小説は冒頭が一番つまらないので拾い読みしよう(書店で面白い本と出会う方法その2)

昨日の記事では、リアル書店で面白い本を購入するための方法論として、

・タイトルに対して「へぇ、よかったですね」と呟く

という、ちょっと何言ってるのかわからないけど実践すると効果てきめん、という私の実感を述べさせていただいた。
今日は昨日に引き続き、面白い本を購入するための方法論その2、

・適当に開き、会話文が面白いか確認する

をご紹介する。
ちなみに明日は、

・出版社に面白い本を出してもらうために(ハガキを書き、たまには新刊も買う)

を執筆する予定だ。
明日は大仕事になる予感がする。

【小説は、冒頭が一番つまらない】

あなたは小説や評論、詩などを読む際に、書いてある順番通りに読まないといけないという、思い込みに囚われている。

本は大抵、前書き、序説、目次、1章、2章・・・と続いている。
読者は、それを1ページから300ページまで順番通りに読むのがセオリーだと考えている。しかし、これが思い込みなのだ。

それで何が起こるかというと、
序盤がつまらなくて、読むのをやめてしまうのだ。

これは私の考えだが、実は小説は、冒頭が一番つまらない。

よく小説の冒頭は「助走」と言われるが、私は「アトラクションの待機列」だと思っている。
ジェットコースターに乗ったことがある人は、それに乗るまでの行列に並んでいるところを想像してみてほしい。ジェットコースターに乗ったことがない人は、たこ焼き屋さんとか、コラボカフェの入場待機列とかに自分が並んでいるところを想像してほしい。
それが小説の冒頭だ。一番面白い、ジェットコースターに乗るとか、お店に入るというドキドキ体験の準備をし、その時が来るのを待っている状態なのだ。

いや、小説の冒頭は待機列より面白くない。
だって、その自分が並んでいるジェットコースターは、自分が思ったとおりに直角急降下、ループ2回転、建物の間を縫って走行、最高時速200km/hが出るとは限らない。
いわば小説の冒頭を読むということは「この先、ジェットコースター」とだけ書かれ、全容が明かされていないアトラクションの行列に並ぶようなものだからだ。それに並んでいるだけの状況が、面白いわけがない。

(それも面白いという人は生粋のジェットコースター好きだ。つまり生粋の読書好きは、どんな冒頭でも面白く読める)

最近のライトノベルなんかは、「この物語はこういうところが他と違って面白いですよ」ということをアピールするために、やたらと長いタイトルになっているのだが、まぁそれは別の話。

そこで私の方法論が冴えてくる。
それが「適当に開き、会話文が面白いか確認する」ということだ。

【適当に開き、会話文が面白いか確認することのメリット】

察しのいいかたは気づいているだろうけど、小説の冒頭が待機列なら、小説の半ばや後半は、今まさにジェットコースターの全容が見え始めたか、乗っているところだということである。
私たちは行列を背に、いつでもすぐジェットコースターに乗れる権利を手にしている。
自分に合っていそうなアトラクション(小説)なのかを好きに確認させてもらえるのだ。

もちろんあまりに読みすぎてしまうと小説の核心部分に触れてしまう。ミステリーならトリックの部分、誰が犯人なのかなどが見えてしまう場合があるかもしれない。
だからこそ「会話部分を拾う」というのが大事だ。

正直にぶっちゃけてしまえば、最近のエンターテイメント小説は、地の部分(状況説明や場面転換、主人公は電車に乗って○○へ向かったとか書くあたり)は、どの作家も変わり映えしないのだが、会話部分は口調でキャラクターが立っていたり、簡潔に状況を報告したりしていることが多いのだ。
つまりは、主人公の移動は「電車に乗って○○へ行った」と100人中90人が書くとしても、主人公のピンチを「ピンチだ!」「えぇ、ピンチね!」と書く作家は100人中0人だということだ。
会話文で、その作家の力量がモロに出る。

会話が面白いということは、
キャラクターも立っているし、
場面もわかりやすく説明してくれているし、
作家の実力があるため、ほかの部分も面白いし、
ストーリーが自分にとって面白いかどうかまで判断できるということだ。

自分が適当に拾った会話部分がたまたまつまらない場面だった場合があるので、2、3か所は会話を拾い読みしてもらいたいが、3か所読んで1か所も面白いと思えなかったら、まず間違いなくあなたにとってのハズレ本だ。
あなたも、会話が面白い人とつまらない人だったら、会話が面白い人と付き合いたいはずだ。小説も同じである。

小説は結局、人の営みが書いてある娯楽なので、作家ではなく、書いてあるキャラクターと自分がうまく付き合えそうかどうかが重要なのである。


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