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A都市計画制度 2-区域区分


前回は都市計画の対象である都市計画区域の紹介をしました。その都市計画区域内で行われる区域区分(通称:線引き)について今回は記します。

市街化区域・市街化調整区域

前回は都市計画区域内で開発が認められるという書き方をしましたが、都市計画区域内の全てが開発推進エリアではありません。つまり開発するべきエリアとそうでないエリアの区切りがあります。それが市街化区域(開発OK)と市街化調整区域(開発自粛)です。そして、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に分けることが区域区分(通称:線引き)なのです。線引きの有無と、実施する場合の趣旨は都市計画区域マスタープランに記すことになっています。また、都道府県が線引きを決定します。

都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。

都市計画法第7条1 区域区分 (前半のみ)
  • 市街化区域:既に市街地が形成された区域、あるいは概ね十年以内に優先的かつ計画的に市街化する区域

  • 市街化調整区域:市街化を抑制すべき区域

なぜこのような制度が導入されたのかということですが、国土交通省の資料によると、現在の都市計画法が制定された時点(1968年)では、大都市圏に人口が流入したため、市街地が急拡大する可能性がありました。新興国の都市問題を考えるとイメージしやすいでしょうが、急激な人口流入はいわゆるスラム化やインフラの肥大化を招き、国としても悩みの種でした。そこで法律にて市街化に優先度を設け、段階的な市街地形成を目指しました。この当時は市街化調整区域もいずれは開発するつもりだったのでしょうが…
 では、市街化区域と市街化調整区域では制度上何が異なるのか?個人的には地域地区開発許可のルールが特に異なると思います。これらは別の回でいずれ紹介するつもりですが、簡単に言うと以下の通りです。

  • 地域地区:用途地域(建物の形態を制限するもの、第一種低層住居専用地域、商業地域など全13種類)を含む全21種類の都市計画の枠組み

  • 開発許可:線引き制度のため、一定の土地造成に対して行うチェック。新規開発される市街地の環境保全、災害防止、利便の増進を図るために必要

例えば地域地区の中の用途地域は市街化区域では決定されますが、市街化調整区域では用途地域はありません開発許可は市街化調整区域では全て規制対象ですが、市街化区域では原則1,000㎡以上の開発が規制対象になります。このように、市街化調整区域では市街化区域よりも規制が厳しいのです。

非線引き都市計画区域

冒頭でも述べましたが線引きは全都市計画区域で必須ではありません。ゆえに線引きされていない都市計画区域(非線引き都市計画区域)が存在します。なお三大都市圏の一部など線引きが義務のエリアはあります(都市計画法第7条1)。線引きは人口密度や市街化の状況を踏まえて決定するため時間を要します。そのため非線引き都市計画区域は地方中小都市に多いです。
 非線引き都市計画区域は立ち位置として、開発推進ではなくとも開発自粛でもないため、規制の厳しさ的は緩いです。用途地域は設定してもしなくてもいいです。用途地域が設定されていない非線引き区域は建物の用途の制限がありません。もちろん建築基準法第52条・53条で容積率・建蔽率が定まっているので高さ200mの建物が建つことはありませんし、五地域区分の他の法律の規制もありますが、都市計画的なルールは特に緩いです。
 長崎県を例にすると、線引きされた都市計画区域は全30区域中、県内で人口が多い長崎都市計画区域(長崎市の一部・諫早市の一部・長与町の一部・時津町全域)と佐世保都市計画区域(佐世保市の一部)の2区域のみです。

長崎市周辺の2市2町の線引き状況。中心部が市街化区域となっていることがわかる。
長崎市内の一部の都市計画区域は線引きがされていない。

ここまでのまとめ

ややこしくなりましたが、今までの話をまとめると下図ができます。

データは令和5年度都市計画現況調査より引用

次回のテーマはマスタープランです。今回フライングして話した用途地域は次々回で扱います。



参考資料

  • 国土交通省 都市計画法制

  • 国土交通省 土地利用計画制度

  • 国土交通省 開発許可制度の概要

  • 農林水産省 農業振興地域制度及び農地転用許可制度

  • 長崎県

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