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給与が下がることになって 運動神経が悪いということ Vol.15

何と健全な職場だろうか。定時を過ぎてまだ少しでも、続々と帰り支度を始めた同僚たちは互いをいたわり、ねぎらいながら退勤していく。現在の上司が安全・安心な職場づくりのためワーク・ライフ・バランスを重視してくれるおかげで、業務量が適正化された環境で働けるようになったのを感謝せねばと思う。1年の中抜けを挟んで13年間、同じ部署で勤めてきたが、いまがもっとも人に恵まれていると断言できる。

私が運動と並んで苦手なものといえば、数学だった。算数の段階で難しかったのが、高校になればもはや手に負えなくなり、証明問題が2題だけ出題された試験では、部分点すらもらえず0点を喰らったこともある。理数系の能力不足は仕事とも関連するのか、人事考課の成績は惨憺たるものだ。まるで戦力にならず1年かぎりで異動となった前部署で下されたのは、5段階で最低の評価だった。あれほど振るわなかった高校の数学ですら5段階の2だったのに、私にとって仕事は、数学以上にできないものだったらしい。

年度末に入ると、否応なく気になるのが人事に関する発表だ。最低評価は重くのしかかり、近年は降格が現実味を帯びていた。いよいよ尻に火がついた今年、上司からは人事考課の素点となる自己評価を上方修正するようアドバイスを受け、厚意に甘えさせてもらった。足掻いてはみたものの、結果は覆ることなく、4月からの減給が決まった。同期から数年遅れでようやく昇格できたというのに、降格は最短コースだった。

若い頃に比べ、仕事上がりの時間はずいぶん早まった。遅くまで残業に勤しむ同僚には後ろ暗くなることもあるが、幾度か気を病んでしまった経験上、これも健康対策と言い聞かせている。「力が及ばなくて、ごめん」人事部からの通告を伝えてくれた所属長の表情は、当の私より神妙だった。社会人として学んだ微かな知見のひとつは、職場の風土というものは良くも悪くも、上司の姿勢や価値観に影響されやすいということだ。これからもどうか、現在の上司たちのもとで働きたい。厳しい決定を受けた帰り道でも、日暮れ前の空を見上げられるのだから、私はこれで幸せだと思う。

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