それは突然のことだった〔ScotchEggさんへのお礼作です〕


理由なんかわからない。
ある日突然すべての動力が効かなくなったのだ。
エンジンだとか、モーターだとか。
ただ手作りのものには乗れる。
例えば紙飛行機。
折り鶴。
飛行機でも、パーツ自ら組み立てた、グライダーとかなら乗れる。
人に作ってもらうのもダメで、どんな下手でも自作しなくてはいけないのだ。
あたしの部活は折り紙工作部だ。
だからきれいな折り鶴に乗れる。
お金持ちで、美人で威張ってたハナは、今よれよれの紙飛行機で通学してる。
あまりにも曲がって飛ぶので、手直しのしかた教えようってしたら、ハナ、ひたすらカンカンに怒ってて、

そばにこないで!

とか、

芽依大嫌い!

とか、わめきながら雲を千切って投げてきた。
折り紙時代になってから、こんなことさえできるのだ。
あたしはハナを見捨ててとっとと学校に向かった。

川から来る連中は笹舟に乗ってる。
広田正が上空のあたしに気づいて、

おーい

って手を上げた。
思わず真っ赤になった。
あたし正、好きなんだよね。
まだ、誰にも言ってない。

言わなくてもバレバレだわさ。

美紀だ。
でもあんた鶴も飛行機も折れないって…

とみると、果たして美紀は編み上がった一枚のマットに乗ってた!

バスマット!?

マフラー!
ただし今回は魔法の絨毯って設定。

うん。
思い込んだもの勝ち。

あたしも絨毯乗せて!

いいよ。

美紀の横にのって、自分の折り鶴は畳んだ。
もうすぐ学校。
空も川もすっかりきれいになった。
エンジンやなんかを動かすためのかがくぶっしつやらなんやらが、こんなに地球を汚してたんだね。
親たちの世代、大いに反省しろだ。

あ。
達義君だ。

美紀が嬉しそうに指差した。
自転車乗ってる。
バイク工房の跡継ぎの自転車だけは動くんだな。

たつよしー!

空から叫ぶと達義君は、上空見上げて手を振ってくれた。

ん?

向こうから、鬼太郎のカラス籠みたいのでくるのは!

坂崎先輩?

あ。
千羽鶴!

そうなのだ。
大きい鶴の折れない坂崎先輩は、たくさんの鶴を折って、一つ一つに糸つけて揚力上げたみたい。
やるう!

そんなこんなで毎日が、けっこう楽しい通学タイムなのだった。


202△年秋。
なべて世はこともなしなのだ。


ScotchEggさんありがとうございます!



それでも地球は回っている