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丁寧な暮らしなんて大っ嫌いと君は叫んだ

「丁寧な暮らしなんて大嫌い」と叫んだ友達は1日の半分を料理に費やしていると言う。そしてとても疲れるとも。
えーっ、丁寧な暮らししてんじゃん!?
色々と聞いていると出汁をとる煮干しのはらわたと頭をとるのが大変だと言う。
はらわたも頭もつけたまんまでいいよ。とったら味がしないよ。
と言うと、そう思うと言う。でも本に書いてあるとも。

私もかつて美味しい出汁をとりたいと思って一生懸命になっていたことがあった。
頭もはらわたもとり、鬼のようにあくをすくって煮立たせないよう目を凝らした。
いろんな本を読み、材料を足したり引いたりいろんな出汁のとり方を試した。
とても大変だったわりにどれも美味しく出来上がらなかった。
そして私は味音痴なのだ、料理が下手なのだという結論に達した。
モヤモヤした。悲しかった。そのころ本屋さんに行くと料理研究家が表紙を飾っている雑誌が多かった。「〇〇さんの丁寧な暮らし、」。見るたびに落第の刻印を押されたようで自己嫌悪におちいった。そしてSNSが登場して料理の専門家どころか普通の方たちのキラキラした台所までが見えるようになった。

友達に言った。
頭もはらわたもとらなくていい。いや出汁なんていらない。味噌汁の具と味噌を水の中に最初から入れちゃえ。
友達はびっくりしてポカンとしていた。
「味噌入れたら沸騰させちゃいけないって言うし、、」ってな事を言うので
味噌汁沸騰大歓迎。沸騰させた味噌汁と沸騰させていない味噌汁を食べ比べたことあっか?そんなに厳密に味わって日常の食事にジャッジを下しているのかい?

私も苦労して出汁をとった。色んな具を入れてみた。工夫して作っているのにさっぱり美味しいと思えない。そんなある時出汁入れなかったらどうなる?と思ってやってみた。
驚いた。出汁が邪魔だったんだ。なんの味噌汁でも出汁の味になっていたんだ。
その味噌汁は素材の味がした。これが食べたかったんだと思った。それ以来味噌汁に出汁は入れなくなった。長い旅だった。結局のところ自分はどんな味噌汁が、どんな味が食べたいのか、なのだと思った。
それが自分の普段のごはんなのだと思った。


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