天皇杯について思うこと

天皇杯について大きな発表があったことは皆さんご存じでしょうか?

要約すると以前までの優勝賞金1000万円に加えてスポンサーのカプコンからプラスで1000万円支払われて合計の優勝賞金が2000万円になったということです。これは国内の三大大会の中で最も高額な賞金です。因みに他の三大大会の賞金はVリーグが750万、黒鷲旗が500万です。それを考慮すると国内大会ではかなり高額なことが分かるかと思います。

天皇杯とは各都道府県で行われる都道府県ラウンド、地域ごとに行われるブロックラウンド、ブロックラウンドを勝ち進んだチームとVリーグディビジョン1所属のチームで行われるファイナルラウンドの3ステージから構成される名実ともに日本一のチームを決める大会です。時期としては12月の後半が多く、準決勝や決勝がクリスマスと被ることも多いです。(宿泊するホテルでクリスマスを満喫する大勢のカップルと一緒になることが多く辛くなりますw)Vリーグチームにとってはリーグ戦の半分より少し手前のタイミングで入ってくる大会であり、大学生にとっては全日本インカレが終わった直後に始まる4年生が最後に出場する大会になります。

ここからは自分の経験を中心に記述します。大学一年生の際に初めて天皇杯に出場しました。もちろん一年生なのでサポートアナリストとしてでした。チームは直前の全日本インカレで3位という好成績を残し、天皇杯まで時間がなかったこともあり、チーム全体として燃え尽き症候群的な雰囲気があったのを覚えています。実際、四年生の一人が「相手チームには外国籍選手も所属しているし1セットでも取って思い出できるといいな」という話をしていたのを覚えています。こんなエピソードを話すと出るからには優勝目指せよ!と言われてしますかもしれません。自分が部外者として聞いてもそう言うと思います。しかし実際に経験した立場から思うことは学生の天皇杯に対するモチベーションの維持は難しい部分が大きいです。相手は日本の第一線で活躍する選手に加えて世界の強豪国のエーススパイカーを要するチームばかり。しかもトーナメント戦なので相手が学生であっても確実に勝ちに来る。そんな中で同格のチームとの対戦を含め5連勝しなくては優勝できない。こんな条件でモチベーションを持てという方が学生にとっては酷ではないでしょうか。学生のアナリストと話してみても最近の学生は当時よりレベルが上がっているので自分が大学一年生の頃よりはモチベーションが高いようですがそれでも目標はVリーグチームに1勝程度が多いようです。

V1チームにとってはどうでしょうか。ルールにリーグ戦との変更が少ないため基本的にはVリーグと大きく変わった戦い方をするチームは少ないように思います。強いて記述するのであればV1チームであれば4勝で優勝できるのでVリーグほどの名誉は感じられませんがかなりコスパが良い大会であり、リーグ戦よりも短期決戦なので選手の消耗を考えずにベストメンバーで戦い続けるチームが多い印象があります。短期で試合数も少なくタイトルを獲得でき、そのうえ賞金も良いので選手のモチベーションは高いように思います。

以上のことを考慮すると日本一のチームを決める大会とは言いつつも世界の強豪国のエース級スパイカーを要するだけの財源を持つ実質、V1チームの短期トーナメント戦としての意味合いが強いように思えます。長い期間をかけてVリーグでディビジョン1最強チームは決めるにも関わらず、それ以上の賞金を出して同じ趣旨の大会をやる意味はどこにあるのでしょうか?少なくとも私は見出せません。であれば趣旨を変える方が面白いのではないかと思います。例えば日本人選手のみの大会にすれば学生の勝利に対するハードルは下がりますし、V1チームも外国籍選手を使えないことで日本人育成の重要度が上がります。(ハーフ選手や日本国籍取得見込み選手などの問題は発生すると予想されますが…)

そもそもの話をしますとこういった趣旨の振り分けが出来ていないのは三大大会の運営母体が違い、連携が十分に取れていないからではないでしょうか?天皇杯を運営するJVAとVリーグを運営するVリーグ機構はより密に連携し、黒鷲旗を運営する大阪府バレーボール協会ともお互いの利害を一致させる運営を協議して行けることがバレーボールの発展につながると思います。

川合俊一さんのJVA会長就任から天皇杯の賞金増額という大きな変革を起こした今だからこそ加速度的に日本バレー界の発展に繋がる変革を期待したいものですね。

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