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一昨年の熱 第3のリベロ Vol.11

大分県の昭和電工ドームは、「ビッグアイ」の愛称どおり円形状の屋根に特色がある。現地観戦した一昨年のラグビーワールドカップ、それまでは大分トリニータのホームスタジアムという印象だったが、スタンドから眺めた屋根の形状は巨大な楕円球のようで、まさしくラグビーにふさわしい舞台だと感じた。

世の中の変容を経て実際より遠い過去のように感じられるものの、欧州と南半球以外で初めてワールドカップが開催された2年前は、日本列島がラグビー一色となった。関西のゲームはチケットを入手できなかったが、おかげで大分県を初めて訪れることになり、前乗りして湯布院の地を踏む念願も果たせた。対戦カードはオーストラリア対ウルグアイ、ラグビーにおいては実力差が大きく、実際に予想通りのワンサイドゲームだった。しかしながら、満員のスタジアムでもっとも盛大な拍手がこだましたのは、10-45で大敗したウルグアイが唯一のトライをあげた場面。ノーサイドの精神はファンを区分しない客席にも息づき、試合後のバスへの通路では大挙して来日したオーストラリアの人びとと現地スタッフが、いたるところでハイタッチを交わしていた。イベントの真価とは、末端でこそ問われるものなのかもしれない。凡戦でも味わえたラグビーの魅力と満足感を通して、不安や疑問の声もあったイベントの成功をはっきりと確かめた。

そんな思い出の地で先月、ワールドカップ以来国内2年ぶりのラグビーのテストマッチが開催された。日本が迎えたのは、最新のIRBランキングでも3位のオーストラリア。前半、2トライを先取された日本はリスタートのキックオフのボールをキープしてレメキ・ロマノ・ラヴァのトライにつなげるなど4点差で折り返し、後半も中村亮土がインターセプトからトライを奪う見せ場をつくり23対32。過去5戦全敗、4年前の直近の対戦でも33点差で敗れた強豪に対し、立派な善戦だった。

初夏の欧州遠征では、4年ごとに活動する特別チームのブリティッシュ&アイリッシュライオンズに18点差、ワールドカップ以来の再戦となったアイルランド代表には8点差で、いずれも惜敗。ブランクとアウェー、不安材料の多い状況で強豪と対戦しても、ドライビングモールやスタンドオフ・田村優の巧妙なキックパスなど多彩な攻撃で渡り合い、決して一方的な劣勢を強いられることはなかった。第一線級の各国を指す「ティア1」には及ばずとも、それに準ずる地位まで飛躍したと言えよう。最近10年間で日本がもっとも国際的な地位を高めた競技は、きっとラグビーだ。今宵はスコットランド戦、激闘を制して史上初のワールドカップ決勝トーナメント進出を決めた相手との再戦で、ONE TEAMが流行語大賞になった一昨年の熱を呼び覚ましてほしい。


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