見出し画像

GA4の機械学習とユニバーサルアナリティクスの機械学習の違い

※この投稿はあくまで個人の主観です。

ユニバーサルアナリティクスでも使えた機械学習機能

GA4とユニバーサルアナリティクス(以下UA)の大きな違いの一つは、機械学習機能のようです。

ただUAにも機械学習を利用した機能がいくつか搭載されていました。

「スマートゴール」「セッションの品質」などがその代表例でしょう。

スマートゴールのおさらい

スマートゴールは特に使い方がわかりにくかった機能の一つではないでしょうか。
ヘルプページの説明によると、下記のようにかなりブラックボックス化されている印象です。

ウェブサイトのセッションに関する多数のシグナルを機械学習で分析して、コンバージョンにつながる可能性が高いセッションを識別します。各セッションにはスコアが割り当てられ、最も品質の良いセッションがスマートゴールに変換されます。スマートゴール モデルで分析されるシグナルの例としては、セッション継続時間、セッションあたりの閲覧ページ数、地域、デバイス、ブラウザがあります(リマーケティング スマートリストでは、類似の機械学習で最適なユーザーが特定されます)。

スマートゴールの仕様要件からみても、何をどう学習しているのかがわかりくいと思います。

要件1:Google広告とGoogleアナリティクスがリンク設定されていること
要件2:Google広告からのセッションが、過去30日間で500を超えること

スマートゴールレポートなどを見る限り、スマートゴール達成セッションのほうがコンバージョン率が高い傾向は見て取れるアカウントが多いと思います。
ただ、それを見て「ではこのセグメントを中心にリマーケティングしようか」となった人はそこまで多くないのではないか、と思います(考察は後述)。

セッションの品質のおさらい

セッションの品質は(前提情報がブラックボックス化されているのは同じですが)スマートゴールよりはいくらかわかりやすいと思います。

セッションの品質について
アナリティクスでは、スマートリストやスマートゴールと同様の機械学習を使用して、ユーザーがコンバージョンにどの程度近づいているかを示す「セッションの品質」ディメンションと「セッションの平均品質」指標を測定します。ユーザー エンゲージメントはセッションごとに評価され、期間中に発生した各セッションのコンバージョンまでの近さがどのくらいかが 1~100 のスコアで表示されます。「1」はトランザクションから最も遠く、「100」はトランザクションに最も近いことを表します。値「0」は、選択した期間で指標が測定されなかったことを示します。

あるセッションがコンバージョンする確率が高いと100に近い数値が提示されるので、その数値に合わせた施策を考えればよいわけですね。

スマートゴールが「良いか悪いか」の2つのセッションに分類するのに対し、セッションの品質は「良さそう〜悪そう」のグラデーションでセッションを分類してくれる、というのが大きな違い、と言えるでしょう。

つまり、セッションの品質はブラックボックス度が相対的に低く、マーケターが施策の説明も比較的しやすそうですが、スマートゴールはマーケターが説明できない+コントロールが効かないの二重苦で使いづらかったのではないでしょうか。

UAで機械学習機能が流行らなかった理由は?

セッションの品質はそれなりに使えそうな印象なのですが、「使っている」という話は聞いたことがありません。これも主観的な話ですが、セッションの品質に限らず、UAで機械学習機能を使いこなしている、という人には残念ながらこれまで出会った記憶がありません。

私の職業柄、1年で50人くらいのGAにそれなりに詳しい人と話しているはずなのですが、それでもセッションの品質レポートを使った話が全く出てこないということは「流行っていないのでは?」と感じます。機械学習を利用しているとしても、有償版契約+Google BigQueryを使ってやりました、という事例ばかり聞きます。

というわけで流行っていないと断定しているのですが、その理由は個人的に以下3つかなと思います。

理由1:機械学習の活用が全GAユーザーまで普及しなかった(時代背景)
理由2:ほとんどのGAユーザーが使いにくい状況だった(後から追加された ので気づきにくい、Google広告を使っていなければ使えない等)
理由3:機械学習利用の仕組み説明や成果の可視化が難しかった(ノウハウ不足、仕組みがブラックボックスすぎる)

GA4の機械学習はどこが違うのか?

