家庭教師をすることになり、そこから富豪の一家を乗っ取ることを計画してウワー!という話。
めちゃくちゃ有名な映画と思ったら、その割に見た人が少ない印象。

▶︎万引き家族
生活が困窮しており盗みをして暮らす一家。団地で凍えてる少女を連れ帰って……なんかもう善悪ってなんだろうって話。
普段あんまり邦画は見ないけど良かった。

▶︎子宮に沈める
マジでトラウマ

今では趣味の話題も華麗に映画の話で躱す一般女性に成長したが、結局邦画もほとんど見ないし、洋画は一切見ない夫と結婚した
上司は私と同じジャンルの映画が好きだったので、あまり意味がなかったかもしれない。


#映画にまつわる思い出

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