綺麗なもの【ぬまたぬまこ】

私が綺麗と思うもの。

子どもの頃見た景色かな。
たとえば、部室に差す夕日とか、夕焼け空いっぱいにコウモリの飛ぶ帰り道とか、地平線をなぞるように走る電車とか。

総じて中学生の頃の、夕方。多分夏休み。

先生にはよく叱られていたし、友達とはよく喧嘩をしていたし、宿題も部活も大変だったから、特別良い思い出ばかりじゃないけど、ひたすらにまっすぐ生きていた気がする。

記憶の中の景色だから都合よく綺麗にしてしまっているのかな。
細かいところをどんどん忘れていって、綺麗な部分だけ残ってしまったのかも。

通学路を破った日のドキドキは覚えているのに、今歩いてみると、どっちが通学路でどっちがドキドキの道か思い出せないし、勝手に名付けて毎日ただいまと声をかけていた犬の名前も思い出せなくて、ただ全てを照らしていた夕日と泥のついたスニーカーだけが目に浮かぶ。

忘れてしまうことへの寂しさはあるけれど、ではいま目の前にある綺麗な景色を存分に味わえているのかと言うとそうでもないよな、なんてことを考えた。

考えすぎた。
私の綺麗と思うものは夏の夕方です。
ただそれが言いたかっただけなのに。

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