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タピオカ芋の料理「クルマ」の作り方

マレーシアに住んでいると、ぱっと「クルマ」という単語を耳にした時 デーツの「Kerma」なのか日本語の「車」なのか一瞬混乱しちゃう…と思うのは私だけではないと思います。

そこに加えて、サラワク先住民クニャ(Kenyah)の食べ物にも「Kerumet」というものがあります。発音はそのまま、日本語で表記すると「クルマ」。

今回はこちら、クニャの「クルマ」について紹介したいと思います。

いきさつ

時が経つのは早いもので、先日開催されたBorneo Rainforest World Music Festival2021を見ていた時のことです。

Borneo Rainforest World Music Festivalは、サラワクのクチンで毎年6月に開催されている音楽フェスティバルです。今年はオンライン開催でした。こちらからアーカイブが見られます→https://rwmf.net/ 演奏も面白いけど途中のCMがまた素敵。

海外関係者のインタビューの最後で、マレーシアの人から「サラワクで好きな食べ物は?」という質問がされていました。その方は「ラクサ・サラワク!」と答えていて「まあそうだよね~」と思いながらも、自分だったら何と答えるかな?とふと考えました。

すぐ頭をよぎったのはパク(Midin)のブラチャン炒め、トーチジンジャー炒め。どちらも捨てがたいよな~と思っていて、思い出したのがこのクルマ。クニャの村に滞在した時に何度か食べたことがあるおやつ?です。

最後に食べたのは2015年か2017年か…。2019年に訪れた時はチャンスがなく、久しく食べていません。街の生活とはいえスーパーで豚肉、タピオカ芋は手に入る、、、ということで今回、家のオーブンでレシピの再現に挑戦してみました。

ちなみにトーチジンジャー炒めはこんな感じ↓香りが良くて大好きです。

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材料:太巻き1本分くらい

・タピオカ芋(Ubi Kayu):700グラム(細い芋2本、又は太め1本)

・豚肉:200~250グラム。Pork Belly、ブロック。脂身がある方が美味しい

・塩、粗びき胡椒:小さじ1/2

・オイスターソース:大さじ2

・バナナの葉:包み焼き用。アルミホイルを使っても良い。

・お好みでニンニク1/2かけ、香りづけにごま油や好きなスパイスなど。

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作り方

1、タピオカ芋は皮を剥きすりおろす。豚肉は1㎝前後のサイズにカット。歯ごたえが良くなるので大き目でも良い。

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2、すりおろしたタピオカ芋に豚肉を入れ、調味料(塩コショウ、オイスターソース、ニンニクや各種スパイス、油)を入れてよく混ぜる。

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3、2をバナナの葉にのせて包む。端を紐などで固定するか、バナナの葉の葉の上から更にアルミホイルで包んで端を閉じる。

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なんとなく円柱型に丸める。水分は多めなので漏れないようにしっかり閉じましょう。

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メモ)初めは直接アルミホイルで生地を包みましたが、焼き上がりの後にめっちゃくっついて形が崩れてしまったので(後で写真載せます)、綺麗な円柱型にするなら葉→ホイルが良いと思いました。形を気にしないのであればアルミホイルだけにして、できたら崩しながら食べて良いと思います。ちなみに本場は葉で焼いて、崩し食べです。

4、包みを260度のオーブンで50分~1時間前後焼く。白い芋が透明がかって黄色っぽくなったら完成。熱いうちはやわらかく切りにくいので、冷ましてから切る。

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アルミホイルから取り出した時のクルマ↑とその中身↓

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出来上がり!

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メモ

・太巻きくらいのサイズだと食べやすい

・切らずに包みををあけてスプーンですくったり手でちぎって食べてもよい(何でもよい)

・コーンやミックスベジタブルを入れてもよい

・味付けは無限大。CajunスパイスやFiveスパイスでもおいしい。

・ブラウニーを作る焼き型のようなものでもできる。その場合は乾燥しないようにホイルで包んで焼く。包まないと生地が乾くばかりでうまく焼けないので注意。


ちなみに長めに調理して焦げ付いたのと、アルミホイルにくっついて形が崩壊したクルマがこちら。味は変わらず美味しかったです。

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元々のクニャレシピの話

元祖レシピで使う材料はタピオカ芋、森でとれたイノシシ肉、塩、包むのに使うサンの葉のみ。勿論オーブンもないのでかまどかドラム缶か、適当なところで調理します。

「サン」ですが、英語/BMで何ていうんでしょう…工芸品で良く見る、先がとんがった日笠↓に使われる葉でもあります。「Sang」とつづるらしい。葉がまだ開いていないものはサン、開いたものはシラット(Silat)と呼ぶんだとか。

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そして元々はこのKerumat/クルマ、おやつではなくお米が無い時の代用食だったそうです。

