【書店で恋をし、裏切られ、やさしさに触れる】リアル書店で私が見た、お客さんとの接し方あれこれ

ここ2か月で数度、本屋さんに行った。古本屋と、新刊書店のみを扱う大型店舗両方に行った。
すると、1回に1度は、印象的な店員さんやお客さんと会うのだ。今日はそのような方々をご紹介したい。

【Case1 恋の始まり?】

とある大型の古本屋に行った時のことだ。私はローレンス・ブロックとロバート・ラドラムの本を探し、海外著者の文庫の棚を嘗め回していた。比喩だ。本当にべろべろしていたわけではない。

すると2mほど横にいたご老人が、若い女性の店員に話しかけた。
「ペストというタイトルの本はありますか?」

若い女性の店員は「ペスト、ですか…え~と…作家の名前と出版社はわかりますか?」と困っている様子。
その間にもご老人は「なんだったか、変な芸能人みたいな名前で、出版社はわからなくて」とまくし立てている。

私はそのとき、「あぁ~…たしか異邦人を書いた人と同じだった…検索して教えてあげよう」とスマホで検索を始めた。

その時、棚の裏からサッと男性店員さんが顔を出し、一言。
「カミュですね。こちらにお越しください」

嬉しそうにご老人が男性店員について行った頃に、私のスマホは「ペスト 小説 作者」の検索結果を表示した。やはりカミュだった。
私は己の知識のなさを恥じ、あの男性店員のようになりたいと思った。
少なくとも、ペストの作者がカミュであることは一生忘れないと思う。

【Case2 犯罪者】

またも古本屋に行った時の話である。私は古本屋は特にほしい本があるでもなく、大量に本が買いたいときに行く。そのため、大きめのエコバッグを手に、小説、文学、経済、資格、哲学など、ほぼすべてのジャンルの背表紙を1冊1冊確かめる。
そうして、背表紙に「へぇ、それはよかったですね」と返事し、気になったものは会話文を拾い読みし、梁間検定に合格した本はすべて購入する。
そのため、店内にいる時間も長くなる。

その時にいた古本屋は、訪れたのが2年ぶりくらいの場所であり、置いてある商品もかなり様変わりしていた。だからいつも以上にじっくり確認していた。会計を終えて時計を見たら、入店から2時間経っていた。

重くなったエコバッグを抱え、店舗内にいたときの事を思い出し、ふと思い出す。
「そういえば、常に俺の傍で、2人の店員さんが棚の整理をしていたな。不自然なくらいに」

おそらく万引きを警戒していたのだろう。
私は万引きを疑われないよう、エコバッグは常に脇に抱え、未会計商品を入れる買い物カゴもパンパンにしていた。そしてそんな私を警戒するように、私の傍には常に2人の店員さんがいた。

今思えば、あれは私が未会計商品を自分のエコバッグに移すのを警戒していたのだろう。
言うまでもないが、すべての商品にお金を払って購入した。

大きいエコバッグを持っているというだけで警戒されていたのだろうか。
他に何かあったのだろうか。
まぁ店舗側の事情はわかるが、疑われて気持ちのいいものではない。
こういうところから、更に活字から離れていく人が増えていくのだろうと、少々暗たんとした気持ちになった。

【Case3 ありがとう、書店の店員さん】

私としては珍しく、1冊の本を求めて開店から大型書店に行った時の話。

ほとんど開店と同時に入店。お客さんは広~い店舗内に、ほぼ私一人。
検索機で目的の本がある場所を検索し、いそがしく開店後の配本に立ち回る店員さんを横目に目的の棚に到着。
上から順番に背表紙を目線で追い、目的の本を見つけ、手に取った時である。

「何かお探しですか?」と声をかけられた。
若い女性の店員である。

私は突然のことに「フッwwwwフヒッwwwwあ、ありがとうございヤスwwwwwもう見つかったんで大丈夫ですwwwwwッスwwwww」と答え、手に取った本を見せた。
店員さんは「よかったです!お困りのことがあったらお声掛けくださいね」と言い、もう一度私に満面の笑みを浮かべて、去っていった。

私は感動した。
朝イチの配本作業中に来る客など、店員さんにしてみればめんどくさい客である。
それなのに声をかけてくれたのだ。たぶんあの店員さんも本が好きなのだろう。
このときはまだレジ袋が無料であり、私もケツポケットに財布をさしただけの手ぶらだったので、万引きを警戒したわけでもないだろう。ただ純粋な善意で声をかけてくれたのだ。

あのような店員さんが会社からも注目され、気持ちよく働ける書店になってほしい、そうすれば書籍業界ももっと活気が出てくるだろうなと思ったのであった。

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