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エゴイストかもしれない

あれは2年前の冬のある日、同棲生活も4年目に差し掛かった頃。わたしはALS(筋萎縮性側索硬化症)患者のドキュメンタリー番組をこたつにぬくぬくと入りながらツレとみていた。

ALSとは端的にいえば身体の筋肉が徐々に動かなくなっていく病気である。人間の活動の大部分は筋肉によって支えられている。つまり、筋肉の働きが徐々に衰えるということは、手足が動かなくなり、話ができなくなり、物を飲み込めなくなり、更に病状が進行すると呼吸も自分で行なうことができなくなるということを意味する。そのため、ALS患者は遅かれ早かれ「気管切開をして人工的な呼吸を継続するか否か」という苦渋の選択に直面することとなる。

 気管切開の話になって、私は何となくツレに聞いてみた。

 「僕はいいかなー!自然に死にたい。」

 

その言葉をきくやいなや、私の目からどっと涙が溢れ出た。思いの外、ショックだったのだ。身体から湧き上がる強い感情に戸惑いつつも、「なんでだよ!生きてよ!」と思った。エゴかもしれない、それでも私が介護でもなんでもするから、ただそこにいて生きてほしいと思ったのだ。

「身内を持つ」ってこういうことかと思いがけず実感し、ツレが知らずのうちに「身内」となっていたことに驚いた夜のことだった。

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