基本的にGA4の機械学習機能はこの3つの理由への回答かな、と思います。

まず理由1の時代背景については、近年のAIブームで猫も杓子もAIという時代ですから、多くのGAユーザーが機械学習にも興味を持っている状況でしょう。そこに新プロダクトとしてGA4が投入できるわけですので、回答できていると言えるでしょう。

理由2の使いにくさについてはいくつか要因があると思いますが、UAよりはやや改善していると言えるかもしれません。
・改善ポイント:Google広告を使っていなくても、GA4のpurchaseイベントを実装すれば使えるという点では(広告費を使い続ける必要がないという点で)やや使いやすくなっていると言える
・未改善ポイント:予測オーディエンスなどの機能は条件を満たさないと表示されない、という点ではこれまでと変わらない

理由3については「ブラックボックス度の減少」が最も改善されたポイントだと思いますので、少し細かく書きます。

GA4の予測オーディエンスは説明しやすい

まず説明しやすさについてですが、UAのセッションの品質と、GA4の予測オーディエンスで比較してみると特徴が見えそうです。

セッションの品質レポートの特徴
・「コンバージョンの可能性」を100段階で段階評価可能
・セッションごとに評価している
・「コンバージョンが発生するタイミング」は言及されていない(おそらくセッション内でのコンバージョン)
・100段階評価のどこに施策を打って、どの程度のインパクトが出るか、までは試算できない

画像1

GA4の予測オーディエンス作成画面(例:7日間で離反する可能性)
・「離反の可能性」を100段階で段階評価可能
・ユーザーごとに評価している
・離反が発生するタイミングについても言及がある(次の7日間以内)
・100段階評価のどの範囲で、どの程度の平均離反確率が見込まれるかが提示されるため、インパクトを試算可能(キャプチャの場合、平均確率が90%)

画像2

つまり、UAとGA4の大きな違いは、「ここに対策打つといくら儲かります」のような試算が可能で、説明しやすくなっている点にあるかもしれません。

GA4の予測オーディエンスは検証可能

検証のしにくさにも改善が見られているようです。

UAの「オーディエンス」レポートに後から追加された機能に、「オーディエンス」というレポートがあります(オーディエンス > オーディエンス)。

これは、UAからGoogle広告に連携したオーディエンスリストを、再度UAに連携することでそのオーディエンスの成果を測る、という機能だったはずなのですが、色々とツッコミどころがありました。

ツッコミポイント1:概念が分かりづらい。セグメントとどう違うのか。
ツッコミポイント2:初期のバグが多かった。まともに使えるようになって研究が終わらないうちにApp+Webプロパティが出てきた印象。

これに対し、GA4の予測オーディエンスは、探索レポートで利用可能です。
例えば7日以内に離脱する確率が90%のセグメントについて、コホート分析で実際に7日以内に離脱したのか、検証することができます。

つまり予測オーディエンス作成時に試算を行い、その検証も同じ予測オーディエンスを使うことで可能になっているのが、UAとの大きな違いと言えるかもしれません。

GA4でも残るブラックボックス感

ではGA4の予測オーディエンスをすぐに使うことができるか、というと、まだ拭えない疑問が出てきます。

例えば予測オーディエンスの利用条件には、「モデルの品質が一定に保たれていること」がありますが、おそらくこの条件が時々満たされない事により、先週は使えたのに今週は使えない、といった予測オーディエンスが出てくることがあります。ここは条件が明確になっていないため、対策することが難しいと思われます。

機械学習の性質上、これが発生することは致し方ないのですが、ビジネスプロセスに組み込む上では、予測オーディエンスが利用できなくなった場合のバックアッププランを考えておく必要があるでしょう。

また広告のターゲティングに利用する観点では、すでに広告のスマート入札戦略を使っている運用者は知っての通り、機械学習が狂ったときのインパクトには辟易することもあるでしょう。

そのような観点から、GA4では真の意味で「機械学習を使いこなす」ことが求められ、ブラックボックス化されている部分を自分なりに解釈する必要があるでしょう。

GA4の機械学習を使いこなすのはどんな企業か

上記のような観点から、機械学習に慣れていることがGA4を使いこなす一つのコツと言えるかもしれません。

これまでUAを「過去ログ」の分析目的で使用してきたマーケターや企業は、この観点を加えることで活用の幅や新たな学習領域が出てくるはずです。

一方で広告の最適化をスマート入札戦略を使ってきた企業からすると、割と似たような思考パターンが適用できますから、ツールが増えたことで早く成果を出すことができるかもしれません。

あるいはこれまでUAを使いこなすことが難しかった、機械学習になれているスタートアップなどはチャンスかもしれません。つまりGA4の予測オーディエンスの性質について、アルゴリズムベースで理解を深め、活用方法を深堀りしていくことが可能かもしれません。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?