【物語】ハーモニー #3
重厚な扉を開けると埃っぽい匂いが鼻孔をくすぐった。辺りを見渡すとうず高く積まれた本の壁。ここはローゼンメイト屈指の蔵書数を誇る図書館・セレナーデ。だが、この図書館にはいくつか変わった特徴がある。一つ目、開館時間は夜中のみ。「夜中」とはいつを指すのか。それは日が完全に沈み、闇が空を覆いつくしたとき。だから幼子が訪れることは滅多にない。来ることがあっても、大人と一緒である。二つ目、図書館を取り仕切きるのは、特殊能力をもった老婆・ステラ。彼女は気難しい性格故、ローゼンメイトの町民