ysh

はじめまして、はじめました。 詩と切り絵と文章。

ysh

はじめまして、はじめました。 詩と切り絵と文章。

マガジン

  • 紡いだことばたち。

  • つれづれつづれ

    散文、短編など

  • 切り絵

    日常と非日常を混ぜ合わせて、切り取る世界。

最近の記事

日々のこと 1

めったに体調を崩すことはないのだけど、それでも子どもが生まれてからは各所からずいぶんといろんなウイルスが我が家にやってくるようになった。 今回は夫に端を発し、久しぶりに私も風邪をひいた。 熱はないが、頭、喉の痛みと洟水にやられている。 普段元気な人なら共感してくれるかもしれないが、体調を崩すと、なんだかこの世の終わりのような気になる。 (熱もないのに) 頭と喉の痛みで変な時間に目が覚めて、とりあえずの応急処置と、蜂蜜を舐めに階下へ。 古い我が家は暖房がついていないと、まるで

      • 軽やかに生きる

        「生きる」ということを、そんなに重く捉えなくても良いのかもしれない、と、最近はそんなことを考えています。  若い頃は、「何者かになる」ということが、イコール「生きている実感」でした。だからこそ、「何者でもない自分」を肯定できず、爪痕を、何らかの形で残していかなければ自分の人生には意味がないような気がして、何もできず歳を重ねていく自分に焦りと苛立ちを感じていたものです。  けれど、人生って、もう少し「ラフ」で良いのかもしれない。自分なりに自分とまわりの人を大事にできているの

        • 私は、見つける 滴が垂れたコップの端に ふいに目を覚ました、長い夜の廊下に ふやけた指でめくるページに 洗濯物の揺れるすき間に 少女たちの、健康的な笑い声の中に 私は、見つける 内側に響く、ささやかな音 生まれ落ちた瞬間から 途切れることなく 自分のためだけに 刻まれ続ける 時の音 私は、見つける 夕焼けが真っ赤に熟れた瞬間に チカチカと点滅する信号に 使い古されたキッチンに アスファルトのひび割れに咲く花に その花に、ふと泣きたくなる瞬間に 私は、見つける 内側

        マガジン

        • 28本
        • つれづれつづれ
          11本
        • 切り絵
          11本

        記事

          詩: 仮想現実

          瞳に宇宙を抱え込んで歩く 炭酸水の泡の中 あるかなきかの月がわらう 無限に広がる空間を 等しい重さで ひとり、また、ひとり 浮遊している カーテンの向こうの雨を無視して 括弧の付いた現実が 発光しながら誘ってくる 「私はロボットではありません」 十本の指で開いた ひとり分の空間に 浮かんでは消える顔、顔、顔 足元が揺らぐ からからに渇いた喉を 唾で誤魔化して あるかなきかの私がわらう

          詩: 仮想現実

          友がみなわれよりえらく見ゆる日に

           今年度末をもって今の仕事の契約が切れる。  長男の育児休業が終わる直前、保育園も決まって「さあ復職するぞ」と意気込んでいた矢先に前の会社が廃業するという、なかなかの不運に見舞われた私が慌ててハローワークに駆け込み見つけた今の仕事。  休みの取りやすさと自宅から自転車で通えるという立地条件(と、保育園取消になりたくない!という切羽詰まった状況)で選んだ職場だったけれど、英語を使った業務も多く、持っているスキルを活かして仕事をすることができた。  5年という契約期限の間に

          友がみなわれよりえらく見ゆる日に

          雨(英訳)

          ※原文は下に載せてあります。 Rain Sudden indication of rain What did the wind take away? Sudden indication of rain Many bones of words are stuck in my throat Sudden indication of rain Plate of memory broke into pieces Sudden indication of rain Cozy 

          雨(英訳)

          詩 37

          次男が眠っている 離れると途端に目を覚まして泣いてしまうので 諦めて 私もぼうっとしている 身体をぴったりとくっつけて 鼻息を少し大袈裟に 顔に吹きかけるようにすると 安心するのか また微睡みに溶けていく 私はもう、一切を諦めて 五本の指だけで 何が出来るか考えていたら 詩が一遍出来上がった

          短歌 1

          コーヒーの渦に溶けてく感情には名前がなくて詩にも出来ない 通り雨 上着を被せてくれたから折りたたみ傘は畳んだままで 炭酸の気が抜けていく夏の夜 私はひとり 泡粒になる

          短歌 1

          詩 36

          *English version is below. むっとするほど湿気を含んだ熱い空気 雷が切り裂く昼間の眠り それを合図に 美しい雨が世界を濡らす 灰色の荒野の真中 旅人がひとり 立ち尽くしている 雨は旅人の身体を濡らし 火照りを鎮めてくれる じきに夜がくるだろう 旅人は火を焚き 今朝仕留めた兎の肉を焼く 溜まった雨水で喉を潤し 土埃にうねる黒髪を洗う 幾夜も こうしてひとり 繰り返している 旅人は 水面に映る自分の輪郭が もうはっきりとはしていないことに気

          月に聴く

          月に聴く

          詩 33

          空が泣いた日 娘は踊る 大地を蹴り どこまでも高く スカートの裾が果てしなく拡がる 雨粒の拍手が 娘を包む 娘は歌い、踊り続ける 足が潰れ 声が枯れても   いつしか頭上には 光り輝く七色 それにすら気づかずに 娘は踊り続ける 黒髪を靡かせて 魂の赴くままに やがて、朝が娘を迎えに来る 肉体はとうに明け渡した その魂ひとつで 娘は踊り続ける 内側から渾渾と沸き続ける熱い泉 叫びにも似た、祈り

          詩 33

          詩 27「無題」 本文

          喉の渇きに目が覚める 闇に包まれて 横たわる身体   夜が雨音を強くする あるいはそれは 内側の 寂しさに呼びかけてくる   ふいに、耳に微かな泣き声 抱き上げた腕の中で 乳を探す幼児は 全身で 希望を象っている 睫毛のひとつひとつに 命を宿らせて   死んでいく星と 誕生する星の 命の巡りを 眼裏に描く   いくら言葉をさがしても 端から零れ落ちていく   振り返っても届かない昨日は 美しい顔をしている   膨らんでいく夜の空気に 背中を丸めて 日向の匂いの 明

          詩 27「無題」 本文

          詩 25

          詩は呼吸する 春の風が 波紋を広げる 池のほとりで 散っていく花びらを髪飾りに 詩は踊っている 一心不乱に 朝日がその横顔を 金色に染めて 詩は深く、深く呼吸する

          詩 24

          滔滔と流れていく日常 朝方 吐き出しかけた言葉を 夜にはひとり 弔っている 窓を開ければ 呑気な日差しが差し込んできて 一瞬、混乱してしまう 先の見えないトンネルに 行き場を無くした怒りが 満ちていく 退屈は感覚を麻痺させる 皆同じ顔をして その怒りが もう誰に向けられているのかもわからないまま 文字を打つ手は滑り出し 止められない ゆっくりと閉じていく世界 青い空は、いつまでも青く