今日ときめいた言葉144ー「生い立ちや信念や格好で切り捨てられたりしない、男か女でふるいにかけられない社会になることを私は心から願います」(朝ドラ「虎に翼」から)
ドラマの中でこの言葉を聞いた時、ちょっとウルッとしてしまった。今から86年も前、女性の立場がずっと困難だった時代にこのような意見表明をしたのだから。
でもさらに100年以上も前に大逆事件で逮捕された金子文子は、二十歳にも満たない年で以下のような意見表明をしている。享年23歳。
「私はかねて人間の平等ということを深く考えております。人間は人間として平等であらねばなりませぬ。そこには馬鹿もなければ、利口もない。強者もなければ、弱者もない。地上における自然的存在たる人間としての価値からいえば、すべての人間は完全に平等であり、したがってすべての人間は人間であるという、ただ一つの資格によって人間としての生活の権利を完全に、かつ平等に享受すべきはずのものであると信じております。」(ブレイディみかこ著「女たちのテロル」、拙文「金子文子を知っていますか」から)
ドラマの主人公のこの言葉は、現在の女性の状況をも暗に示唆していて含蓄ある言葉だ。
だってついこの間まで、大学入試で女子学生が不利に扱われていた事件があったし、相も変わらない男性上位の社会構造。差別やヘイトもその生い立ちがもとで発生しているし、信念や格好で差別もされている。
だから初の女性弁護士になった主人公が語ったこの言葉に深く感情移入してしまったのだ。祝賀会の席で彼女は「試験に合格してもちっともうれしくない。ずっとモヤモヤしていたが、その答えが今わかった」といって次のように語りだす。
「高等試験に合格しただけで自分が女性の中で一番なんて口が裂けても言えません。志半ばで諦めた友。そもそも学ぶことができなかった、その選択肢があることすら知らなかったご婦人がいることを私は知っているのですから。
法改正がなされても結局女は不利なまま。女は弁護士にはなれても裁判官や検事にはなれない。男性と同じ試験を受けているのにですよ。女ってだけでできないことばっかり。まあ、そもそもがおかしいんですよ。もともとの法律が私たちを虐げているのですから」
そして上記タイトルの言葉が語られたのだ。
「法のもとの平等」、現在確かに制度上はそうなっている。86年前よりはずっとマシになった。だが内実はどうか。みんなの意識はどうか。
私はいつも思う。自由とか平等とか公平とか人権とかの意識は生活の中で培われ感情となって定着するものだと。その意味では前出金子文子と同じ意見だ。
「社会主義は私に、別に何ら新しいものを与えなかった。それはただ、私の今までの境遇から得た私の感情に、その感情の正しいということの理論を与えてくれただけのことであった」(前出「女たちのテロル」より)」
だからその感情が犯された時に、不快感とか不信感とか居心地の悪さを自ずと感じる。そのように規範意識が感覚として一人ひとりの意識の中に根付いて初めて価値を持つ。
一方で、手で触れたり見たりすることができない自由、平等、公平、人権等の概念は絶えず守ろうと努力しない限り、いともたやすくその真の意味が失われてしまうものでもある。制度が存在してもそれが実生活で生かされ、社会から不平等や不公平の根絶に立ち向かおうとしなければ絵に描いた餅になる。
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