あたらしい世界
時が止まる。
あのひと時を思い出すには、音を止め、話をとめ、思考を止め、風も止めたい。
そうしてやっと、その夜の一瞬を、つとつと思い出す。
ゆっくり。ゆっくり。
断片的でも確実に。
初めての夜ほど素敵なものでもないし、欲しいものはこの手にない。
だけども、誰にも言えないけど誰かに言いたい。なんていう、素敵な時間をもらった。
信号待ちで立ち止まる。
電車の時間に立ち止まる。
今は限られたその時間に、溢れ出るのは、あの夜あなたが触れた記憶。
会話。
温度。
表情。
その肌。
その肌。その抱きしめかた。
その、ささやき。
その、その、ずっと欲しかった何か。
静かにそれを思い出せる時、その前より幸せな気分になれるから、それだけで良いのではないかと思っている。
ここがフランスならば私はもっと、この幸せを声高らかに叫んでいるのだろうか。
その世界に行きたい。
ほぼ、その世界にいるけども。
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