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ごちゃごちゃ is life『この春、とうに死んでるあなたを探して/榎田ユウリ』

生活感のない部屋に憧れる。物が少なくてすっきりとしていて家具とかラグの色が統一されているような、そんないい感じのシンプルな部屋。
でもたぶんそれは無理だと思う。なぜならごちゃつかせている色んなものが自分の生活であり、人生だから。

矢口弼は38歳、元税理士。離婚を経験して仕事にも疲れた矢口は、中学時代を過ごした南森町にひとりきりで戻る。新しい住まいは、かつての同級生・小日向の営む喫茶店「レインフォレスト」の上階。外見は変わっても中身は子どものままに騒々しい小日向に矢口は面食らいながらも、少しずつ雨森町になじんでいく。
そんなふたりにもたらされる恩師の死をめぐる謎。
先生の死は事故なのか?あるいは、生徒からのいじめを苦にした自殺?23年前の真実を求めて、矢口と小日向は元クラスメイトを訪ねるが―。失くしたものも、ふたりでなら見つけられる。
喪失を抱えた者たちの人生を全力で肯定する物語。

筑摩書房 この春、とうに死んでるあなたを探して
紹介ページ

榎田ユウリ先生の本はBLの榎田尤利名義でいくつか作品を読んだことがあった。
でも一般文芸は初めてでどんな感じの本なんだろうと気になって図書館で借りてみた。
矢口と小日向は38歳のアラフォーで立派な大人なのだけど、中学生のころの担任について調べるためにかつてのクラスメイトの元を訪れて話を聞く。
それによって思春期特有の友達とのじめっとした距離感とか、内にこもった鬱屈した感情が見えてくる。
それでもそれがあまり嫌な味つけに感じないのは、あくまでも主人公や登場人物がすっかり大人になった地点からそれを語っているからだと思う。
全体を通して情景の描写も含みつつも文章のリズム感がよくて引き込まれた。
こういう文章が書けるようになりたい~!文章が上手い~!

矢口の家へ訪れたときにあまりにも家具や日用品が少ないことに対して小日向と矢口のやりとりが特に好き。

「時代は断捨離なんだよ。ものが少ないほうが、生活がスッキリしていていい」
「スッキリさせんな。人生はもっとゴタツとしてるもんだ」
「人生じゃなくて生活の話だろ」
「生活が続いたもんが人生だろうが」

そう、ごちゃごちゃしている生活が続いているのが人生なんだよなあ。
自分がわりと理屈をつけて色んな事物をすっきりとカテゴライズしたがるタイプ、どちらかというと白黒思考ではっきりさせたがりの部分があるので、このやり取りは刺さった。
小日向みたいな性格に憧れる。私は圧倒的に矢口タイプなのだ。
ごちゃごちゃさせたままにするということは、ちゃんとそのごちゃごちゃに向き合うことを考えてないとできない。
向き合うことを怖がって切り捨ててしまえば楽だから。

いまちょうど自分の部屋を見回してみて、たしかにスッキリしているとは言えない。
整理整頓苦手だし!
PCまわりもペンやらメモやら本やらがあるし、好きなキャラの小さいアクリルスタンドまで置いてある。
本棚も色んな種類が並んでいてコミックスもある。
でもこのごちゃごちゃ感がとても好きだしリラックスできる。
自分の部屋だなあと思う。
だから多少の部屋のごちゃごちゃはいいかなーなんて、ね。


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