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『SNSー少女たちの10日間ー』 これは犯罪だ

「インターネットの世界は便利だが危険が伴う」とは、最早使い古された表現となった。それだけインターネットは日常似なくてはならないものとなり、スマートフォンがその個人化を拡大した。
そんな中、チェコで実験的な映画が作成された。

巨大な撮影スタジオに作られた3つの子ども部屋で、幼い顔立ちをした3名の女優(18歳以上)は偽のSNSアカウントで12歳のふりをするという任務を与えられた。各々の部屋のPCで、連絡をしてきたすべての年齢の男性とコミュニケーションを取った。当初のプロジェクトと同様、大多数の成人男性はビデオセックスを要求し、自身の性器の写真やポルノのリンクを送信してきた。なかには恐喝する者も。精神科医、性科学者、弁護士や警備員など専門家の万全なバックアップやアフターケアを用意しながら撮影を続けること10日間。児童への性的搾取者が徐々に尻尾を出し始めるのだった…。
(公式HP「SNSー少女たちの10日間ー)

本映画は出演者を見出すオーディションから場面は始まるのだが、その出場者の大半の女性がすでに児童虐待にあっていることに衝撃を受ける。

チェコでの調査によると、子供の6割が親から制限を受けることなくインターネットを利用し、そのうち41%が他人から性的な画像を送られてきた経験がある。そして知らない人とネット上で話す子供のうち、5分の1は直接会うことにも抵抗を示さないという。
インターネットやスマートフォンが普及し、子どもたちは自分の判断でアクセスできる環境や情報、人が増えた。しかし子どもは好奇心があり、リスクを判断するに足る経験は少ない。
そして気付かぬ間に渦中に巻き込まれていることもあるだろう。体の大きな、それも大人に言われ、下手をすれば写真や動画という証拠・人質を取られ、一人で抱え込んでしまう状態に陥ってしまうだろう。

危険なのは少女だけでなく少年も同様である。
本映画に登場するオオカミたち(犯罪者)の大半は小児愛者ではないと言う。力の弱い生き物に対して手っ取り早く自分の欲を満たす貯めの手段に使っているだけのように思える。

オオカミたちはとにかく気持ち悪いのだ。
10日間で集まったオオカミは2458人。氷山の一角だろう。
そして、だからこそ真っ当なことを言う青年が女優とコミュニケーションをとる男性の一人として登場するシーンに、至極当たり前のことしか言っていないにも関わらず救われる。

本作において「児童虐待」という表現を臆せず使っていることが潔い。日本語の表現や報道は時に曖昧にすることで被害者を守っていることもあるが、殊、本映画においては曖昧にせず直視する姿勢がしっかりと伝わる。

本作をSNS教育に使うという意見があると耳にした。けれども、こんな気持ち悪い世界は子どもたちにとってトラウマになるのではないだろうか。(私はオオカミたちがアクセスする度に鳴ったSkypeの通知音が今でも恐ろしい)
自衛は必要だ。だから一定年齢層以上には見る選択肢があっていいと思う。
しかし、こんな世界を子どもに与えないよう、教育者、親、サイト運営者など大人たちがしっかり子どもを守ることを自覚していきたい。
これは犯罪なのだから。