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4文小説 Vol.32
「迎えるも送るも無いねんけど」と呟きながら、提灯の灯りを消し、茄子も胡瓜もホオズキも片付けた。
世の行楽シーズンをしめやかに過ごすようになって20年目、もうじき、母と2人きりで重ねた歳月が3人で暮らした時間を追い越してしまう。
人間より四季を知っているのか、8月も下旬になると蝉の声は小さくなり、赤とんぼが飛び交うようになった。
食事のたび仏壇のお供えを入れ替え、雨が降り始めたら急いで部屋の窓を閉め、いまも父はそばにいると思うから、わが家には迎えるも送るも無いのだ。
―盆が過ぎて
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