今はもう大半の人が街で暮らしていますが、1980~1990年頃まではまだ多くの人が山の中の村に住み、米や野菜を栽培し、漁労採集・狩りをメインに生活していました。

彼らの主食は米ですが、特に昔はチェーンソーなどや脱穀機、車が走れる道もなく、畑までの移動、木の開墾から整地、田植え、稲刈り、脱穀全て人力です。かつ子供が5人以上いるのは当然の大家族。米の収穫量は限られており、子供の頃に満足にお米が食べられない生活を経験をしたという人もいます。

ちなみに…クニャの人達は田んぼではなく、焼畑をして山肌に植える陸稲がメインです。更に米を食べるのは人だけでなく、クニャの人は飼っている犬にもお米を食事として与えています。

そんな時によく食べていたのが、サゴやタピオカ芋だそうです。

実際に私も現地でみて驚いたのですが、タピオカ芋は育てるのがとても簡単で、かつ成長がめちゃくちゃ早いです。

極端な話、折った茎をその辺の道端に突き刺しておいても数日後にはそこに根付いてぐんぐん枝を伸ばします。(地面に刺さなくても、茎を刈り取ってまとめて捨てたところから大量に生えてきたりもする。)

葉は摘みとってご飯のおかずになるし、芋は何もせずとも2~3か月もあれば立派な大根?さつまいも?サイズがごろごろ取れる。米ほど育てる場所も取らなければ、手間もかからないし一株から収穫できる食用部位が多い。

タピオカってめちゃくちゃコスパの良い食べ物なのです。。そのおかげで今も昔も、クニャの暮らしには欠かせない重要な食べ物です。(イバンやカヤンなど、他のサラワキアンも大好きだと思う。)

タピオカの葉。細い葉の他にも太い葉のものなど、種類がいくつかあります。

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いざとなったら街に出てお米を買うことができる現代の村の生活では、クルマは代用食というよりはたまに作るスナック、間食のような位置づけです。

村でイノシシが沢山とれた時に作られたりします。特に子連れのイノシシが取れた時など。ウリ坊は肉が柔らかく脂肪も多いので、クルマに好まれて使われるそうです。

調理方法は、先に紹介したレシピと基本的に同じです。

村ではバナナの葉ではなくサンの葉で包み、端を紐で止めてかまどで焼き上げます。焼きあがったら包みを開け、皆で好きにちぎってチリ醤油を付けながら食べます。辛さにスーハー舌を出しながら食べてたのが懐かしい。

実は、村で食べたものは肉の脂がすごくて、おいしいけれどあまり量が食べられませんでした。あとはがっつり焼くから(焼くというより数時間放置している)出来上がりは堅めです。

それが今回オーブンで包み焼きにしたところ、芋がめちゃくちゃ柔らか・しっとりもっちりな出来上がりに。自分で食べるのもよし、そしてちょっとした時にふるまえる特別なレシピになるのでは…?と思った次第です。

メモ)今回バナナの葉を使ったのは、サンの葉が手に入らず、アルミホイル以外に手ごろな葉を使ってみたかったからです。バナナが身近にある方は想像がつくかと思いますが、バナナの葉はめちゃくちゃ切れやすい!ちぎれにくい葉があれば、包むのには別の葉を使っても良いと思います。バナナにこだわる必要ナシです!

おまけレシピ タピオカ芋のクエ

もう一つ私の好きなタピオカ芋を使ったお菓子をご紹介。

このクエ、簡単で美味しいのに今のところ村やクニャの人のおうち以外では全く見かけません…。マレー系の人達もタピオカの葉を食べるし、ドーナツや他のクエに混ざって屋台で売れてても良さそうなのに。もしかしたら私が出会ってないだけかもしれませんが…せっかくなので合わせてご紹介です。

材料

タピオカ芋:好きなだけ

砂糖:芋の大きさに合わせて調整。

村ではがっつり大さじで何杯も加えられてたけど、芋の甘さがあるから控えめでも良いと思います。

作り方

芋をすりおろす。砂糖を混ぜる。揚げ油を十分に熱し、一口サイズに丸めた芋を落として揚げる。きつね色になって浮かんできたら完成、取り出して冷ます、食べる。以上!

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コロコロした可愛らしい見ためで、出来立ては熱々ほくほく。ふわっと甘くてキッチンたらいに山盛りに作ってもあっという間になくなってました。

村では小さい子供のいる家でよく作られていた印象です。

でも美味しくて食べやすくて、大人も農作業の合間に食べてお茶してました。みんな大好きなお菓子です。これはクルマより更に簡単に作れるので、興味のある方はぜひ作ってみてください~!

それではまた!




私のnoteで何か発見があったり、考えるきっかけになったり、純粋におもしろいと思ったり。投げ銭せずにはいられなくなった時、よければどうぞ!