ダグラスのシステム欠陥是正のための3つの政策提言

「ダグラスは単に構造分析をしただけでなく、エンジニアらしく、どうしたら企業会計と銀行金融のシステムの構造的欠陥を是正できるかということで、具体的な政策提言を行っています。その提言は3つあります。まず、第一に銀行の私的信用創造が経済の歪みや不均衡の根本原因なので、政府が公益事業として通貨を発行して、利子なしで社会や企業に供給すべきであるとしています。一国の生産と消費を均衡させるに必要な通貨の量というのは算定可能なので、それに即して通貨を発行して回収するということを提案しています」


「もう一つダグラスの提言で、政府通貨とワンセットになっているのが国民配当という政策です。ベーシックインカム、基礎所得を全国民に生涯にわたり支給するというものです。これはA+Bの矛盾を解消するためです。雇用によって所得を分配するだけでは、先ほど話したA+Bの矛盾があるので勤労者は企業が生産した商品の1部しか買い取れない。所得の分配は雇用だけではダメで、雇用を補完する基礎所得が必要、それがないと円滑な経済循環が実現しないということです。重要なのは、彼はあくまで通貨改革の一環として所得補償を論じていることです」


「ダグラスの政策と政策提言にもう一つ、保証された価格割引と言うものがあります。例えば、生産と需要に20%のギャップがあったとすると、期間を区切って全国一律に販売部分で商品を20%値下げして、後から政府通貨で割引分を補完するというものです。これは恐慌のデフレ・スパイラルを心理的に予防する政策です」

1930年代、世界大恐慌後、このダグラスの公共貨幣、ベーシックインカム、価格割引の三位一体の政策提言は、世界中で真剣に論議され、各国で政党も生まれたようです。この3つのセットになった政策を、いまこそ改めて日本、世界で論議し、実証実験を進めていく時だと思ってます。

関曠野『なぜヨーロッパで資本主義が生まれたのか』

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