バイブレーター

 「消費税率が来年度から3%上がり…」

 テレビからアナウンサーの不快な声が聞こえてきたのでチャンネルを切り替えた。ザッピングしてるとテレビはまるで私の意識みたいだなと思う。

チャンネルを切り替えても切り替えても似たような番組ばかり流れるので私はテレビの電源を切った。ついでにエアコンのスイッチも。

ベッドに寝転がりスマホの画面を眺める。スマホもテレビと同じくらい空虚だったが私の嗜好に合わせたコンテンツが供給されるので飽きない。フィルターバブルと言うやつだ。「フィルターバブル」という言葉はWikipediaかなんかの記事を適当に漁っていたら見つけた。ベッドの横のゴミ箱の中には去年買った生理用品が乱雑に詰め込まれている。去年彼氏からもらったイヤホンなんかも入っている。彼氏とは最近疎遠だ。まぁどうでもいいけど。クラスLINEを見る。クラスメイトのKが「今度みんなでカラオケ行きたいね〜」と呟いていた。私は行きたいとは思わない、全然。Kの言う「みんな」に私が含まれていないことに気づき漠然とした疎外感を感じた。Kの呟きに対してクラスメイトたちが次々に「それいいね!」とか「今度行こうよ」とかリプレッションを行っている。まるで地面に落ちた飴に群がるアリみたいに。私はそっとLINEを閉じた。引き出しのなかにしまってあるバイブの電源を入れたいと強く感じた。

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