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第3のリベロ

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取り柄は無くとも愉しみは豊かに―マークする相手のいないリベロのごとく自由に綴る
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3種盛り 第3のリベロ Vol.44

毎夏、WOWOWで放送されるたびに観る映画が「クライマーズ・ハイ」だ。原田眞人監督の2008年の作品はとにかく描写が濃密で、繰り返し魅了される。徹頭徹尾、すべての場面に無駄が無く、主演・堤真一をはじめとするキャストの技量も相まって自ずと画面に引き込まれていく。鑑賞経験がごく乏しい私にも、こういう映画のことを名画と呼ぶのだろうとわかる。御巣鷹山での日航ジャンボ機墜落事故から、折しも今日で39年になったという。 開会式でセリーヌ・ディオンが力強く歌い上げた「愛の讃歌」に、ヴィッ

この気持ちは? 第3のリベロ Vol.43

40年以上、恋愛というものを知らずに生きてきた私にも、好みの女性芸能人なら数名いる。柔らかく、人の良さそうな雰囲気に、小説を執筆する文才まで兼ね備える。高山一実は、その代表格だ。 七夕の日、その婚約発表には年甲斐も無くショックを受けてしまった。お相手がクイズ作家だなんて、あまりにも予想外だったのだ。 一方には、男性アイドルやイケメン俳優を選ぶ人ではなくて良かったと安堵する気持ちがある。反面、「何でやねん」と突っ込みたくなる想いも消せないのだから、男心というものもなかなかに

地元で一休み 第3のリベロ Vol.42

金曜夜のデパ地下、その日のおやつは即断できた。ポップアップストアが来ていて、北海道・十勝産の小豆を使用した目玉商品は鯛焼き。王道の粒あんと、金色が鮮やかな芋あんを選ぶ。紙袋にしたためられた文字は「一休」、待望の一休みに漕ぎ着けた気分に相応しい屋号が決め手になった。 自宅に帰るのは、月曜の朝以来。忙しさのあまり職場近くのアパートに入居を決め、最初の1週間を乗り切った。まだ引っ越し前、キャリーケースで運べる限りのものしか用意できず、薄手のマットとタオルケットが布団代わりだが、オ

銭湯の帰りに牛丼を食べた日 第3のリベロ Vol.41

58.9、記録更新。日を追うごとに、体重が減ってきた。数年前には70キロに迫ったこともあったのが、60キロを下回るなど学生時代以来だろうか。これが健康的な生活改善の成果であればいいのだが、多忙のせいで疎かになった食事や、ときに吐き気を覚えるほどの食欲不振の影響であることは、素人目にもわかる。 快晴の土曜日、神戸市垂水区のジェームス山と呼ばれる地域にある「天然温泉月の湯船」に行こうかと思い立ち、自宅から小一時間かけて歩いてみた。道中の木漏れ日や、黄色い花が眩しい。寝湯に浸かり

ファーストセット 第3のリベロ Vol.40

駅のベンチに腰掛け、構内のセブンイレブンで買った枝豆とひじきの豆腐バーの真空パックを剥がす。夜も10時を過ぎれば電車の間隔は開き始め、接続の悪いときは乗り換えの合間に食べきれる。ウィダーinゼリーの日もあれば、同じ豆腐バーでも「おから」にした日もあった。新たな配属先での暮らしもひと月近くが経ち、忙しさのあまり旺盛な食欲も無くなったいま、こんな粗末な夕食も何度目か。 大幅に制限された余暇の時間。貧弱な頭は疲弊して、読書する余力を失った。クドカンの「季節のない街」も、WOWOW

寛容になりましょう 第3のリベロ Vol.39

今朝は、FM802のWEEKEND PLUSの時間だった。連日の超勤でも片付かなかった残務を持ち帰り、平日並みに起きてradikoを聴きながら机へ向かう。わが勤務先では公示から配属までの期間が実質2週間足らずと、ごく短い。日中は15年分の仕事を後任へ引き継ぎながら、年度末の平常業務に追われ、年度をまたぐ用件は別の同僚へ託さねばならず、私の能力不足を差し引いても時間が足らない。 なんで、あんなに嫌いな仕事のため、こんなに生活の犠牲を払っているのか。もとの資格にも戻してもらえず

麺と漫才 第3のリベロ Vol.38

雑誌の表紙でもネット記事の写真でも、ラーメンを見ると反射的に手が伸びる。これも、「映え」が重んじられる時流の表れなのだろうか。近ごろは、ポタージュスープのように白濁したスープに、生ハムのようなチャーシューを添えて色鮮やかな野菜を刻んだものが流行っているようだが、個人的にはあまり食べたいと思えない。まるで庶民の食が創作料理に様変わりしてきたようで、洒落た一皿を求めるならラーメンではなくフレンチやイタリアンを選べばいい。 年始以来、関西ローカルのテレビでもよく見かけるようになっ

