オランダのプログラミングスクール
私はオランダに住んで現地企業でソフトウェアエンジニアとして働いていますが、日本に住んでいたときはITとは無関係の事務職で、オランダに来てからプログラミングを学びました。そのときの経験をお話ししようと思います。
プログラミングスクールには行ったほうが良いのか?
昨今よく話題になるのが「プログラミングスクールに通う是非について」
賛否両論ありますが、私は通って良かったと思っています。なぜ良かったかというと同じ教室に仲間がいて、そこにいるフルタイムのメンターにもわからない部分を常に質問できる状態だったからです。メンターはその場その場で便利ツール(コードエディタのエクステンションなど。VSCodeの存在もそこで知りました)や役に立つブログ記事などを紹介してくれて、独学しているだけでは存在にすら気づかないものが多かったので本当に価値がありました。
そして、片道2時間かけて通うというのは覚悟を決めないといけませんでしたので、学費と高い交通費(400ユーロ=約5万円/月)に加えこの苦労を絶対に取り返すぞという気合いが入りました。また、私が通っていたスクールはオランダの企業でよく取られているアジャイル開発形式を模したものとなっており、毎朝15分ほどクラスメイトと共にメンターを囲み、進捗や困っていることなどを共有する時間がありました。その後初めて働くことになった会社ではまさにその方法を採用していたので大体どんなものかわかっていたのも良かったです。
スクールの選び方と選んだ理由
まず、SwitchUpというサイトでどんなスクールがあるのか探しました。どんなコースがあって費用はいくらで、などという情報がまとめられています。正直情報が多すぎてどれにするか本当に時間がかかり、心が折れそうでした。オランダにはたくさんのプログラミングスクールがあるものの、そのほとんどが首都アムステルダムです。私はデルフトという、ロッテルダムとデン・ハーグの間にある小都市に住んでいるのでアムステルダムまで毎日通うことを躊躇していました。そのため、実はハンガリーやチェコなどの東欧の国々やマレーシアなども考えていました。就職保証付きのところもあり、生活費や学費が安いことなどが理由です。
しかし、私はこれらを選ばなかったことにとてもホッとしています。なぜなら、他国で就職するのがかなり難しくなるからです。もしそういった国々でそのまま就職したいのであれば、就職サポートもあり良い選択肢ではありますが、私はいずれオランダに戻って働くことを考えていたのでやはりオランダにいることが最善でした。当時はコロナ前であり面接もオフィスで行うのが普通で、突然電話がかかってきて明日面接なんてこともあり得るので外国にいると難しいのではと思います。
話を元に戻しますが、あるときUbiqumというアムステルダムにあるスペイン系のスクール*を見つけ、営業担当者に連絡を取ってみました。たまたま見かけたのが50/50制度というもので、開始前に学費の半分を払い就職が決まったら残りの半分を払う仕組みでした。これなら私も限られた予算でなんとかできそうだと思ったのです。教室を見学させてもらい、設けられた質問時間でできるだけ質問をしました。そこでわかったことは、私は50/50制度が使えないということでした。EU市民または長期滞在のビザを持っている人が対象で、私はビザの発行を待っている仮滞在の状態だったので残念ながら適用外です。ただし、授業料を一括前払いすれば20%の割引が適用できるとのこと。元の授業料は6500ユーロ(約86万円)が5200ユーロ(約70万円)になるのは大きいと思ったのと、入学試験がないこと、営業マンがきちんと質問に答えてくれたことなども考え入学することに決めました。
*コロナによる影響を受け、2020年にオランダから撤退しました
スクール開始
まず入学初日は他のコースの入学者たちも合わせ皆で自己紹介をしました。この学校にはMERNコース、Javaコース、データサイエンスコースと3つあり、入学日には約10人の入学者がいました。私はMERNコースです。JavaScriptとそのフレームワークを使ったフルスタックのことで、MERNとはそれぞれ(MongoDB <データベース> | Express <バックエンド> | React <フロントエンド> | Node.js <バックエンド>)を指します。初日からすぐに教材のダウンロードをして早速コーディングに取り掛かりました。Ubiqumは独自の教材を作っており、それに沿って進めていくことになります。
