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4文小説 Vol.23

普通の道では素通りするだけなのに、この愛想無しでも人びととすれ違うたび自ずと挨拶を交わすから不思議だ。

曇り空、中学生の頃なら楽に登れた階段に呼吸は乱れ脚がつりそうになりながらも、1年ぶりの山道を進む。

「須磨アルプス」の別名は300メートルあまりの低山には仰々しいようでも、馬の背が通り名の岩が切り立った足場で味わえるスリルと静謐さは、住宅街のすぐそばにありながら非日常へと誘ってくれる。

木々の切れ目から望むのはわが中学の校舎、むかし友と戯れた同じ地を、四半世紀を経たいま同僚と踏みしめている感慨に浸った。

―横尾山にて

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