いま、国内でもっとも面白いスポーツとは 第3のリベロ Vol.37

アレクサンドロスの歌が、繰り返し場内に鳴り響く。4連続トライで、よもやの29-0。いかに接戦も熱戦も続出するリーグ戦とはいえ、この試合ばかりはワンサイドゲームだろうと思っていたが、リードするのが緑のジャージを纏ったホームチームとは、全くもって予想外だった。 ジャパンラグビーの最高峰、リーグワンも3季目に突入した。ワールドカップの反響も、期待どおり。サントリー対東芝の時代から熾烈なライバル争いを繰り広げてきた東京サンゴリアス(SG)対ブレイブルーパス(BL)東京の「府中ダービ

30周年の結び 第3のリベロ Vol.36

先月の初め、ルヴァン杯決勝を現地観戦して以来、チャゲアスの歌が頭を離れない。待ちに待ったクラブ初タイトルを祝して福岡のサポーターが届けたその歌は、秀逸な選曲だと思う。地元が生んだビッグアーティストの曲のなかでは、より有名な「YAH YAH YAH」のメロディが適しているだろうが、「殴りにいこうか〜♪」では試合前の昂ぶる雰囲気になる。試合後に勝ち鬨をあげる場面では、歌詞のアダルトな部分はラララに置き換え、その直後だけ唄う「LOVE SONG」が絶妙にマッチしていた。この「第3の

ラジオとノイズ 第3のリベロ Vol.35

♪小さい頃はこの世界に   生きてるのはあたしだけなのかもと   不安になった時に必ず   「違うよ」とノイズ混じりに叱られた aikoの曲はよく聴いたことが無かったが、最近知ったこの「ラジオ」には惹かれた。2011年にリリースされたベストアルバムの初回盤の特典として収録されていた楽曲で、今月はじめ12年以上を経て配信リリースが決まったという。ノイズ混じりというフレーズを、若い人たちは理解できるのだろうか。私が暮らしていた団地では、ラジカセのアンテナをどんな風に伸ばしてみて

グレートルーザー 第3のリベロ Vol.34

今年は、ジェロム・レ・バンナの雄姿を久方ぶりに目撃できた。ヘビー級が主体だった1990年代後半から2000年代のK-1にあって、抜群の存在感を放った"番長"。1999年のグランプリでは、連戦連勝を誇ったピーター・アーツの蹴りに倒れた直後、カウンターの左ストレートを見舞って大逆転のKO勝ち。立ち上がれず顔を震わせたアーツの表情は、身体をくの字に曲げながらダウンした姿とともに強烈な記憶になった。これで優勝は間違いなしと思えた次の試合でもアーネスト・ホーストを圧倒したが、鮮やかな逆

アレが決まって 第3のリベロ Vol.33

私がもっと野球好きで、なおかつ阪神ファンであったなら、今年ほど愉しい年もないだろう。春にはWBCで侍JAPANが優勝したのに続いて、少しずつ秋めいてきたいま、タイガースが"アレ"を決めた。その瞬間くらいは一目観てみようと、当日は「サンテレビボックス席」の中継を視聴したが、関西地区の平均視聴率は20・8%。ビデオリサーチ社の調べになった1997年以降、同局では過去最高の数字を記録したという。テレビが観られなくなったこのご時世に新記録とは、ここ関西で阪神タイガースがいかに愛されて

普通じゃない夏休み 第3のリベロ Vol.32

子どもの頃以来、長年ぶりに公共図書館の利用カードを取得した。タイトルも著者も忘れてしまったが、ある本で読んだ「公共施設は無料とはいえ税金で運営されているのだから利用しないともったいない」という意見だけは記憶に残り、感化されたのが動機になった。さらに決め手になったのが一昨年、居住する神戸の須磨区に名谷図書館が新設されたこと。脂肪肝対策の運動も兼ね、自宅から小一時間の道のりを歩いて通っている。 真夏のウォーキングには着替えが不可欠、トイレで汗拭いして入った図書館は夏休みの中高生

怪獣と怪物 第3のリベロ Vol.31

梅雨も開けて夏本番、学校は夏休みに入った。夏休みがいちばん愉しいのは、何といっても始めのうちだろう。通学の日常から解かれ、面倒な宿題は後に回し、まずはひと月以上もの長い休みに入った喜びに浸る。学生の頃から怠惰に過ごしていた私でさえ、そんな至福のときは記憶していて、その象徴がこの時期に放送されてきたフジテレビの27時間テレビだ。 お楽しみは、「ラブメイト10」。今をときめくトップタレントから、どこぞで見かけた一般人まで、好みの女性を紹介する明石家さんまの名物コーナーが、昨晩4