螺旋構造のムカデ

 花火は終わったが
 狐につままれたような顔して
 水中に小魚が集まってくる
 藻が絵の具みたいに溶け合って
 夜はコンクリートに埋められて
 死神たちが踊りを踊っている
 てふてふよ なぜお前は神様のやうに
 笑ってはくれないのか 鉛筆の芯を
 少しずつ削っていくように
 俺の心は削りとられていく 夏
 放火魔の昼休みは短い(蝉の一生!)
 この詩を書きなぐっている間にも
 俺の兄妹は屠られているだらう
 プールに浮かんでいる浮き輪だよ
 これは比喩ではなく現実で
 防波堤を濁流が押し流していく
 てふてふよ お前はなぜ黙る
 沈黙は昼間に射し込む陽の光だったな
 気が狂いそうだ、と書くことで
 お前らは正気を保っているが
 救い主が殴られるまで、と書くことで
 俺は自らの偽悪性を隠匿している
 いつまで書くつもりだ、とお前らは問   うだらう お前らは鉛筆の芯を少しずつ   削っていくやうに かつお節を少しずつ   削っていくやうに 斃れる いつまでも蘇 えるなお前らは斃れたままでいろ 花火はいつの間にか終わってしまったな 蝉の一生のやうに儚い命だが 水母のやうに漂っていろ 神様のいない窓辺で
 

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