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「サッカーのどこが面白いの?」への答え Footballがライフワーク Vol.15

「サッカーって、どこがおもろいの?」1ファンとして、世界中でもっとも愛されているスポーツだと信じているフットボールだが、その関心や情愛を分かち合えない人びとも少なくない。阪神タイガースが永久に不滅のここ関西では、なおのことだ。圧倒的に多いのは「点が入らなくて面白くない」という意見で、「雰囲気がチャラい」とか「知的に見えない」といった感想も聞かされたことがある。フットボールのどこが面白いのか。あまりにも率直に問われると、なかなかに返答が難しいものだ。それに心酔してきた身としては、改めて考えるまでもないことで、戸惑いを隠せなくなる。

一流ライターの言葉を借りるなら、印象的なものが2つあった。「陸上競技のような要素と野球のような要素、両方を兼ね備えている」という旨の見解を述べていたのは、高校以来、ずっと憧れてきた金子達仁。ボールひとつで展開されるゲームには、原始的な側面もあれば緻密な側面もあり、双方とも魅力なのだという意味に解釈した。相手の思わぬミスにより、はからずも得点が生まれるなど、運の影響を受けることもあるが、そんな可能性を念頭に置きつつ勝率を高めるための知略もはたらいていて、その構図を「偶然と必然のせめぎ合い」と表現したのは、藤島大。ラグビーの権威は、フットボールを語らせても唸らせてくれる。

巨匠の言のあとで僭越ながら、私なりの答えを捻り出してみた。どこが面白いのか、という問いの根底にあるのは、ともすると退屈に見えてしまうフットボールの特性への不満や嫌悪感だろう。確かに、どんなファインゴールでも1点しか加算されず、そもそも得点が生まれないことさえある。日米で愛されてきた野球の場合、ベース=塁という画期的な要素によって、これが埋まれば一挙4点を得る可能性が生まれ、犠打やエラーなど得点にもあらゆる方式がある。実によくできたルールで、発案した人は天才だと思う。ただ見方を変えれば、ゲームを面白くするため手の込んだ加工が施され、「タネや仕掛け」が張り巡らされているとも言える。例えるなら、盛りだくさんの具材にじっくりと下味をつけた炊き込みご飯かもしれない。

フットボールのシンプルなルールは、タネも仕掛けも、必要最小限にとどめている。野球が炊き込みご飯なら、さしずめ白ご飯である。共に供される主菜や副菜が充実するに越したことは無いが、そのまま食べてもじゅうぶんに美味しい。フットボールを愛でる者なら、華麗な足技や熾烈な球際の攻防など、このボールゲームには得点に関わるシーン以外にも醍醐味が詰まっていて、たとえスコアは動かなくても楽しめるだけの奥行きがあることを知っている。めまぐるしい点の奪い合いや劇的な逆転、理想的な展開になればどんな競技も面白いが、そうならずとも興味の余地を残しているのが、フットボールの偉大さだと思う。次に問答に出くわしたときは、ぜひ、白ご飯の話をしてみよう。

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