最初の課題は生徒がフリーランスのWebデザイナーであるという想定で顧客からワイヤフレームや用件を与えられ、HTMLとCSSでの静的Webサイトを作りました。これは最初の2週間で作り上げるものだったのですが、初めての作品にしては満足できたのでかなり自信に繋がりました。
その次の課題でJavaScriptに入ります。AjaxコールやPromiseオブジェクトの概念、そしてBootstrapを習いました。アメリカの連邦議会議員情報をAPIで取得し、それをテーブルに表示しつつ、名前や所属州をアルファベット順に並び替えたり、党ごとに表示したりするようなフィルターもJavaScriptで実装しました。元々数学があまり得意ではないので、取得したデータの計算をするのがかなり難しかったのと、アメリカの政治家のこともよくわからず教材の内容が好きになれなかったのがイマイチでした。
それが終わると今度はVue.jsのプロジェクトです。SPA(Single Page Application)の概念を初めて知りました。これはコース内の教材で一番楽しかったものでした。モバイル向けのアプリを作ったのですが、ペンと紙で簡単なワイヤフレームを描きデザインを決めるところから完全オリジナルでした。テーマはジュニアサッカーリーグの保護者向けアプリ。試合のスケジュールや会場の地図、そして保護者同士が連絡を取れるチャットの機能を備えることが条件でした。今回はAPIも自作で、それをfetchして表示します。v-ifを使った条件分岐でページをロードせずに画面の切り替えができる技術(それこそがSPAなのですが)に大変驚き、魅了されたことを今でも覚えています。また、チャットはGoogleが提供するFirebaseを使って実装しました。
最終プロジェクトはこのコースの目玉であるMERNを使ったReactのSPAです。初めてのフルスタックアプリケーションでしたが、バックエンドの概念をなかなか理解することが難しく、とても苦しみました。海外の観光地とそのレビューを載せたり検索したりできるアプリなのですが、お恥ずかしながら完成させることができずにコースが修了しました。
その後のフォローアップ
最終プロジェクトに入り始めた頃にキャリアアドバイザーからのトレーニングがあり、2日間で履歴書の書き方、LinkedInページの書き方、面接の練習などを行いました。欧州の就活ではLinkedInはほぼ必須です。履歴書代わりになることもあるのでとても大事なツールなのです。面接の練習はまず生徒同士で行い、お互いの様子についてフィードバックするセッションがありました。そしてキャリアアドバイザーと一対一の模擬面接も行ってもらいました。面接の予定が入ると都度キャリアアドバイザーが練習を設定してくれとても助けになりましたし、履歴書やモチベーションレターの添削もしっかり行ってくれたのが心強かったです。また、Hiring Dayと称して企業の採用担当者やリクルーターを招いたイベントを開催し、一人約3分間のプレゼンテーションを行う場も設けてくれました。そのイベント自体は採用に至りませんでしたが、英語でのプレゼンを今までやったことがなかったのでとても良い機会でした。
コース終了の半年後にフロントエンド開発インターンのポジションに採用されたのですが、ビザの制限はなかったものの会社のルール上オランダの大学生または教育機関に在籍していることが条件と言われ、どちらでもない私は困ってしまいました。その時もスクールに連絡すると営業担当者がインターン先のHRと交渉してくれて、無事インターンシップを始めることができました。それが今のキャリアにつながっています。
おわりに
私は最後までスクールを「使い倒す」ことによりエンジニアとしての就職が叶い、とっくに授業料を取り返したので70万円の価値があったと自信を持って言えます。皆様それぞれ思うところがあるでしょうが、コースやサポートの内容、元受講生からのレビューを読むなどきちんとリサーチをした上で、「この学校が私のために何かをしてくれる」という受け身の姿勢ではなく「自分のキャリア実現のためにこの学校を使う」という意識でいればとても強力なツールになるはずだと私は思います。
それではHappy coding!
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