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寂しさを水に溶かす。
私はホテルのロビーにいる。
理由は知らない。
なぜなら夢だから。
私は寝ている最中で、この夢を見ている。
ロビーから出ると行き先がわからないバスがエンジンをかけた状態で止まっていた。
ノットアイドリングストップ。
導かれるように乗り込むと、運転席には友人の◯◯が座っていた。
友人は現実世界だとペーパードライバーなのだが、今は運転手として制服を身に纏いハンドルを握っていた。
友人は仕事を全うしていたので、私は話しかけることもなくバスに乗り込み最後部座席の左端に着席した。
出発するまでしばらく待っていたが、他の乗客はおらず、私と友人だけのバスはおもむろに走り出した。
しばらくバスに揺られていると、街並みは私の地元の風景となり見慣れた土地になった。
看板も建物も私がその街に住んでいたときと完全に一緒だった。
なにせ夢の中だから。
バスが停まると着いた場所は家族連れで楽しむことができるプールだった。
子どもの頃からプールが好きだった私は、親によく連れて来てもらった思い出の場所だ。
バスから降りてプールが見える場所のベンチに座っていると運転手の服を着た友人が降りてくる。
帽子を取って隣に座ると「懐かしい?」と聞いてくる。
そこから私と友人はいつものように雑談をした。
昨日、会社の飲み会だったんだけど周りが結婚したり同棲したり。
その話自体は楽しいし幸せに暮らしているのだからいいのだけれど、私個人の感情としてさみしさが湧いて出てくる。
体調が酷くてしばらく仕事を休んでたときは回復が第一優先なので寂しさはなかったのだけれど、周りの人間が好きな人と好きなことを楽しそうにしている話を聞くとなんだか古傷がエグられるように寂しさが募る。
ひさびさに「さびしい」という感情に包まれてとても落ち込んでいる。
そんな話をした。
その気持ちを刺激的に消化したいのだったら、結婚や恋人という形にとらわれずとも、好きな人と好きなことをするしかないという話でしかないこともわかっているから、まぁなんとかするしかないんだけど。
そして「好きな人と好きなことをする」以外でのさみしさを紛らわす方法も知っている。
すると友人から「どうすれば紛らわせられるの?」と質問をされる。
僕は「プールで泳ぐことですね。」と答える。
そうするとふたりはなぜか水着に着替えることもせずそのままの服でプールに飛び込む。
流れるプールで遊んだりウォータースライダーではしゃぐ。
昔からプールが好きだったので、「好きなこと」をするためにバスに乗って子どもの頃に通ってたプールで「好きなこと」を存分に楽しんでいるのだろう。
友人もそのことを見越してバスの運転手をやってくれたのだろう。ありがとう。
さみしさは紛れた。好きな場所で友達とはしゃぐと寂しさは紛れる。
25mプールで潜水競争をしていて、息が限界で顔を上げた瞬間に目が覚めました。
昨晩は台風による偏頭痛は重く、ひさびさに飲んだアルコールで気分が落ちて「さみしさ」を感じていたのだろう。
だが、夢のおかげで寝る直前まで抱いていた寂しさが少し紛れた気がする。
これからジムのプールで泳ごうかな。
夏の暑さを溶かすように泳ぐのは未だに好きな行為だ。
水中の魅力に魅入らされている私は今日も水に溶かされる。
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