開幕戦で家長昭博と鬼木達が示した意地。
いつもの通り品川駅で乗り換える、そんなある日の発車メロディが不意に耳に入り彼の存在を思い出す。
♪家長昭博ラララララー誰にもアキを止められない
「今シーズンどうなるかなぁ」
ふと足が止まり、ぶつかったサラリーマンに睨まれる。
ごめんなさい、でも今はそれどころではない。
開幕戦を観て今シーズンの彼がどうなるのか無性に気になってきたのである。
「よし」
そんなこんなでこの記事を書こうと思った訳である。
さてホーム開幕戦は、これで8年連続の引き分け。
ルヴァン杯清水戦と打って変わってモヤっとした気持ちを抱えた方も多いのではないか。
そんな試合展開に持ち込んだのが、対戦相手のスタンスの違いだけではない。
家長昭博の存在である。
変わったスタンダード
川崎フロンターレが今シーズン取り組む433システムは、超アグレッシブ。
具体的に改善を施すところは、攻撃スピードとエリア内の人数不足。
端的に言えば攻撃は速く、エリア内は分厚くである。
ウイングに求められるタスクは、縦への一対一の仕掛けと逆サイドからの折り返しをエリア内で決めることである。
そう、家長昭博と真逆なのだ。
みんなが知る家長昭博は、圧倒的なフィジカルとプレーのテンポを落とすことでボールの収めどころになる。
そして、時には逆サイドの崩しにも加わる。そのプレースタイルでついには2018シーズンは全会一致のMVPに選出された。
彼がチームに馴染んでからは、まさに家長昭博のチームとして戦ってきた。
なぜか枠に入らないシュートも含めて僕は彼のプレーが大好きだ。
ごめん、嘘をついた。出来れば7点くらい取って欲しい。
そんな彼のプレーこそがチームのスタンダードだったのである。それが今年変わっているのだ。
開幕戦で魅せた家長のプレー
そんな新チームにおいて、彼が魅せたプレーはまさに自身のスタイル。
序盤こそダミアンのジャンピングボレーを演出する縦への仕掛けなど新たな戦術に即したプレーを見せていた。
しかし、試合を総じてプレーのスローダウンや逆サイドの崩しに参加するなど彼のサッカーをしていた。
そこには、「自分のプレーで勝たせる」という意気込みを感じた。ある種ベテランの意地だろうが、加入してからの毎シーズンでタイトルの獲得に貢献しているのだから当然である。
そんな開幕戦、彼に負けないほどの意気込みを感じさせる男がいた。
指揮官の鬼木達である。
指揮官の決断
就任時にノンタイトルのシルバーコレクターのチームを3年連続のタイトルへと導いた名将である。
しかし、ルヴァン杯の制覇をしたものの消化不良に終わった昨シーズンを踏まえ鬼木政権初の新戦術導入となる今シーズンの交代策は目を見張るものだった。
家長昭博を下げたのである。
それも大卒ルーキーとの交代。
昨シーズンは必ずといって良いほどフル出場し続けていたベテランをそれもあっさりと大卒ルーキーと交代させたのである。
要求されたタスクをこなさないのであれば、誰であろうと交代させるというメッセージとしては十分すぎるものであり威厳も示すような交代と感じた。
もちろん、交代で入った大卒ルーキーの旗手の実力は高いことは知っている。
ただ、MVP級の活躍でタイトルに導いてきた選手に対する采配だと考えるとすごく勇気の伴うことだと思う。
折れるか貫くか
今後の注目はやはりどちらが折れるか、それともお互いに貫き合うか。
前者であれば、家長のシステムへの調和、大幅な出場機会の減。あるいは433システムの断念を意味することになる。
後者であれば、チームとして新たなオプションが一つ増えることに繋がる。
何れにせよどういった形で終着点までたどり着くのか目が離せない。
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