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今日ときめいた言葉63ー「世界に希望が残されているとしたら、それは名もなき人々の中にある」(ゲド戦記 作者の言葉)

(2023年7月26日付朝日新聞「こころのはなし」ー成果主義の社会 生きのびるにはー「ゲド戦記」翻訳者 清水真紗子氏の言葉から)

この記事は、「成果主義の社会を生きのびるには」と題して、今そんな現実に苦しんでいる人に向けて書かれたものだが、余生を送る私にも刺さった。

人の一生、所詮大河の一滴に過ぎず、この世から消え去っても何の痕跡も残さないと思っていた私の考えを打ち消すような言葉であるからだ。


「世界に希望が残されているとしたら、それは名もなき人々の中にある」(「ゲド戦記」作者ル・グウィンの言葉)

「ゲド戦記」の翻訳者清水氏は、この作者が33年もの長い年月をかけてこの物語を紡いでたどり着いたのが、前述のような境地であったのだろうと考えている。

ゲド戦記の作者は、「名を成したい」という人の心にある願望や、今の社会で評価される力に疑問符をつけたのだと言う。「俺が」「私が」と前に出るのではなく、ワン・オブ・ゼム(大勢の中の一人)であることの尊さ、豊かさを示したのだと。

よく言われてきたナンバー・ワン(Number one)でもなく、オンリー・ワン(Only one)でもない、ワン・オブ・ゼム(One of them)であることを肯定すること。

清水氏は続けて言う。

「その他大勢のどうということのない人は価値がないと多くの人が思っています。でも本当は、人がただそこにあることを肯定することが大事なのでは。名をなさない、ごく普通の人が持っている温かさや豊かさをみんな知っていますよね」と。「物を持たず、肩書きもない。だからこそ相手の素顔がはっきり見える」

清水氏は今の若者の生き方を評して、次のように言う。
生まれてきたからには、社会で評価される力や名前がないことに焦りを感じるのは自然のことである。でも物事のはかり方はいくらでもあるのに、たった一つの「ものさし」しか持たないために、「こうあるべき」論にしばられて自分を追い込んでしまって不幸になっている。「社会の標準」から外れるともうだめだと思ってしまう。

でも生きのびるためには、一つではなくいくつもの「ものさし」を持つことが大切である。そして、ここに戻れば生きられる、という場所を心の中に持つことも大事であると言っている。

「少しでもいいなと思えることがあれば、ちょっとだけ生きのびることができる。そうした時間をつなげていけたらいいですね」

小さな喜びに気づくことが力になる。でも忙しすぎると喜びに気づけないかもしれない。忙しさを脱出する力を持たないと潰されてしまう。生きる喜びにつながり、納得のいく仕事をする時間を持たないといけない。

そして、日常を丁寧に生きる。

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